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チートがあるとは限らない(打ち切り)  作者: 黒乃瀬 綾斗
2章 使用人見習い編
16/30

15話 馬小屋生活から抜け出したい

あらすじちゃん「前書きちゃん、今日から私たちがここで前回のあらすじをするらしいよ」

前書きちゃん「そうなの?」

あらすじちゃん「作者がそう言ってたの」

前書きちゃん「そっかー、ところで前回って何があったんだっけ?」

あらすじちゃん「作者に収録前に前回のお話は確認するんだよって言われてたでしょ!」

前書きちゃん「お菓子食べてたから忘れてたー」

あらすじちゃん「もう!次からはちゃんと確認してね。前回のあらすじ、ローリィ君の告白デートが失敗に終わる、以上!」

前書きちゃん「あらすじちゃんはよく覚えてないでしょー」

あらすじちゃん「私は確認していただけ、前書きちゃんよりはましだから!」

 臭い…。

 とある日の夜中、臭いにおいがして目が覚める。

 においのする方向を見ると、向かいの扉の下には馬の足と馬糞が見える。恐らくあの糞のにおいがここまで来ているのだろう。

 街に来てからはや3ヶ月とちょい。馬小屋生活も慣れたつもりでいたが、まだまだ馬小屋生活には慣れていなかったようだ。


「うん、馬小屋生活から抜け出そう」


 藁は敷いているが硬い地面に直接寝て、朝着替えていると馬小屋を経営している人に裸を見られて、たまに屋敷に泊まったりはするが、その度に部屋という概念に感動する。

 寮の部屋と同じとは言わないけどせめて、個室でぐっすりと眠れる空間が欲しい。


 だけどそれには家賃が1月2万シアという絶対的な壁を打ち破らなければならなかった。

 普通の借家に住む場合、月6万シアはかかる。僕の払える金額の3倍の金額だ。一番安いのでも4万シアはかかるだろう。まずはこの金策問題を何とかしなければならない。しかし契約上、屋敷以外では働くことが出来ない。そのためお金は屋敷で稼ぐ分しかないのだ。

 そしてもう1つの問題がある。スレイドさんのことだ。

 僕はスレイドさんを殴ったことにより街に来ることになったのだが、毎月払われる給料の2割が引かれることになっている。そして僕は毎月10万シア稼ぐので、なんと2万シアも彼に引かれているのだ。あの金額さえ手に入れば借家を借りることも出来るのに……。

 いや、そもそもスレイドさんを殴ることがなければ街に来ることもなかったのでは?


 結局は殴った自分が原因かよ。

 でも2割は持っていき過ぎな気がする。せめて1.5割、いや1割にしてもらえないか相談してみるとしよう。


 翌日、仕事を終えると屋敷の隣の隣にある建物へと向かう。建物の名前はロードス魔法研究所。この街ロードスの名前がついた魔法研究所だ。ここでは、魔道具や魔法書スクロールの製作や実験を常にしている。

 そしてその研究所の副社長を務めているのがスレイドさんだ。


「すみません、スレイドさんはいますか?」


「スレイド副社長なら今は執務室にいると思うよ」


 教えてくれた狼の獣人にお礼をし執務室に向かう。

 コンコンッとノックをして執務室に入る。執務室ではスレイドさんが書類に頭を悩ませていたが、僕が部屋に入るとすぐに気づく。


「なんだ、セレン君か。どうしたんだい?きみがここに来るなんて珍しい」


「お願いがあってきました」


「お願い?」


「はい。毎月の給料から2割渡すのを1割に減らしてもらえないでしょうか?」


「あー、そのこと。その理由も聞いていいかい?」


「そろそろ馬小屋から脱したいなと。いや、別に馬小屋生活が駄目なわけじゃないんですが、色々と辛い部分もありまして」


「なるほどね」


 スレイドさんは手で顎を撫でながら悩む様子を見せる。

 けど、もう答えは決まっているんだろうなぁ……。

 スレイドさんは、人にものを頼まれた時に既に答えが決まっている場合、顎を撫でる癖がある。これはルクス伯爵様から聞いた事で、どうやら本当のようだ。


「いいよ、と言いたいところだけど一つだけど条件がある」


「条件ですか?」


「ああ、あるものを隣街にいるドーラドアという人物に届けてきてほしいんだ」


「ドーラドアさんですか?」


「詳しいことは後で説明しよう。まずは受けるか受けないかだけ教えてくれ」


 どんなものでも、受ける受けないの選択肢をくれるところはスレイドさんの優しいところだ。殴った時も、一応は選ばせてくれたからな。まあ、実質選択肢は働くの1つだけだったけど。

 でもこれを受けないと1割に減らすという話は無くなるのだろう。


「やります、やらせてください」


「そうかやってくれるか、ありがとうセレン」


 うわー、絶対に僕が断らないと分かっていただろ。にやにやした嫌な顔しやがって。いや、まあ確かに断る理由なんてないんだけどさ。


「じゃあ、まずは届けてほしいものから見せようか」


 スレイドさんはそういうと、ついてきてと言って執務室を出る。

 僕もそのあとを追いかけて部屋から出る。

 部屋から出ると、研究員がスレイドさんに向かって挨拶をする。これでも研究所の副社長だから、この場所では2番目に偉い。というか、最初あった時の税務職員の仕事は副業だったらしい。

 そんな大事な仕事を副業でしないでほしいんだけど。


 しばらく研究所内を移動してると、とある部屋の前に着く。


「さて、ここだよ」


 スレイドさんは懐から鍵を取り出すと、鍵穴に差し込み持ち手を捻って鍵を外す。

 扉を開けると、そこにはたくさんの木箱があった。

 スレイドさんは部屋の中に入り、木箱の1つをこんこんと叩きながら振り返る。


「セレンにはこれを運んでほしいんだ」


「無理です」


 反射的にそう答える。

 いやホント無理、大きすぎるんだよ木箱のサイズが。1つ1つのサイズが少なくとも僕が3人は入れるサイズだ。大きいものになると、僕が10人は入れそう。


「安心していいよ。流石にこのサイズの物は運んでもらおうとは思ってないから」


 スレイドさんは苦笑いすると、大きな木箱の中から巻かれた紙を数枚取り出すと、小さな箱に入れる。


「はいこれ。これを隣街にいるドーラドアさんに届けてほしい。それとこれは、隣町行きの馬車の乗車券とドーラドアさんに会えたら渡す書類。書類には持ち主をボクが保証することが書かれているから困ったらこれを見せるといいよ」


 小さな箱とその上に乗った乗車券と書類を受け取ると、スレイドさんはボクは忙しいからこれで失礼するねと言って、来た道を走って戻っていった。


 スレイドさんから渡された乗車券を見ると、明日の日付が書かれている。

 よかった明日で。

 明日は休日で時間もある。念のためにローリィ様かノーラ様に連絡をしておけば、数日かかったとしても何とかなるだろう。

 その代わり、他の日の休日が無くなるかもだけど。


 来た道を引き返すと、そのままの足で屋敷に向かう。流石に、貴重品を馬小屋には置いてはおけない。それに話を通しておくのも早いほうがいいだろう。


「あれ、セレンじゃない?」


「エレイナ姉さん…」


 屋敷に入ると、働いている最中のエレイナ姉さんと会った。

 あれだな、なんか後ろめたい気持ちが……。


「セレン、何か屋敷に用事でもあるの?」


「うん、ノーラ様かローリィ様にスレイドさんから頼まれた用事で、隣街に行くことを伝えたくて」


「ローリィ様は知らないけどノーラ様ならさっきまで私室に居たわよ」


「ありがとうエレイナ姉さん、じゃあお仕事頑張って!」


「セレンこそ隣街には気をつけて行くのよー!」


 ノーラ様の部屋の前につくと深呼吸をしてからノックをする。


 コンコンッ


「あら、どなたかしら?」


「セレンです。ノーラ様に話したいことがあって参りました」


「いいわよ入ってきて」


「失礼します」


 部屋に入るとノーラ様はベッドの上で横になっていて、スカートの中身が見える。……黒か。


「セレンどうしたの?こんな時間に尋ねるなんて」


 スカートの中を見ていることをバレないように極めて冷静に努めると、スレイドさんから頼み事を受けた事を話す。そして、渡された箱や書類を渡す。

 すると先程までベットの上でダラーっとしていたノーラ様は、書類を見ると、椅子に座り箱の中身も見ていく。


「なるほど、分かったわ。モルスさんとお父様にはわたくしから伝えておくわ」


「ありがとうございます」


「それはそうと、このあとセレンは暇かしら?」


「このあとは箱や書類をリオンさんに預けた後、小屋に戻る予定したので時間は開いてます」


「そう、ならこの後一緒にお風呂でもどうかしら?それにこれもわたくしが預かっていた方が安全ではなくて?」


 ノーラ様って本当に世話やきな気がする。

 よくお風呂に誘ってくれたりとか泊まらせてもらったりとかしてるし、昔は我儘とか言われていたが、根っからの我儘という訳ではなかったんだろうな。そうじゃないと、ここまで面倒見がいい人にはなんないだろうし。

 それとノーラ様が預かるなら、確かにそれはリオンさんよりも安全だろう。使用人が住む寮もそれなりの警備はされているが、屋敷と比べると少ない。


「はい、ならお願いしてもよろしいでしょうか?」


「いいわよ。それじゃあ一緒に浴場に行くわよ。背中の流し合いなんてのもありかしら……」


 お風呂に関してはお願いしてないんだけど、今更断りづらい。

 一度帰って着替えでも取ってこようかな……。


 ガシッ!


「えっ?」


 突然ノーラ様に腕を捕まれて思わず足を止める。こんなことは今まで無かった。いや、どこかに行くのを止められた事はあったが、物理的に足を止められるのはなかった。


「どこにいくの?」


「えっと、ですね。服を取りに一度帰ろうかなと」


「それなら大丈夫よ。わたくしが昔着ていた服を貸してあげるから」


「いえいえ、昔ノーラ様が着ていた服を着るなど出来ませんって」


「それは、わたくしのお古を着るのが嫌だという意味かしら?」


「いえ、それは違います」


「なら問題ないわね」


「いや…はい……」


 だめだ、なんか逃がしてくれそうにないこの人。

 服を借りるのが嫌だという訳では無い。

 だけどノーラ様の服は別だ。

 ノーラ様は貴族なので子供の頃の服も高級品だ。そう、高級品だ。たとえそれがもう着ない服でいつ捨ててもいいやつだとしても高い服に身を包まれた僕は、汚したら殺されるという気持ちでぐっすりと眠れないだろう。

 もしも服を持ってきていればこんなことにはならなかったのに……。

 更衣室まで来てしまった。ここで服を脱いで浴室に入ったら、上がる頃には、ノーラ様が昔着ていた服が置かれているはず。

 これだけは僕の安眠のためにも、抵抗してみるとしよう。


「ノーラ様。少しおトイレに行ってきてもよろしいですか?」


「あら、いいわよ」


 マジか。

 ここまで簡単に行くとは思ってなかった。でも、これで早く馬小屋に帰り服を用意すれば僕の勝ちだ。


「エレイナいるー?」


 突然、ノーラ様はエレイナ姉さんを大声で呼ぶ。


「はい、エレイナはここにいます」


 しばらくするとエレイナ姉さんが来て、メイド服の裾の両端を少しだけ持ち上げる。


「エレイナ、悪いんだけどセレンをトイレに連れて行ってあげてくれるかしら」


「分かりました。セレン、付いてきなさい」


 ……諦めよう、最初から逃げ場なんてどこにも無かったんだ。

後書きさん「お風呂好きかよ」

桐原優「いや、違うんです。なんかノーラさんを書いたらお風呂回に入ってしまうんです!なんでか知らないけど…」

後書きさん「じゃあなに?誰かが作者にお風呂回を書けと言ってるとでも?」

桐原優「もしかしたらそうなのかも知れません。……実はノーラさんが書くように洗脳していたりして」

後書きさん「怖いわねそれ。でもそれならあたしが洗脳されているのに気づかないはずが無い。きっと作者が無意識に書きたいと思っているのよ」

桐原優「そうなんですかね…。分かりました、次は出来るだけ抵抗してみます」

後書きさん「まあ、何かあったら助けてはあげるから、今はすぐにお風呂回に頼らないようにだけ気をつけるといいわ」

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