13話 使用人見習いとして
さて2章の開始です。書き溜め?諦めました。
※修正 民間浴場→公衆浴場
村を発ってから3ヶ月が経った。
街に着いてから最初に行ったのは領主様との面談だった。
ルクス=フィアドール伯爵様は優しい人で、僕が使用人見習いとして働くのを許してくれた。今ではエレイナ姉さんはメイドとして、僕は庭師見習いとして生活をしている。
生活はスレイドさんが言っていた通り厳しいものの、何とかなっている。
僕の1月の給料が大銀貨5枚で10万シアだ。これは、普通に生活するとかかる金額の半分しかなく、更にここから大銀貨1枚、2万シアをスレイドさんに支払うので実質の給料は1月8万シア。
そしてエレイナ姉さんは屋敷に住み込みで働いているが、僕は住み込みでは働いてない。お昼の食事は賄いで貰えるが、朝夜は自分で用意しなければならない。自炊する場所が無いので、街にある食堂の一番安い食事を食べるようにしている。1月3万5000シア。
そして今は1月2万シアの小さな馬小屋に住まわせてもらっている。
後は、街にある公衆浴場に入ったりとか生活に必要な物を買うと残金はなくなる。本当にギリギリだか生活は出来ている。
「おいセレン!勝手に花壇の花を弄ったのお前か!」
「はい!面白い花だなと思い、ついつい触ってしまいました!ごめんなさい!!」
「お前、あれ程勝手にいじるなって言ったよな!!」
「はい!申し訳ございません!!」
「あれはな、素手で触ったら簡単に枯れる花なんだよ!よく覚えとけ!!」
「はい!!」
今僕に説教をしているのは、この屋敷専属庭師のモルスさんだ。モルスさんは普段は優しいおじさんだが、庭の事になると人が変わる。
今回は確実に僕が悪いのだが、そんな時も何がいけないのか、そして植物ならその植物の特徴は何かを教えてくれる。
この人の元で働き始めてから、植物や庭石等の配置について詳しくなったような気がする。
「いいか!お前は庭師としてはまだ赤ん坊だ!!だから今は俺の言った事だけをしてろ!そして分からないことがあったら、どんどん聞け!俺が全て答えてやる!!」
どうやら本当に詳しくなった気がしただけだったらしい。モルスさんからしたら僕はまだ赤ちゃんのようだ。せめて今の年齢になるぐらいは頑張るとしよう。
今日の仕事が終わり、自由の時間がやって来る。何時もなら馬小屋に帰り休んでいるが、今日はリオンさんに剣を教えてもらう日だ。
実は村を出る時に父さんからあの短刀を譲り受けた。街では何があるか分からないからって。それ以来、短刀を上手く扱えるようにリオンさんに剣を教えて貰っている。
だけどリオンさんも、屋敷に住み込みで働く騎士で普段は忙しいので、5日間ある1週間の内、水の日と無の日に教えてもらう事にしていた。
「今日もご指導よろしくお願いします、リオンさん」
「こちらこそよろしく頼む。それでは、まずは素振りの確認からしていくぞ」
リオンさんから教えてもらった通りに短刀を斜め上から下へと何度も振り下ろす。
「ふむ、短刀の扱い方には慣れてきたようだな。それならば、今日はわたしと模擬戦をしようではないか」
「模擬戦、ですか?」
「ああ、そうだ。ルールは簡単、相手が降参するか戦闘不能になるまでだ。あと、セレンはその短刀を使っていいからな」
「えっ、でも怪我をしたら……」
「わたしが怪我をするとでも?」
いえ、僕が怪我をするんです。
リオンさんは、騎士という事もあって強い。あの日、村で戦った時はすぐに捕まって余り分からなかったが、街に来てから何度も戦闘を見る機会があった。それで分かったのだが、リオンさんは父さんよりも確実に強い。
そんな人に模擬戦で刃の付いてない剣を使われたら、例えそれが木剣だろうと大怪我をすること間違いなしだろう。
「いえ、僕が間違っていました。何でもありません」
「そうか、なら少し休憩したら模擬戦を行うとしよう。それまでは体を休めておくといい」
だが、大怪我をするよりも大事なものがある。
圧倒的強者であるリオンさんと模擬戦とはいえ、戦えるのは貴重な機会だ。この機会、絶対には無駄にはしない。そして出来れば、一泡ぐらいはふかせたい。
「準備はいいか?」
「はい、大丈夫です」
休憩が終わり、お互いに剣を構えると向き合う。
僕は短刀を持っているが、リオンさんが持っているのは試合などでよく使われる刃引きされた剣だ。
一般の人が見たら、僕に刃引きされた剣を使うように止めるかもしれない。だけど、ある程度の実力者が見たら何も言わないで観戦するだろう。
「じゃあ、試合開始だ!」
試合開始の合図とともに、僕はリオンさん目掛けて切りかかる。狙いは右腹だ。横に切りはらった短刀は、吸い込まれるようにリオンさんの右腹に当たる直前、短刀と右腹の間に剣が挟まれる。
リオンさんは、僕が行動するのを待ってから行動を始めた。そして、僕の短刀が体に当たるよりも早く、剣を短刀と体の間に挟んだのだ。
早い!
予想はしていたが、ここまで早いとは思わなかった。対峙して改めて分かるリオンさんの強さ。彼女が振る剣は、力任せに振る父さんとは違い、速さに特化している。
このままでは、リオンさんの動きを超えることが出来ない限り、何も出来ずに敗北してしまうだろう。
せめて、僕に力があればなぁ……
父さんのように力があれば、速さで超える事はなくても剣をぶつけ合うことで、体勢を崩すことが出来て勝つことが出来るだろう。しかし女の子の僕には力はなく、剣を振る速さでも勝つことは出来なかった。
「どうした、そっちから来ないならわたしからいくぞ」
攻めたいのはやまやまなのだが、如何せん何をしても防がれる。
僕に出来るだけ攻撃をする機会を与えてくれているのか、リオンさんはカウンター以外なにも攻撃してこないが、このままではリオンさんが攻撃に回ってしまう。
その場合、僕にはリオンさんの攻撃を防ぐ手段がないのですぐに、敗北してしまうだろう。
どうする?どうやって攻める?
どう攻めるか考えていると、時間が来てしまったらしい。
リオンさんは、いくぞ!という掛け声とともに剣を縦に構えると、一瞬でその姿を消す。
短刀を構えて周りを警戒しようとするが、気づくと既におでこには、剣が突き立てられていた。
「まいりました…」
両手を上げて降参のポーズをとる。
「わたしの勝ちだな」
いつの間にか剣はおでこから離れており、リオンさんの姿も見えている。リオンさんは剣を地面に置くとタオルを取り、僕に投げて渡す。
「そうだな、模擬戦をして分かったが、セレンは考える事に集中しすぎて攻撃が疎かになっているな」
「じゃあ、何も考えずに戦えばいいんですか?」
「いや、そうではない。実戦で戦う場合、考えることよりも動くことの方が大事だ。もちろん考えることも大切だが、考える事に集中して体を動かさなければ、相手の攻撃があたり怪我をしてしまうからな。ただこれは実戦の場合であって、ただ短刀が上手く扱えるようになりたいだけなら必要はない」
つまりあれか、短刀を扱えるようになりたいだけなら覚える必要は無いけど、短刀を使う機会があるとしたらそれは何かと戦う時だから、覚えといた方がいいというやつですか。
「わかりました。ありがとうございます」
「そうか、じゃあ今日はこれぐらいにして終わろう」
「お疲れさまでした」
「ああ、お疲れさま。あとセレン、このあと暇はだったら一緒にお風呂でもどうだ?フィアドール伯爵様にお願いして、屋敷の浴場を貸してもらえる事になったんだが」
「いいんですか!?是非よろしくお願いします!」
「なら、着替えを持ってきたらわたしの部屋まで来てくれ」
「はい、すぐ行きます!」
急いで馬小屋に帰ると、木箱から服を取り出してまた屋敷へと走る。使用人の住む寮に着くと裏口から入り、リオンさんの部屋に向かう。リオンさんの部屋に着くと、今度はノックをする。
「リオンさーん、来ましたよー。僕です、セレンです」
「さすが早いな。少し待ってくれ、わたしも着替えを取ってくる」
着替えを持ったリオンさんと屋敷に行くと、メイドの1人と話をして浴場に向かう。途中エレイナ姉さんも見かけたが、こちらは特に話をしないで通り過ぎる。
「うわぁ、ここが屋敷の浴場ですか」
「セレンは初めてだったか?」
「はい、普段は屋敷に入りませんので」
屋敷の浴場は公衆浴場よりは小さいが、それでも大きい。しかし、公衆浴場との違いは大きさだけではない、その豪華さだ。
公衆浴場は湯船にシャワーだけの質素な浴場だったが、屋敷の浴場には彫刻師が作った生命神の石像や口からお湯の出るドラゴンなど、お金をふんだんにかけていることが分かる。
「でも……なんでノーラ様が?」
「あら?わたくしと一緒に入るのは嫌だったかしら?」
「いえ、とんでもございません。嬉しい限りです」
「ふふっ、そんなに固くならなくてもいいのよ、セレン」
ノーラ様はフィアドール伯爵家の長女だ。
フィアドール伯爵家は当主のルクス様、次期伯爵にして長男のローリィ様と長女にして末っ子のノーラ様3人家族で、ルクス様の奥様はノーラ様を産んでからしばらくして亡くなってしまったらしい。元々体の弱い人だったそうだ。
ノーラ様は屋敷でも一番下の年齢で我儘な性格だったが、僕がきてからは一番下の年齢じゃなくなり、僕に姉として振る舞えることを喜んだそうだ。まあ、そのおかげで我儘な性格は改善したと思われるが、頭を撫でるのは恥ずかしいからやめて欲しい。
「ねえセレン?」
「何ですか、ノーラ様」
「お姉ちゃんって呼んでもいいのよ?」
「大変嬉しい事なのですが、僕がノーラ様の事をお姉ちゃんとお呼びすると、フィアドール家に対して変な噂が流れるかもしれないので、ご遠慮させていただきます」
「ちぇ、つれないわねセレンは」
「そうですよノーラ様。もしルクス様の隠し子とか噂が流れたら困るのはノーラ様も一緒ですからね」
「はいはい、リオンも口うるさいわねー」
そういえば、ここ3ヶ月で貴族に対しての話し方も慣れてきたな。気がついたら敬語でしか喋れないとかなるのかな。
それはそれでなんか怖いな。
「セレン、そういえば庭師としての仕事はもう慣れたかしら?」
「そうですね、自分的には慣れたつもりでしたが、モルスさんからはまだまだ赤ん坊と言われてしまいました」
「大変なのねぇ、庭師というのも」
「確かに大変ではありますが、勉強にもなります。モルスさんは庭のことについては誰よりも知っていると自負してましたから」
「モルス殿は庭のことになると人が変わるからな。だがあれほどの庭師は国中の何処を探したってそう居ないだろう」
「へー、モルスって凄かったのね。知らなかったわ」
モルスさんが凄いの知らなかったのか。庭師からしたら庭は命をかける場所だけど、案外他の人からしたら庭のことなど余り気にしないのかもしれないな。そうすると、なんかモルスさんが凄い可哀想に見えてきた……。そしてその中に僕も含まれている事を忘れてはいけない。
「っと、そろそろ上がりますか?のぼせますし」
「そう?わたくしはまだ大丈夫だけれど……ああ、リオンね」
「いえ、わたしはまだまだ大丈夫です」
「そうは言っても顔は赤いじゃない」
「本当に大丈夫ですから……。もう少しだけ入らせてください!」
こりゃダメだ。リオンさんのぼせるまで出ない気だな。確かに屋敷のお風呂はリオンさんでもめったに入れないと思うけど、のぼせるまでは入り過ぎでしょ。……こうなったら仕方が無いか。
「いえ、僕がのぼせそうなんです。そして1人で上がるのは寂しいかなと思いまして……皆で出るのはダメですかね?」
「それならば仕方が無い、わたしも出ようと思います」
リオンさんはそう言うと、足早で更衣室へと向かった。
「悪いわね、セレン」
「いえ、これもリオンさんに剣を教えてもらっていますから」
僕達もリオンさんを追いかけて更衣室へと向かう。その際、湯船から立ち上がった時にノーラ様の胸が見えたのだが、大きくはなかったが小さくもなかったと言っておこう。
???「……」
桐原優「あの、なんか喋ってください」
後書きさん「前から思っていたんだけど、作者は話を繋げるのが苦手なの?」
桐原優「はい、苦手です…」
後書きさん「そっか、でも小説を書きたいならさ、上手く繋げられるように頑張りな」
桐原優「分かりました。頑張ります!」
後書きさん「張り切りすぎて気持ち悪いよ…」
桐原優「辛辣すぎません?」
今回からこんなふうに後書きで遊んでいこうと思います




