8話
「うーん、パスタか…」
私がパスタがいいと言った瞬間、凪沙さんが悩み出したので、慌ててフォローする。
「あ、あの、私、パスタって言うかイタリアン?全般ならなんでも…その、ピザとかでもいいですし」
「あ、ううん。タコパの気分だったんだけど、カルボもいいなって」
「あ、そうですか」
なんとなく、心配して損した気がする。
今のところ、案としてはタコパ(たこ焼き)、ハンバーグ、イタリアンの3つだ。
「…じゃあ、あの、こうするのはどうでしょう?」
全員が私の方を見る。
私は、視線に気圧されそうになりながらも、自分が考えた結論について話した。
「たこ焼きパーティーはそのままで、ピザはスーパーで売ってるやつを、ハンバーグは少しづつ作れば…たぶん、大丈夫…かな、と」
結論だけを言えば、全部やればいい、なんだけど。
微妙、だったかな…。
しばらくの沈黙が痛い。
やっぱり、全部なんて無理があったんだ。
そう、思っていたけど。
「いいじゃん!」
凪沙さんは声をあげて立ち上がった。
「あ、や、私はピザパでもいい。なんならピザパがいい。で、端っこの方でたこ焼き焼いて、ハンバーグも作っちゃえばいい。あたし、スーパーのピザをアレンジするの得意なんだ」
私の案は意外と好評だった。
それが分かった瞬間、肩の力が抜ける。
「ね、凌も悠もそれでいいよね?」
疑問符がついてはいるけど、強制感が半端ない。
それでも、2人とも快く頷いてくれた。
「じゃあ、スーパーへレッツゴー!」
凪沙さんは、腕をグーにして、上に高く揚げた。
(意外と、楽しくやってけるかも)
自然と、口角が上がった。
「ってことでだいさん、連れてって」
「はいはい。誰かナビよろしく」
大山さんは、車の鍵を取りだしてゆっくりと立ち上がった。
「じゃあ、凌よろしく」
「俺ですか」
凪砂さんに指名され、凌さんが声をあげる。
すかさず、大山さんがツッコむ。
「僕の隣は嫌かい?」
「いや、そんなことは…」
「はは、冗談だよ」
冗談に聞こえない。
大山さんの車は、家の庭を奥に進んだガレージの方にあった。
運転席に大山さん、助手席に凌さん、真ん中の左の席に凪沙さん、その隣に私、そして後部座席の右側に、つまり私の後ろに悠くんが座った。
買い出しも、全員で行かされるらしい。
大山さんの車からは、新車の匂いがした。
大山さんは、怒ると怖い。だから、運転も荒いんだと思っていた。
(やばい…眠い…)
スーパーまでは結構遠いらしく、まだ着く気配がない。
そして、穏やかで緩やかな安全運転のおかげで、瞼がくっつきそうなのだ。
「そこ右っす」
凌さんのナビの声が少し遠い。
寝てしまわないように窓の外を睨む。
「桜さん」
大山さんに話しかけられて、文字通り肩が飛び上がる。
「っはい」
「後ろ、見てみな」
言われた通り後ろを見てみると、悠くんの目は閉じられていた。
「あと、左も」
視線を左に移すと、ものすごい体制で寝ている凪沙さんがいた。
「あと少しで着くけど、着いたら教えるから」
「…はい」
お言葉に甘えて、目をつぶることにした。
静かな走行音だけが、聞こえた。




