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13話

「凌さんは?」

悠くんは、またも会話を広げ、ターゲットも変えた。

喋っていない人をも巻き込むのが上手いらしい。

「理学部だ」

「理学部…の、何科ですか?」

めんどくさそうにしながらも、凌さんは淡々と答える。

「物理学科」

「へぇ!」

声を上げて、目を丸くする悠くん。

私も、静かに驚いている。

こうなると、悠くんの学部も気になる。

でも、私から話しかける勇気はない。

チラチラと悠くんの方を見ていると、目が合った。

どうかした?とでも言いたげに首を傾げる。私は、慌てて首を振って下を向く。

「じゃあさ、悠はどこの学部なの?」

ナイスタイミングで凪沙さんが話を振ってくれた。

「俺ですか?俺は、教育学部ですよ」

(同じ、文系だ…)

勝手に親近感を感じて、勝手に喜ぶ。

口角が少し上がるのを感じて、バレないようにたこ焼きを食べた。


「どうぞ」

湯気がゆらゆらと立ち上るコーヒーを、コトンと机の上に置く。

凪沙さんと凌さん酔っ払って寝てしまい、未成年者組の私と悠くんはお酒を飲めないので後片付けをしている。

大山さんも、次の日仕事だと言うことでお酒を飲んでいない。

片付けが一通り終わったので、一息ついているところだ。

「ありがとう」

「どう、しましょう。このふたり…」

「放っておくのもあれですよね…」

戸惑う私と悠くんを見て、大山さんは呑気にコーヒーを啜る。

「んー、そのうち起きるんじゃないかな」

「そう、ですか…」

そう言われたけれど、起きる気配は全くなかった。


「そういえば、大山さんは東大って仰ってましたけど、どこの学部だったんですか?」

悠くんが、ごく自然にそんなことを尋ねる。私も知りたかったことだ。

「僕?僕は、文学部だよ」

メガネをコーヒーの湯気で曇らせながら答えた。

「へぇ…文学部ってことは、哲学とか倫理学とかですか?」

「いや、行動文化学」

「行動…」

「文化学…?」

「心理学とか社会学、社会心理学とかだね。簡単に言えば」

通りで人を従わせるのが上手いわけだ。

しかも、嫌な支配感じゃない。

むしろ、信頼してついて行きたいと思える。

改めて、すごい人なんだと思った。


「あの、大山さん…」

意を決して、口を開いた。

なんとなく、受け身だけの存在にはなりたくなかった。

「うん、なに?」

「あの…どうして、このシェアハウスを、…やろうと思ったんですか?」

前から気になってた。

どうして、大学生限定でシェアハウスなんて、と。

年齢制限を設けない方が、なんとなく利益はありそうなのに。

「大学生って、なんていうか、それまでの学校生活とは全く違うよね。高校生になると義務教育ではなくなるけど、義務教育の延長のような感じでしょ?まぁ、ここら辺だと中学受験とかもあるけどさ。

でも、大学生になるってそういうことじゃない。人生の、自立への大きな第1歩なんだ。そんな人たちを、助けたいって思ったんじゃないかな」

自分のことなのに、どこか他人事のようだった。

「そう、なんですか…」

「さすが東大生」

「んー…まぁ、今はね」

(今は…?)

大山さんは、何かを誤魔化すように立ち上がった。

「コーヒー、ご馳走様。おじさんがいると息が詰まるだろ。あとは若者ふたりでごゆっくり」

そう言い残して、そそくさと奥の方へと去っていった。

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