表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

14話

「そういえばさ、」

大山さんが居なくなり、悠くんが私に向き直る。

「うん」

「どうしてこのシェアハウスに住もうと思ったの?」

「あー…うん…人と、関わろうと思って」

「人と?」

「うん。人と。…あ、関わってなかった訳じゃないんだけどね。…そ、そういう、悠くんは?」

言葉を濁し、勢いで悠くんの名前が口から飛び出た。

「…俺も、似たような感じかな」

「そうなんだ…」

この穏やかな時間は、コーヒーが冷めるまで続いた。


気づけば10時を回っていて、湯気が完全に消えたコーヒーはアイスコーヒーになっていた。

「そろそろ、解散する?」

「そうだね」

私は凪沙さんを、悠くんは凌さんを起こした。

「凪沙さん、起きてください。もう10時です」

「んぇ、まだ10時ぃ?」

もう10時と言ったはずなのに、"まだ"。

ぽーっと時計を見つめ、数回瞬きをした。

そして。

「まだ10時じゃん。二次会しよ」

「は?」

酔って寝ていた人とは思えないくらいの勢いで立ち上がる。

今ここで、「酔ったときの凪沙さんに関わらない方がいいよ」という大山さんの発言が、しっかりフラグとして回収されてしまった。


「で?さくらんは彼氏いるの?」

「ッゴホゴホッ…え?」

パイの実のあの皮の部分らしいところが上手く飲み込めず、むせてしまった。

それも全て、凪沙さんのせいだけど。

「あ、今の時代彼氏とは限らないのか。恋人いるの?」

「いませんよ…」

「えー、じゃあ好きな人とかは?」

「いません…」

「あー、目逸らしたぁ!可愛い〜」

凪沙さんのテンションについていけない。

この話題は苦手だ。

でも、少しだけ、新鮮だった。


カチッと電気をつけて、一息つく。

共有スペースの方から、ガヤガヤと賑やかな声が聞こえる。

その声たちは、かつて10数年前に自分がこの家に住んでいた時を思い出させる。

(どうしてこのシェアハウスをやろうと思ったのか、か…)

桜さんにそう問われるまで、その答えを忘れていた気がする。


『陽ちゃんに任せれば、このシェアハウスの未来は安泰だね』

しわくちゃになった、それでも温かい老婆の手。

『アンタがこんなシェアハウスなんて続けるから!』

ヒステリックに、悲鳴のような罵詈雑言を浴びせられたときの、声。

『このシェアハウスのお陰で、自分のやりたいことが見つかりました』

そういいながら見せた、綺麗なお辞儀。


全てが、忘れられない。

だからこそ、続けなければならない。

2人の老夫婦がつくった、「oyama familie」という名の、このシェアハウスを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ