12話 エピローグ
今回少し長いです。
その日、珍しく朝早く目が覚めた僕は、体力作りが目的で村の内周を走っていた。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ!」
苦しい!息が苦しい!!
今まで休むことなく走り続けていた為、息が苦しい!
もう休もう、そうしよう!!
いやでも、あと少しでスタート地点に戻る。
ここまで来たら最後まで走ろう。そして走りきったら休もう。
ふう……疲れた。
それにしても、結局3周しか走れなかったな。
村には沢山の家が建っていてるため、見渡す事は出来ないが、出来る限り村を見渡す。
いや、3周も走ったと言うべきなのかな。
よくよく見ると村の内周はそれなりに広く、トラック1周分はある事が分かる。
うん、子供にしたら頑張ったほうだろう。
なにせ、1km近く走ったんだ。大人ならともかく、6歳の女の子がだぞ。普通に考えたら凄い事だろう。
だから、頑張った僕の事を褒めてよ!!
沢山の人達が見ている中、史上初の快挙を成し遂げた人物として讃えられる。そんな妄想をしながら休憩する。
「馬車?」
ふと気づくと、村の入口には馬車が止まっていた。
この時期に来る馬車といったら税務職員か冒険者だが、村長が冒険者に依頼を出した覚えはないし、馬車がやけに豪華なので十中八九、税務職員だろう。
あ、降りてきた
馬車から降りてきた男性は父さんにも負けない程の高身長で、金髪翡翠色の目をしたエルフだった。
普通なら、ヒャッハー!エルフだー!!と喜ぶ所なのだろう。
しかし降りてきたエルフは男で、しかもそこら辺にいそうな普通の男という顔だ。興奮なんてしない。
いや、今は女の子だから喜んだ方がいいのか?
や、やったー、エルフだぞー。うれしいなー。
うん、辞めよう。
それにしても、エルフか……。
元の世界のエルフといえば、長寿で頭が良くて、森に住んでいる精霊的な存在だったな。
あと女の子のエルフはロリ、スレンダー、もしくは巨乳等と色々な種類が居た。
対して男のエルフは総じて頭が固く、ヒロインのエルフの幼なじみは婚約者の確率が高い。
うん、アイツ敵だ。
いつか、エルフの子と付き合った時に立ちはだかる壁となる存在に違いない。
倒せる時に倒しとかなければ……。
でも今だったら女の子のエルフとは、性的というよりは友達的な感覚で付き合いそうだな。
最近女性に対しての感覚が、異性というより同性という感覚に変わってきている。
だからといって、男性に対しての感覚が同性から異性に変わったわけでは無い。こちらも同性という感覚だ。
そして男性を異性として見る事はこれから先もないだろう。
って、あれ?エルフの人どこいった?
いつの間に何処かに行ってしまったのか、先ほどの場所にエルフの男性の姿は無く、馬車の姿も消えている。
うーん、税務職員なら村長に用事があるだろうし、多分村長の家に行ったのかな。
……命拾いしたな、名も知らぬエルフよ。
さて、充分休憩も出来たし、何をしようかな。
正直走るのはもう嫌だ。
あの呼吸が出来ない苦しさはもう味わいたくない。
というか、今日の体力作りは終わってもいいんじゃないかな?
もう充分走ったし、無理をしすぎても意味無いでしょ。
そうだよ、もう帰ろう。
家に帰ると、お母さんが寝ていた。
お母さんを起こさないように通り過ぎ部屋に入ると、手作りの短杖を持って魔力を感じようとする。
この短杖は結構前に父さんが作ってくれた物だ。
お母さんに魔法を教えてもらえないので、魔法の杖が欲しいといったら父さんが作ってくれた。
まさか、そこら辺に生えていた木から魔法の杖が作れるとは思わなかった。
なんでも一部の木には魔力が篭っているらしい。そしてその木を加工する事で、魔法の杖が出来るとのこと。
お母さんが作ってもいいよと言ってくれたのは嬉しかったけど、あの笑顔はなんか怪しい。
まあ、作るのを邪魔されたわけじゃないし、気のせいだったのかもしれない。
「フンッ!」
この前に魔法の習得しようとした時は短杖を使うのを忘れたが、今日は忘れない。
短杖を掲げると力を込める。
すると、周りにふわふわとした魔力らしき物が浮かび始める気がした。
だがこれは本当の魔力ではない。僕の妄想で出来た空想の魔力だ。妄想する事で何か掴めないかと思った僕は、先日からこの修行法を試してみる事にした。
「むむむむむむっ!」
空想の魔力を感じながら自分の体内にある魔力を感じようとする。しかしそこで集中力が切れてしまい、妄想で作った魔力が四散する。
「ああっ!」
くそぅ、また失敗か。
これは集中力をどれだけ長い間保てるかに掛かっている。
今の僕では空想の魔力を作ることが限界だ。
もう少しなんだけどなぁ……。
あと少しで体内にある魔力が、自分が作った魔力と違うかが分かるはず。
それは根拠のない自信でしか無いが、それと同時に分かるという確信を持たせる。
そうする事によって、例えそれが本当に意味の無い事だとしても、自分にやる気を持たせる理由を作っておくのだ。
魔法を使うのを、習得するのを諦めてしまわないように。
魔力を感じる特訓をしていると、コンコンッと家をノックする音が聞こえた。
「はいはい、誰ですかー?」
家を開けると、重鎧を着た騎士が立っていた。
えっと、騎士?なんで騎士?
ああそうか、エルフの人か。あの人は税務職員のだったはず、それならば身の安全のために騎士を連れていてもおかしくない。
でも馬車から降りた時には居なかったよねきみ。どこから来たのかな?
「失礼…はあ…はあ……ここは…カストル殿の…ご自…宅……でよろ…しい…か?はあ…はあ……」
女性の声?
いや、騎士に女性が居ないとは思ってないよ。でもさ、なんでそんな苦しそうに喋っているの?
もしも鎧が重いなら脱ごうよ、脱ぐのが駄目なら頭の部分だけでも外そうよ。それだけでも結構変わると思うよ。
いやまて、鎧、騎士、女性。この3つが揃っているということは何か理由があるのかも。元の世界では、確か顔に傷がーとか、女性が騎士等馬鹿にされるからとか色々理由があったはず。
ならばここはツッコんではいけない場面なのだろう。
「はい、そうですけど」
我ながら華麗にスルーとはいかないものの、何とか相手に悟られない程度には上手なスルーをきめる。
「そう…か……はあ…はあ……ならファ…ノン……はあ……という…人物は……はあ…はあ……居る…はあ……だろうか?」
はあはあはあはあ、うるせぇー!!
もう駄目だ。会話が出来ないほど酷い。これは顔を覆っている鉄兜だけでも外してもらうしかないだろう。
「あの、苦しいなら鉄兜…ヘルムを外してもらっても大丈夫ですよ。何言っているか聞き取りづらいですし……」
「はあ…はあ……心…配……感謝…はあ……する……。でも問……はあ…はあ……題……ない…」
「いや、こっちが聞き取りづらいんです!だから外してください!!」
「はあ……そう…はあ…か?なら…はあ……失礼…はあ……はあ…して……」
女性騎士はヘルムを外すと、その下から出てきた美貌を満遍なく撒き散らす。
その顔は、10人通り過ぎたら、7人は振り返るであろう容姿だった。
うへぇあ…。
思わず言葉を失う。お母さんも美人だと思っていたが、それ以上の美人さんが出てきたのだ。僕が選ぶ、女性美しさランキングが6年ぶりに変動した。いままで1位だったお母さんが2位に落ちて、1位にこの女性騎士が入った。3位?エレイナ姉さんだよ、ちくしょう。あの人無駄に頭がよかったり、可愛かったりするからな。
「失礼した、それとまだ名乗っていなかったな。わたしの名はリオンという。フィアドール伯爵家の騎士をしている者だ」
「あ、これはどうもどうも、僕の名前はセレンです。えっとファノンお母さんとカストル父さんの子供をしています」
「そうか……。ところで、ファノン殿がどこにいるか聞きたいのだが、ファノン殿の子供なら今どこにいるか知っておられるか?」
「お母さんなら、そこで昼寝をしていますよ」
机の上で寝ているお母さんをリオンさんが見える様に、出来るだけドアを開ける。
「ああ、昼寝をしていたのか。出来れば起こして連れていきたいのだが、そこら辺は問題ないのだろうか?」
「多分問題ないと思いますよ、というか僕が起こしましょうか?」
「むっ、それならば頼んでもよろしいか?」
「任せてください」
わざわざ、お母さんを起こすのをリオンさんにやらせる訳にはいかない。寝ているお母さんの横に行くと、体を揺さぶりながら起こす。
先ほどランキング1位からは落ちてしまったが、改めて見るとお母さんはやっぱり美人だ。
いや、マザコンじゃなくて。
大人の女性という美しさの中に子供らしい可愛さも感じさせる寝顔。
あれ?やっぱりお母さんが1位じゃね?
いやでもリオンさんが……。
うーん、悩む。でもとりあえずこの話は一旦置いておこう。
それにしても起きないな
お母さんはよく眠っていて、起きる気配が感じられない。こうなったら怒られる覚悟で背中に水を入れるしか。……いや、本気で怒られるから辞めよう。
じゃあどうする?どうやって起こす?
僕には思いつかない。
うん、諦めてリオンさんに起こしてもらおう。
「すみません、力不足で……」
「いや、構わない。元々はこちらが突然訪ねたのだ。寝ていたところを来てしまったのも、わたしの運が無かっただけだ。すまない、ファノン殿。少し起きてほしいのだが」
「聞いたことのない声……だれ?」
マジか……1発で起きたよ。しかも肩に手を起き、話しかけるだけで。
でもあれだね。多分、知らない人が起こしたから1発で起きたのであって、僕も知らない人だったら1発で起きてたんだよ。そうに違いない。
いやだって悔しいじゃないか!知らない人にお母さんが1発で起こされたんだぞ。僕がやっても起きなかったのに。
「……そう、セレン少し悪いけど出かけてくるわ」
いつの間にか、リオンさんとお母さんは話を終えていたらしく、お留守番よろしくねと言いすぐに家を出ていってしまった。
お留守番を頼まれたけど、追わない理由なんてない。
家を出ると近くにいた警備隊の人に、家の事を頼みお母さんを追いかける。
恐らく村長の家に行ったのだろう。村長の家に着くと、バレないように庭の方にある窓に向かう。箱を置き足場を用意すると、そこから中を覗き見る。周りから見たら完全に不審者だろうけど、気にしない。
中には村の主要メンバーが集まっていた。そして、エルフの男性とリオンさんともう1人の騎士もいた。
窓からでは、話している場所は遠くて何を話しているかは聞こえない。だが村人の顔を見ると、殆どの人が顔を赤くして怒っているのが分かる。特にスコット夫妻と村長。そして、それを静めようとする騎士2人とお母さん。
うーん、なんだろうな。村の人が怒ることでしょ?
「何してんだ?セレン」
「うわっぁぁあ!!」
後ろから突然聞こえた声に驚いて足を滑らせて落ちてしまう。
「痛ぅ…」
「大丈夫かよ!」
「大丈夫、それよりどうしてルーイ兄さんがここに?」
「いやどうしてと言われても、ここ俺んちだからだよ」
声の主、ルーイ兄さんは心配半分、呆れ半分でこっちを見ていた。
あぁそうか、村長の家にはルーイ兄さんも住んでんじゃん。そしてこんな簡単な事もすぐに出ないほど慌てていたのか。やっぱり自分でも、悪いことをしているというのは理解しているんだな。
「それで、何をしているかだったよね。村長たちが中で何を話しているか気になったの。ルーイ兄さんは何か知らない?」
「ああ、そのことか。それなら俺は何も知らないぞ、じいちゃんに外に出てなさいと言われたからな」
「使えない…」
「なんだと!」
「あっ!いや、ごめん!!」
「許す!」
思わず口に出てしまった。反省、反省。
それにしてもルーイ兄さんも知らないって事は相当に重要な事だよな。
だとしたら、あっ!
嫌な汗が頬を伝うのが分かる。そして先日の寝る前のことを思い出す。
まさかとは思うけど、作物を納める量が足りないとか?もしくは足りたとしていても凄い多くて生活出来ないとか言ってるんじゃ。
いやそんなまさかね、足りないなんてことはないでしょ。
確かに今年はエレイナ姉さんが主な理由で、収穫量が減ったということはあったけど……。
あれ?そうすると、エレイナ姉さんやばいんじゃね?
それに、さっきスコット夫妻が他の人よりも怒っていた理由も収穫量が減った原因の娘を出せとかいうのだったら。
ああやばい、これはやばい。
もし違うのならそれでいい。だけどもし、エレイナ姉さんを出すとしたのなら、その時は体目的でしかないだろう。
エレイナ姉さんの見た目はこの村の中では上位に位置する。僕のランキング元2位で現在3位ということから、分かることだろう。
するとあれか?エルフの男性はエレイナ姉さんを娼婦として街で働かせる事で手を打とうとしているのか?
くっそ!ふざけるなよ!!
まだそうと決まったわけじゃないが、怒りがこみ上げてくる。
そして、今この瞬間にもエレイナ姉さんの身に危険が迫っているということに気づく。
「ルーイ兄さん!急いで、エレイナ姉さんの所に行こう!!」
「は?っておい!」
ルーイ兄さんの腕を引っ張ると、急いでエレイナ姉さんを探す。
探している最中にルーイ兄さんにもこの事について話しておく
「はぁ!?エレイナ姉さんを!?ふざけるな!!」
ルーイ兄さんもやはり怒りを露わにする。
「だから、エレイナ姉さんを連れて逃げよう!そしたら時間も稼げるし諦めてくれるかも」
「ああ、急ごう!!」
村の中を駆け回るがエレイナ姉さんは見当たらない。
もしやと思いエレイナ姉さんの家に向かうと、そこにはエレイナ姉さんが寛いでいた。
「エレイナ姉さん逃げるよ!!」
「えっ、ちょっと!セレンにルーイどうしたのよ!!」
「説明はあとだ!今すぐ逃げないとあいつらが来る!!」
エレイナ姉さんを無理やり連れて逃げようとドアを開ける。
しかし、既に目の前にはスコット夫妻と村長、エルフの男性と騎士2人が立っていた。
「っ!来るなら来い、エレイナ姉さんは絶対に渡さない!!」
「そうだ!俺達が相手だクソ共!!」
「え?」
エルフの男性と騎士2人が何が起きているか顔をしている。
その隙に拳を構えると、エルフの男性めがけて殴りかかる。
「うわっ!ちょっとちょっと!」
拳はエルフの男性のお腹に直撃し、エルフの男性は呻く。
よし当たった!
横を見ると、ルーイ兄さんは既に騎士に捕まっていた。
「ルーイ兄さん今助ける!!」
ルーイ兄さんを助けようとして、ルーイ兄さんを捕らえている騎士に拳の狙いを定めるが、リオンさんに捕らえられてしまう。
「離せ!!」
「離せよ!!」
リオンさんから抜け出そうともがくが、力が強く抜け出せない。
「待ってくれ!セレン。何か誤解があるかもしれない、話を聞いてくれ!!」
「聞くもんか!エレイナ姉さん今すぐ逃げて!こいつら、エレイナ姉さんを売るつもりだよ!!」
「えっ?それってどうゆうこと?」
エレイナ姉さんはまだ混乱しているのかすぐに逃げない。
くそっ!こんな時にスコットおじさんとケールおばさんは何してるんだ!?娘の危機なんだぞ!!
スコットおじさんとケールおばさんを見ると、呆然としている。
「売るって何のことだ?ひとまず話を聞いてくれ!!」
リオンさんは相変わらず僕に落ち着いて話を聞けという。
何が落ち着けだ。お前らが、エレイナ姉さんを売ろうとしているから落ち着けないんだよ!!
「あー、えっと君たち何か本当に誤解してないかい?」
エルフの男性はどうやらもう復帰したようで、優しく語りかけてくる。
「何が誤解だ!エレイナ姉さんを娼婦として働かせようとしているのは分かってんだぞ!!」
ルーイ兄さんはせめてものとガンを飛ばしながらお前達がこれからする事は分かってんだと言う。そして、後ろでは村長含めて全員が復活した。
「ちょっと待ってくれ。エレイナを売る何のことだ?」
「そうよ、娼婦として働かせるってどうゆう意味?」
スコットおじさんとケールおばさんが僕達が必死に抵抗している理由がわからないと言った様子だった。それどころかケールおばさんは怒った様子でこちらを見てきている。
「お前達何か勘違いをしておらぬか?」
「「勘違い?」」
村長にも勘違いしていないか?と言われてようやく落ち着きはじめる僕達。そしてポツリポツリと、それはもう、犯罪者が今までと犯してきた罪を告白するかのように必死に抵抗した理由を話す。
「あのですね、先に言っときますと、ボク達はエレイナさんを娼婦として働かせようとは思っていませんよ」
そしてこの瞬間、僕は勝手な思い違いをしていた事に気づく。
話を聞くと、村長たちが怒っていた理由は収穫量に対して納める量が多いという事で間違ってはいなかった。
だけど、エレイナ姉さんについては若干違った。元々は、エレイナ姉さんが魔法で野菜を駄目にしていなければ、今回もなんとかなったらしい。そこでどうするかと話に出たのが、エレイナ姉さんを一年間街にある領主の屋敷で働かせるという事だ。そして屋敷で働いた分の給料から、足りない分を金額に変えて回収すると。そして余っている分は普通に給料として、エレイナ姉さんに払われる。
これはこちらが凄い得する条件だ。そして領主側が損をしている。
そんな条件で問題とかないの?と聞くと「まあボクも元々は村生まれだからね。理由はそれだけさ」と言われた。
顔が赤くなっていくのが分かる。完全なる思い違いだ。
恥ずかしい。勘違いしただけならともかく、それをそうだと決めつけ抵抗する。そんな事をしたのが僕だ。
「ああ、でもこれは不味いかな?」
「えっ?」
「いやね、君はボクを殴ったでしょ?ボクはこれでも一応領主様から依頼されてここに来た。つまり、それなりの身分を保証されてきたんだ。そんな人を勘違いとはいえ殴ってしまったら、どうなるかは分かるよね?」
エルフの男性がこちら見て、僕の赤くなっていた顔が今度は青くなる。
確かに僕は勘違いをして殴ってしまった。
それに勘違いをしたとはいえ、それはこちらが勝手に勘違いをしていただけだ。
「もちろん、今回のことは無かったことにしてあげてもいい。でもね、既にエレイナさんのことで充分手を打ってあげているんだ。こればかりは流石に、ね」
「あ…の……」
声が出ない。
流石に今回は僕が悪すぎる。それを分かっているのか、敢えて村長たちは何も言わない。
勝手に勘違いをして、それを事実と決めつけて殴りかかる。もう憶測ではモノを語らないし、語りたくもない。今更ながら、自分のひどい思い違いに猛省する。
「まあ、特別に許してあげないこともない」
「本当ですか!?」
「ああ、もし許されたいのなら君も屋敷で働けばいい。流石にエレイナさんとは違い、最低賃金で使用人見習いとしてだが…。それでもいいなら雇ってもらえるように交渉しよう。そして働く事が出来たのなら、払われる給料の2割はボクに渡すこと。生活は絶対に苦しいよ。これでもいいならボクを殴った事はなかったことにしてあげよう」
「それでお願いします……」
なにも言うことなどない。ここで変にごねると僕だけじゃなく、お母さんや父さんにも被害が及ぶかもしれない。僕だけで済むならそれでいい。
「そうか、ならそれで決まりだね。そして、もう1人の君だけど……」
「なんだよ!俺はセレンが悪いことをしたとは思ってないからな!!」
「うん、君はいいよ。殴ってはないし許してあげる」
「はあ!?」
「ルーイ、お主はわしが説教してやるからな」
「えっ、ちょ!じいちゃん待って!!」
翌日、馬車の室内にはエレイナ姉さんとリオンさん、あとエルフの男性スレイドさんともう1人の騎士の人、ガドルフさんが乗っていた。
僕?僕は馬車の中ではなく外側の御者席の端に座っている。
乗る時に御者の人から睨まれた。本当にすみません。
昨日の夜、お母さんと父さんに話をすると怒られた。そして泣かせてしまった。これから先、少なくとも一年間は会うことが出来ない。6歳という子供の成長が見られる一番の時に会えなくなってしまったのは申し訳なく思う。その日は、家族全員一緒のベットで寝た。
最後に村を振り返ると、見送りに来ていた皆が手を振っていた。僕も手を振り返すと前を向く。
「では行きますか」
スレイドさんの掛け声と共に馬車は領主が住む街へと向けて走り出すのだった。
今回で1章が終わりました。
ここ最近で、一番頑張りました。
だから次回の投稿は期間が空いてもいいですよね?えっ、ダメですか…。
さて、2章に関してですが、しばらく書き溜めに挑戦しようと思います。それで全然溜まらなそうだったら、1章と同じように書いたら投稿という形でやっていこうと思います。
それでは、また2章でお会いしましょう




