16話 2人きりの夜
あらすじちゃん「前回のあらすじ!」
前書きちゃん「あらすじー」
あらすじちゃん「馬小屋生活を抜け出すと誓ったセレン。しかし、抜け出すには金銭の問題が!」
前書きちゃん「スレイドに払うお金を1割に減らしてほしいと交渉するが、代わりに頼まれたのは隣街にいるドーラドアにある荷物を届けに行くこと」
あらすじちゃん「隣街に行くことをノーラに報告すると、何故か一緒にお風呂に入ることに!?」
あらすじちゃん&前書きちゃん「さあ続きみて!」
※修正 民間浴場→公衆浴場
トイレから帰ってくると、ノーラ様は裸にタオルをまいている状態で待っていた。
「もしかしてずっと待っていたんですか!?」
「そうね、それよりも早速体を洗いっこしましょう」
シャワーで軽く体を洗い流す。
そして温泉によくある椅子に座ると、シャンプーを手につける。
公衆浴場には安い石鹸はあるものの、シャンプーやトリートメントは置いてない。そのため髪を洗うには安い石鹸を使うか、自分で買ってきたシャンプーを使うしかない。
しかしここは伯爵家のお風呂、シャンプー、トリートメント類はちゃんと置いてある。
手に取ると分かるのだが、これは普通のシャンプーと違い、いい香りがするタイプの商品だ。高かっただろうに……。
それを使いノーラ様の髪を洗う。
普段自分の髪を洗う時は大雑把に洗っているが、今回はノーラ様の髪の毛を洗うので、ゆっくり丁寧に洗っていく。
「どうですかー。もし痒いところが会ったら教えてください」
「全然痒くないわ。それどころか気持ちいいわねー」
頭皮マッサージもしながら丁寧に洗うと、洗い流し今度はトリートメントをつける。これは、さっき使ったシャンプーと同じ商会が作った製品で同じ香りがする。髪の毛の1本1本に浸透するように、指で髪の毛を梳きながら洗う。
髪の毛が洗い終わると、石鹸をタオルに泡立てる。
背中を傷つけないように、優しく洗うと今度は腕から足へと掛けて丁寧に洗う。前は流石に洗うのはノーラ様自身に任せたが、それでもできる限り優しく洗えたはずだ。
さてと。じゃあ自分の体でも洗おうかな……。
僕の場合はシャンプー等は使わずに石鹸だけで済ませる。流石に人の家の高い物を使う気には慣れないからだ。まあ石鹸も高いんだけど。
「セレン、何を洗おうとしているの?」
「えっ?自分の体ですけど」
「わたくしが何て言っていたか聞いてなかったの?」
「洗ってですよね?」
「洗いっこよ。お互いがお互いの体を洗うということよ」
「しかし、ノーラ様に体を洗わせたとなれば使用人として…」
「その時はわたくしが洗いたかったからって言えばいいのよ。ほら、座って座って」
ポンポンと、先程まで自分が座っていた椅子を叩く。
僕はそこに座るとノーラ様はシャンプーを手に取り僕の髪の毛を洗い出す。
「きもちいぃ……」
ノーラ様の手は柔らかく、これぞ女の子の手という感じだ。
それでいて頭のマッサージが上手い。その気持ちよさで体が蕩けるような感覚に落ち入る。周りの音が徐々に遠くなり、意識が落ちるような感覚になる。
ノーラ様が何か言っているような気がするが、それを最後まで聞くとが出来ずに……。
はっ!ここはどこ?わたしは誰?
記憶喪失で有名なセリフを言ってみる。
いつの間にかというか、お風呂場で意識を失ったらしく、目が覚めると見覚えのある部屋のベットで横になっていた。
起き上がると、どこか違和感を持つ。違和感の正体を探るべく体全体を見渡すと違和感の正体に気付く。
なんといつの間にか、青白いネグリジェを着ていたのだ。
まあ、予想はしていたけど。
予想はしていた。服を取りに行けなかった時点で、小さい頃のノーラ様のパジャマが用意されることに。
でも、ここまで女の子っぽいのは予想していなかった。
転生してから6年以上が経ち、女の子の服を着ることも少なくはなかった。
だけど最近は庭師ということもあり、作業着をメインとして着ていた。そのためスカート状の服には慣れていなかった。
動きづらい……。
ベットから降りて、部屋の中を動いてみると、思いっきり足を動かせないことにイライラする。
部屋の中を彷徨いてると、鏡を見つけて前に立つ。
鏡に映る自分の姿はまるで人形だった。
お母さんから引き継いだ、銀髪の髪に翡翠色の目。
そしてあまり動かない表情が合わさって、その姿は人形にしか見えなかった。
ガチャ
「起きた?」
鏡で自分の姿を見ていると、部屋のドアが開いてノーラ様が入ってくる。ノーラ様は赤黒のネグリジェを着ていて、悪の幹部にも見えなくもない。
「もう少ししてから来た方がよかったかしら?」
「あっ……えと!これは!」
ノーラ様は僕が鏡で自分の姿を見ているのを見ると、キョトンとしたあと、徐々に笑みが濃くなった。
手を振り必死に言い訳を考えるがとっさには出てこない。
僕が何も言えずに黙っていると、ノーラ様は
「前々から思ってたんだけど、アルマは可愛いからもっとそうゆう格好した方が良いと思うわよ」
と僕を褒める。
恥ずかしさと容姿を褒められた嬉しさで顔が赤くなる。
そんな僕を見てノーラ様は、でも!と付け加える。
「でもね、街には可愛い子を狙った人攫いやよからぬ事を考える人が沢山いるの。もちろんこの街にだって居るかもしれないけど、普段住んでいる街と違い、隣街では知らない事が沢山あるからさらに危険だわ。だから隣街に着いたら常に人の動きには注意するのよ!」
ノーラ様は僕のことを心配してくれていたらしい。確かに、僕は自分の容姿について疎い。自分でも可愛いと思うことはあるが、人攫いが攫うほど優れているとは思ってはいない。
ノーラ様は僕のそういう所を知っているからこそ、貴族が着ているような服を着せて、僕は悪い人に狙われるような存在だよと教えてくれたんだろう。
油断して、人攫いに捕まらないようにするために。
「さて、お腹は空いているかしら?」
「空いていませんが……」
「それじゃあこっちにおいで」
ノーラ様はベットに座ると隣を叩き、こっちにおいでと呼ぶ。
普段なら、使用人ですからと断るだろうが、他にも何か教えるために呼んでいるのかもしれない。そう思ったので、ノーラ様の隣に座る。
「今日はやけに素直に来るのね。普段なら使用人ですからとか言うのに」
「そうですか?多分気のせいですよ」
「そうかしら……まあそうね、それじゃあ一緒に寝るわよ」
「はい?」
おっと、思わず声に出てしまった。
おかしいな、他にも何かを教えてくれるから隣に呼んだんじゃないのかな?
そんなことを考えている隙に、ノーラ様が左手を握ってベットに横になる。これじゃあ、逃げられない。
「えっと、本当に一緒に寝ないとダメですか?」
「そうね、寝ないと隣街行きの乗車券を破くわよ」
「はい寝かせてもらいます!」
自分で乗車券を買うほどのお金が無いから破かれると困る。
急いでベットの中に入ると、ノーラ様と向かい合う形で横になる。
「ねえ、セレン起きてる?」
「起きてますよ」
「あなたが何でスレイドからの頼み事を受けたか、わたくしには分からないわ。でも、困った時は姉として助けてあげるから頼りなさい。……おやすみ、セレン」
「はい、おやすみなさい」
いつも思う、姉として振る舞いたがるノーラ様。
彼女はどうしてこんなにも姉として振る舞いたがるのか、僕は知らない。そしてその理由もノーラ様が、僕がスレイドさんからの頼み事を受けた理由を聞かないように、僕も聞いていない。
主の娘とその家に仕える者、その関係では聞けないこともたくさんある。
もしも友達という関係だったら、楽しいことや辛いこと、色んなことを話せてまた別の意味で楽しかったのかな……。
暗い部屋の中、そんなことを考えながら眠りについた。
☆☆☆
side ノーラ
セレンという子は、ロウソクの灯火が常に消えかかっている存在に見える。あの子と初めて会ったのは4ヶ月ぐらい前かしら。
初めて顔を合わせた時は緊張している可愛い子だなと思った。
緊張に関しては時間が経てば無くなるだろうと思っていた。実際仕事には慣れ、緊張した雰囲気も無くなった。しかし、それと同時に時間が経つにつれ、今度は顔色が悪くなっていった。最初は風邪かなと思ったが、それは違った。
ある日、庭で昼寝をしているのを見つけてソファまで運ぼうとしたのだが、まるで人形のように軽かった。
ソファに寝かしたあと服を捲ると、痩せていた。
急いで、彼女が痩せている理由をお父様に聞きにいった。しかし、お父様は痩せていた理由を知らなかった。
それならばと、何故ここに来たのかだけでも聞いた。すると、1人の男の名前が出てきた。
スレイド=ルージュストーン。
ルージュストーン元子爵家の長男にして魔法の天才。
どうやらセレンはまだ村に居た頃、年貢調査に来た彼を勘違いをして殴ってしまったらしい。
わたくしはスレイドという男が嫌いだ。
頭はいいし、研究所の副社長を任されるほど人格も優れている。父様も彼とは仲良しだ。
しかし、わたくしは嫌いだ。あの男は何かを隠している、そんな気がしてならない。
何を隠しているかは分からないが、少なくともいいものではないのは確かだ。
わたくしは、セレンの痩せている理由もスレイドが関係していると思い、直接を話を聞きに行った。
そして驚きの事実が分かった。彼を殴った謝罪として、セレンは毎月2万シアも彼に渡している。セレンの給料は毎月10万シアだから、2万シアも渡すと生活が苦しいどころではない。生きていくのに精一杯の状況だ。痩せているにも納得できる。
わたくしはすぐにスレイドに彼女から2万シアを受け取るのを拒否するように言った。しかし彼は
「お断りします。子供だからといって何でも許されるわけではありません。そして今回は勝手に勘違いした彼女の責任だ。毎月2万シア、合計20万シアで貴族を殴ったことを不問にしてあげているのだからむしろ感謝してほしいものですがね」
と言い、受け取りを拒否することについて頷かなかった。
それにスレイドは貴族ではなく元貴族だ。それについても言いたかったが、きっとお父様から依頼されたから立場的には貴族に近い扱いになる。というのだろう。
ソファが置いてある居間に戻ると既にセレンは起きていた。
セレンはこちらに気づくと、頭を下げて謝罪する。
「庭で寝ていたところをソファまで運んでいただいたと聞きました。ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんノーラ様」
見ていられなかった。
わたくしは最初、自分よりも小さい子が屋敷で働くから、自分の方が年上なんだぞと、姉らしく振舞おうと思っていた。
だけどわたくしにはお姉様が居ないので、どんな風にすればいいのか分からなかった。それで取り敢えず淑女らしく振る舞うことにした。
だけどそれはもう辞める。本当の意味でこの子の姉となることにした。
それ以来、彼女にはお姉ちゃんと呼ばせようとしたり、ご飯やお風呂に誘ってみたりしている。ほとんどが断られてしまっているが、それでもめげずに頑張っている。
いつか、あの子に姉として認められるように。
でも、お風呂でセレンの髪の毛を洗いはじめたら倒れてしまったのには驚いたわ。
急いで医者を呼んで診てもらった。
ただ、緊張していただけだろうと診断された時は心から安心した。それと同時に反省した。緊張していた。もしかしたら、わたくしと入るのが原因で倒れてしまったのかもしれないのだ。前回も入った時は大丈夫だったが、それもリオンという存在がいたからかもしれない。
主の娘と仕える者、その関係の距離を最近は気にしていなかった。反省しなければいけない。
しかし自分が反省するのも大事だが、セレンにも気づかせないといけない事がある。それは、彼女が可愛いのと痩せている事だ。
もしも隣街に行った時に、人攫いや厄介な人達と関わらないとは限らない。そして、絡まれる危険性が高いことを伝えなくてはならないのだ。
なにせ、隣街に行く理由がスレイドから頼まれた依頼。
絶対に何かが起きるに決まっている。
セレンがスレイドから渡された箱の中には数種類の魔法書が入っていた。それも攻撃魔法の。
何を企んでいるかは知らないが、出来ればセレンがそれに深く関わらないことを祈るばかりだ。
わたくしのお古の青白いネグリジェを着せると、そのまま布団をかける。
このままここで起きるまで待っていたいが、勉強の時間や習い事がある。放り投げてもいいのだが、抜け出すと他のみんなに迷惑をかけてしまう。
そしてセレンはそんなことを望まないはず。
いってくるわねとセレンのおでこにキスをすると部屋を出る。
廊下を歩く途中セレンの事を思い考える。
もし友達という関係だったら、もっと気楽に話せて頼ってもらえたのかしら。でも、わたくしは今の関係も嫌いじゃない。
あの頑張って働く姿を見ると、わたくしも勉強や習い事が頑張ろうという気持ちになるのだ。
セレンが早く元気に起きることを願って、勉強を受けに行く。
早く終わらせて、セレンに会うために。
後書きさん「そういえば、前回からあらすじちゃんと前書きが前回のあらすじを担当することになったのよね?」
桐原優「そうですよ。彼女達も暇してたでしょうし、ついでにいい刺激になればなと思いやらせてあげることにしました」
後書きさん「そう、あの子達はまだ若いし好奇心旺盛だと思うから、怪我をしなければいいけど……」
桐原優「後書きさんって2人にはすごい優しいですよね」
後書きさん「まあ、仮にも妹とその友達だからね。心配にもなるのよ」
桐原優「僕が言うのもなんですが、あの2人はなんやかんや、やる事はやる子ですから大丈夫だと思いますよ。それに守ってばかりだと2人も成長しませんし、今はそっと見守ってあげましょう」
後書きさん「そうね、作者の言うとおりね。作者にそれを言われたのは癪だけど」
桐原優「酷い!」




