14話 告白デート
あの後、更衣室で倒れていたリオンさんを部屋に運ぶと、そのまま寮でお世話になった。その時にエレイナ姉さんが、ローリィ様に言い寄られていたのも見かけた。
メイド長に話を聞くと、ローリィ様は何を思ったのかエレイナ姉さんに一目惚れしたらしい。そしてエレイナ姉さんと初めてあってからは、ずっとこの調子だそうだ。
そして僕は今日、そのローリィ様に呼ばれていた。
部屋に入ると、机の上でゲ〇ドウポーズをしているローリィ様がいた。
僕は素早く姿勢を正すと、右手をグーの形にし心臓に持っていく。そして左腕を後ろの腰に回した後、左膝を床につける。これはこの王国の礼儀作法の一つで、貴族や王族などに呼ばれた時に忠誠を誓っている事を証明するためにするらしい。
街についてからルクス様に会う前にも、メイド長さんにこれだけは覚えとくようにと言われたので覚えている。
「セレン、ローリィ様に呼ばれてただいま参上致しました」
「そうか、楽にしてよい」
ローリィ様がゲ〇ドウポーズを崩し、右の掌を上に少し上げる。それと同時に、姿勢を崩さず立ち上がり手を腰の横につける。いわゆる気をつけの姿勢だ。
「セレン、今回君を呼んだのは他でもない。エレイナの事についてだ」
きたー!!
いや来ると思っていましたよ、だってローリィ様だよ。僕より頭が良くて基本何でも出来ると思われるローリィ様が僕を呼ぶことがあるとしたらエレイナ姉さんの事ぐらいしかない。
さてさて、ローリィ様はエレイナ姉さんの何を聞くのかな?
話しますよ、知っている限りは何でも話しますよ。
知らないと偽ったことで罰とか受けたくないもん。
「実は、オレはエレイナに告白をしようと思っている」
はぁぁあああいいいい!!??
……やばい今の声に出てないよね?
いやそれよりも何で?質問は?好きなものや好物は聞かないの?えっ、それにこれなんて返事を返せばいいの?はいとかそうですかはダメでしょこれ絶対。
「それでエレイナと同じ村からきたセレンに聞きたいことがあるんだが」
あっ、続けてくれるんですね。なんかおかげで落ち着いてきた。
「はい、何でしょう。知っている範囲でならなんでも答えます」
「そうか、ありがとう。じゃあ聞こうか、エレイナの好きな場所は何処か分かるか?」
エレイナ姉さんの好きな場所。恐らく、告白する場所として使うのだろう。しかし……何処だ?いや、村にいる時は好きな場所について余り興味なかったように見えたし、街に来てからは会う機会なども減った。だから余計にわからない。でも、女の子らしい所も結構あって、花とか星が良く見える夜空が好きだったと思うから、それらが良く見える自然溢れる場所が好きなのかも。
「申し訳ございません。その辺のことついてはよく知りません。ですが、花や夜空が見える場所がよろしいかと思います」
「ほう、その理由は?」
「エレイナさんは、花や綺麗な夜空が好みだったと思われます。花や夜空の片方よりも両方見える場所の方が気分は良くなると思われる事から2つが見える場所が良いと判断いたしました」
「そうか、情報提供感謝する。まだ聞きたいことがあるのだが、このあとの時間は空いているか?」
「申し訳ございません。このあとは庭師としての仕事が入っておりまして、時間は取れないかと思います」
「そうか、ならモルスにはオレから伝えておこう。だから今日は存分とオレに付き合ってくれ」
フィアドール伯爵家の中でもっとも貴族らしい人物はと聞かれたら、僕はローリィ様と答えるだろう。それほどローリィ様は貴族としての振る舞いが上手かった。
そのあとはローリィ様にエレイナ姉さんの情報を知っている限り伝えた。その途中で仲良くなってノーラ様同様、兄と呼ぶことを許された。まあ、これまた問題になりそうだから言わないのだが。
「そうか、なら告白デートの実行は1週間後の無の日がいいか」
「はい、それが一番かと。そしてデートの最後は街の東にある花畑が見える小さな丘に行き、満天に輝く星空の元で告白!」
「ああ、それでエレイナはオレにキュンっとトキメキ、告白の返事にはいと言う。完璧、完璧だぞセレン!」
「ありがとうございます!」
完全に仲良しだ。それに少しだけだが距離も近くなった。
元々エレイナ姉さんがどこかに嫁ぐのは僕としては賛成だ。それが例え、今働いてる職場の雇い人の子供だとしても。
ルーイ兄さんには悪いが、ここはローリィ様を応援させて頂くとしよう。
そして、ローリィ様とエレイナ姉さんが結婚するとなった暁には、ローリィ様に僕も手助けをしましたよねアピールをし、フィアドール家の門番長のポジションを掴み取る。
完璧、こっちも完璧だ。
後ろで手助けをするだけで、安定した収入を得られる職業へとジョブチェンジする。今が楽しくない訳ではないが、やっぱりお金があった方が生活も楽だし、より人生を楽しめる。
だが、問題があるとすれば……。
「ですが、一つだけ問題があります」
「なんだ?言ってみてくれ」
「はい、魔物の存在です。東にある小さな丘は街から離れているうえ、街の兵士も警戒しに来ない微妙な距離です。告白している時に魔物に襲われたら、もうどうしようもありません」
「確かにそうだな。だがそれなら騎士を数名用意しとけば……いや、だめだ。それでは、告白する時にエレイナからも姿が見えてしまうかもしれない。確かに難しいところだな」
「そこで提案なんですが……」
あれから1週間が経過した。今日はローリィ様が告白デートをする日だ。何とか1週間の間に、エレイナ姉さんにデートの約束を取り付ける事に成功していた。若干、貴族だから断れないというのもありそうな顔だったが……。
さて現在の僕ですが、エレイナ姉さんとローリィ様のデート姿を後ろから尾行をしている。いや、決して面白そうだからと尾行しているのではない。これは、ローリィ様と話し合った結果、丘陵で告白している間に魔物が近くにいたら、魔物がいることをローリィ様に素早く伝えるためだ。まずはローリィ様に伝え、その後に街の兵士に連絡をする。いざという時は、僕が魔物を抑えている間にローリィ様とエレイナ姉さんが街に戻る。命懸けの役割だ。
いざと言う時は頼むぞ相棒。
剣帯に差している短刀の持ち手部分を軽く撫でる。剣帯からは何の反応もないが、任せとけ相棒!と言っているような気がした。
デートは順調に進み、街の外に出るというところまで来た。しかし、様子が変だ。何やら少しもめている様子。ここからでは声は聞こえないので、急いで近くの物陰に行き耳を澄ます。
「街の外は危ないでしょ!しかもこの時間になんて、あなたは何を考えているの!?」
「大丈夫だから安心してほしい!それにいざという時は…っ!」
「いざという時は何?」
「オレが…守るから……」
おおーっ!オレが守るからと言ったー!
1度は僕も言ってみたいよ、そのセリフ。
そしてエレイナ姉さんよ、貴族には最低限の敬語は使おうよせめて。確かに危険ということは分かるけどさ、ここまで来たローリィ様の頑張りを認めてあげてほしい。
約3ヶ月、ストーカー…いや健気に話し続けてやっと取り付けたデートなんだ。浮かれているのかもしれないけれど次期フィアドール伯爵様だから、その言葉を信じてあげようよ。
というか失敗したら僕に何が起こるか分からないから本当に怖いんだって!頼みます!街の外に付いてってあげて下さい。
「お願いだ!オレを信じてくれ、頼む!!」
「むりよ!あなたが例え次期フィアドール伯爵なのだとしても、その言葉を信じることは出来ない。危険がないならそれを証明してくれない限り私は街の外に行かないわ」
エレイナ姉さんはそう言い残すとローリィ様を残し、屋敷にある寮へと戻る。僕は、エレイナ姉さんの姿が完全に見えなくなると、ローリィ様の元へと向かう。
「くそ!あと少しだったのに……」
「すみません、ローリィ様。僕がもっとしっかりと、安全を証明する事が出来るデート内容を考えてれば上手くいったかもしれないのに」
「セレンか……。いや、セレンが落ち込む必要はない。これはオレが悪かった。いつもならすぐに気づけたはずの所を、告白まで上手くいけばいいなと浮かれて見逃してしまったんだからな」
「でもデートが……」
「なに、デートのことならまた考えればいい。そして、次に告白をする時は安全な場所ですればいい。むしろ今回のことで、街の外で告白をするのを甘くみていたことを知ることが出来た。それだけでもセレンには感謝しかない」
「ありがとうございます」
「さあ、今日はもう帰るか。セレンも家に泊まっていくといい。きっと、ノーラも喜ぶことだろう」
外が暗くなり街が明るくなり始めた頃、僕達は屋敷へと戻る。次は絶対に告白まで運べるようにしたい。そんな気持ちを抱きながら、屋敷に向かって歩くのであった。
そしてすまない相棒、次こそは活躍させてやるからな。
帰っている途中、鞘の中で出番はまだかと待っていた短刀に心の中で謝る。短刀は許さない!と言っているような気がした。
後書きさん「短刀が喋るわけがないでしょ、頭大丈夫?」
桐原優「インテリジェンスソード(ボソッ)」
後書きさん「なんか言った?」
桐原優「いえなんでも!」
後書きさん「それに今のところ、インテリジェンスソードとやらを出す予定はないでしょ?」
桐原優「あっ、聞こえてたんですね」
後書きさん「うるさい。それでどうなのよ?」
桐原優「そうですね、今のところ出す予定はないですよ。でも、長い間大切に使っている物には魂が宿るとかいいますし、きっとそれなんでしょう。彼女が感じたものは」
後書きさん「確かにそれならあるかもしれないわね。譲り受ける前も故郷から持ってきたとか言っていたし」




