表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

7話

それからしばらくして、大山さんは帰ってきた。

しかし、大山さんかどうか目を疑ってしまった。

「綺麗になってる…」

髪が整えられ、はんてんではなく普通の上着、ヨレヨレやダボダボではなくキッチリピッシリ。いや、そこまでピッシリでもないけれど、さっきの服とは比べ物にならないくらい綺麗だ。そして、メガネではなくコンタクト。意外とイケメン。

「何か言った?」

「ひっ…いえ、なんでも!」

「最初の印象と違いすぎだろって思ったでしょ」

「い、や、それは、その…」

「あはは、そこまで怯えなくてもいいよ。そんなことでは怒らないから。これが余所行きの格好なんだ」

落ち着かないよ、とおどけて見せる。

沸点がわからない。

ますます怖い。

「そ、そうですか…」


「だいさん余所行きかっこいい〜」

そう囃し立てる凪沙さん。

「そう?」

ヒュッと10度ほど温度が下がった気がする。

「あ…あの、遅刻をしてしまい大変申し訳ございませんでした」

立ち上がって、凌さん同様90度の綺麗なお辞儀をしてみせる。

そんな凪沙さんを一瞥したあと、笑みを深めて言った。

「…それじゃあ、毎年恒例共同作業を行ってもらいます」

この人、温度を測るのが難しすぎる。

「毎年恒例…」

「共同作業?」

私と悠くんは首を傾げる。

「毎年恒例ってあるように、新入居者が入ったら必ず行うことなんだけどね、買い出しから調理、後片付けまでを、今年は4人だね。で、行ってもらう。予算は決まってないよ。全部僕の奢り。メニューも品数も、和洋中、フレンチ、イタリアンなどなどなんでも。ただ、多数決はなし。少数決はもっとなし。妥協はあり。みんなで話し合って決めてね」

「なる、ほど…」

かろうじて頷く私に対して、悠くんはこんな質問を。

「あの、大山さんは食べないんですか?」

確かに。それは大事な質問だ。

「僕も頂くよ。干渉も手助けもしない代わりに文句は何一つ言わない。もったいないから不味くても食べ切るよ」

ニコリと笑った。

あ、これは大丈夫な笑顔だ。

だんだん、コツを掴んできた気がする。



「じゃあ、まずは何を食べるか決めようか。あたしは、タコパしたーい」

仕切り出したのは凪沙さん。

「凌は?」

「俺は…なんでも。作るのが簡単なら」

(え…そんなこと言ってもいいの…?)

大山さんの顔を見ると、ずっとニコニコしている。

(いいんだ…)

「悠は?」

「んー…俺は、ハンバーグの気分です」

「そっかー、誰1人被んないね。…さくらんは?」

「えっと…」

誰かに合わせた方がいい?でも、そうしたら多数決みたいになっちゃう。それに、どれも気分じゃない。

「大丈夫だよ、さくらん。ここではどんな本音を言っても怒られない。ね、今どんな気分?」

「…じゃあ、パスタです」

久しぶりに、自分の食べたいものを言った気がする。

凪沙さんに感謝だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ