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12話

「そうだ、桜さん」

「はい」

「もしも桜さんが、凪沙さんのような状況に陥った場合、どう対処する?」

凪砂さんの言い訳を聞いたあと、大山さにそんな質問をされた。

「凪沙さんのような状況に、陥った場合、ですか…」

「そう。シャー芯が切れて、お婆さんに話しかけられて、付き添いで行ったはいいけれど迷子になって挙句の果てにはスマホの充電が絶望的。そんな時、桜さんならどうする?」

私は、少し考えてから、凪沙さんにこんな質問をした。

「答える前に、いくつか確認してもいいですか?」

「いいよ」

「あの、凪沙さん。シャー芯を買いに行ったということは、財布はあったんですか?」

「持ってたよ」

「では、お婆さんに声をかけられたとき、付き添いでついて行ったのは凪沙さんの意思ですか?それともお婆さんからの申し出ですか?」

「私の意思だよ。不安そうだったから」

「そう、ですか…」

考えを巡らせながら気づく。

大山さんは、怒ったら怖い人なのではなく、間違えたらきちんと考えさせる人なんだ、と。


「私は、この街に来てほんの少ししか経っていません。だから、駅までの道のりを検索して、お婆さんと一緒に行きます。おそらくスマホの充電はそこで切れるでしょうから、公衆電話を探して誰かしらに電話をかけて迎えに来てもらうかもしれません。財布に百円玉くらい入っているでしょうし。…そもそも、知らない街を一人で歩こうとは思いませんけど」

そう、これは、凪沙さんがこの街に慣れているが故に起こってしまった事故だ。

私の回答を聞いた大山さんは、頷いてから視線を横にずらした。

「うん、そっか。じゃあ、悠くんは?」

「えっと…」

まさか指名されるとは思ってなかったんだろう。

悠くんは、たじろぎながらもこう答えた。


「俺は、きっとお婆さんと一緒に駅を探してしまうかもしれません。もしくは、交番、地図でもあればいいですけど。

というか、シャー芯は切れそうだと思ったら2、3個まとめて買うので、予定がある日に出かけることはない気がします」

悠くんらしい答えだと思った。

起こってしまった場合だけでなく、そもそもの予防策まで考えている。

さすがだ。

「そっか」

大山さんは、静かに頷く。

今の一連の流れで分かった。

大山さんは、ちゃんと信頼できる人だ。


「そういえば、さくらんって学部なに?」

「えっと、人文学部です」

「ってことは文系だ?」

「はい」

「凄いね。あたし、英語さっぱりでさ〜。あ、でも、人文学部だから関係ないのか?」

「ああ、でも、英米言語学コースなので、多少は」

「わぁ…もう、未知の領域だわ…」

そう言って、グビっとお酒を煽る。けれど、まだ酔った様子はない。

「そういう凪沙さんは、どこの学部なんですか?」

悠くんが、さすがのコミュ力で会話を広げる。

「あたしは、薬学部。六年制のほうね」

「ってことは、薬学科ですか?」

「そーそー」

薬学部。私にとっては、こっちの方が未知の領域だ。

なのに、凪沙さんはなんて事ないように喋る。

大山さんといい、凪沙さんといい、すごい人達に出会ってしまったようだ。

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