⑥
「ほら、カミーユ様にデザート持ってこいよ」と優しい顔をしたオーバンさんに背中を押され、私は涙を拭ってチーズケーキタルトをお皿に盛り付けた。
そんな私を見守ってくれる料理長。
「ほほお、レモンか。これは美味そうだ」
そう言って、私の頭をポンポンと撫でてくれた。
料理長の優しさにも堪えきれずにほろりと泣いた。
綺麗に盛り付けたチーズケーキタルトを持ってカミーユ様の元へ向かおうとしたら、シャルロット様とオーバンさんがなぜかカミーユ様に詰め寄っていた。
「お前、自覚あったのか?!」
「……」
「あってそれか!なんてことだ…私の部下のくせにとんだ弱虫で呆れた…」
「シャルの言うとおりですね。同じ男からしても、カミーユ様は情けないヘタレ野郎です」
「……」
呆れた顔をするシャルロット様とオーバンさんをジトッと睨むカミーユ様。
「あの、どうかしましたか?何の話かわかりませんが、カミーユ様は弱虫ではないと思います」
そう言ってカミーユ様の前にチーズケーキタルトが乗ったお皿をそっと置くと、三人とも目を大きく見開いて私を見つめた。
「おま、どこから話聞いてた?!」
焦った様子のオーバンさんを見て、私が聞いたら都合の悪い話だったことを察し、少し寂しい。「自覚あったのか?あたりです」と、シラけた顔をして答えた。
シャルロット様とオーバンさんはホッとした顔をして胸を撫で下ろしていた。カミーユ様は安定の無表情だが…いつもより少し眉が下がっている気がする。
「カミーユ様、あのお店のタルトを再現してみました。ぜひ召し上がってください!」
「……ああ」
小さく頷いて、タルトを口に含む姿が嬉しい。
私は自然と口角が上がり、目を細めてカミーユ様を見つめた。
「………うまい」
そう言ったカミーユ様は、私を見て小さく口角を上げた。
「俺のために、ありがとう。そして、すまなかった」
「カミーユ様…!」
「…今回は俺が勝手にしたことだ、お前は何も悪くない」
「そんな…本当に私は何もしていないですか?では、私はいつも通り、カミーユ様のご飯を作ってもいいのでしょうか」
「……ああ、何もしていない。今後もよろしくたのむ」
「カ、カミーユ様…!私、カミーユ様に料理を作って食べてもらえることが幸せなんです。これから
もよろしくお願いします…!」
カミーユ様は少しだけ口角を上げて、少しだけ目を細めて私を見つめてくれた。
今度は感動の涙を流して忙しない私を、オーバンさんとシャルロット様は子供を見るような視線で見守ってくれた。
結局カミーユ様が何に対して怒ってたかはわからないままだったけど、無事に仲直りができた。
夢でここまで見れていて予知できていたら…カミーユ様と仲違いになることもなかったのに。
つくづく自分の不思議な力は臨機応変には働いてくれないのだと実感した。
そして今日も、いつかくるメラニー様と結ばれる夢の光景が現実で起きないことに安堵した。




