2話
大家さんきに案内され、玄関の扉が開く。
見た目の綺麗さとは違い、新築特有の匂いはしなかった。
リフォームでもしたのかな?
リビングに行くと、誰もいなかった。
「あれ…今日の9時には共有スペースに居てねって言ったはずなんだけど…ま、適当にくつろいでてよ」
「あ、はい…」
大丈夫か、この家。というか住人たち。
大家さんは、少し離れたところで電話をし始めた。
「もしもし凪沙さん?うん、そう、9時って…え?まだ8時半?君の時計、壊れてるんじゃなかったっけ?…うん、よろしく」
ナギサさんと呼ばれた人との電話を切ったあと、またかけだした。
「凌くん、今どこ?え?今日の9時…明日だと思ってた?君の日付感覚どうなってるの?…うん、よろしくね」
なんだか大変そうだった。
一瞬、気まずい空気が流れる。
そんな空気を断ち切るように、チャイムが鳴った。
「はいはい」
大家さんが玄関に向かう。
すかさず、お母さんの心配性が発動する。
「ほんとに大丈夫かしら」
うん、それは私も思った。
だけど、ここで引き下がる訳にはいかない。
「大丈夫だよ、たぶん」
「たぶんって、あんたねぇ、」
お母さんの説教が始まるかと思われた、その時。
大家さんが、私と同じようにキャリーケースを持った男性を連れてきた。
キャリーケースがあるということは…
「こちら、神田悠くん。桜さんと同じ、大学生1年生」
大家さんと同じ茶髪で、けれど整った髪型のその人は、ジーパンに白のパーカー、うぐいす色のジャンパーを羽織っていた。
同じような見た目でも、こんなに印象が違うんだ。
カンダユウはにこりと笑った。
「よろしく」
なんとなく、希望が見えた気がした。




