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ここは異世界人の多い世界です  作者: 千崎セナテ
第一章 科学世界の少女
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9/10

9話 この世界でその少女は

「あっ、目を覚ましましたね」


 目の前にいた女性が私の顔をのぞき込んできた。

 隣にはもう一人女性がいる。


「ひっ、殴らないで……」


 私は身を縮めた。

 私に近づく人は全員私に暴力を振るうために近づいてきたから。


「え?」


 その女性は驚いたような声をあげた。


「殴りませんよ。大丈夫です」

「本当に……?」

「はい。本当です。そんなことより、お腹すいているでしょう。アユサ、持ってきてください」


 奥からもう一人の女性が出てきた。

 その女性は何かを持っていた。

 見たことのない食べ物だった。


「どうぞ。おかゆです。しばらく何も食べていなさそうですから胃に優しいものを」

「……おかゆ?」


 それもまた見たことのない食べ物だった。

 白くて、柔らかそうなものが入っている。


「……これ、食べてもいいの?」

「もちろんです。というか食べてくれないと困ります」


 すくって、口に運ぶ。


「あつっ……」


 やっぱり、前まで食べていた栄養固形物とは違う。


「……でもおいしい」


 でもあの時の事を思い出してしまう。

 あの時私を拾った男性も食べ物をくれたけど、結局……


「……」


 また、あんなことをされるんじゃないか。

 そう思うと、手が止まった。


「……どうしましたか?」

「この後、私をまた一人にするの?」

「えっ?」

「また、叩いたり、蹴ったりするの?」

「しませんよ」

「……本当に?」

「はい」


 私はもう一度、おかゆを口に運んだ。

 温かい。

 今度は、少しだけ安心して食べられた。



               ◇ ◇ ◇



 無事に目覚め、アユサが作ったおかゆも食べてくれて安心しました。

 これからどうしましょうか……


「私は瞳奈、あなたの名前はなんていうの?」

「……名前?」

「うん。あなたを呼ぶときの名前」


 メナが少女に名前を聞いた。

 けれど、少女は返答に困っている。

 もしかして、名前がない?


「名前は偉い人しか持ってないってお母さんが言ってたよ」

「えっ、そうなの!?」


 テクロノアスは思っていたよりもだいぶやばい世界なのかもしれません。

 それでいて、この世界に来てからも差別されることになるなんて……


「番号ならあるよ」

「番号?」

「うん。私の番号はRE_386174495だよ」

「……RE_386174495?」

「そうだよ」


 それがテクロノアスでの名前みたいなものですか……。

 さすがに、そのまま呼ぶのは言いにくいですね。

 というかメナはよく一回で覚えられましたね。


「じゃあレミハって呼んでもいい?」

「レミハ?」

「RE_386174495から取ってみたの」


……私にはRE_386174495からどう取ったらレミハになるのかがわかりませんが、おそらく【万語翻訳(イントプレテ)】によるずれが発生しているのでしょうね。


「よくわからないけど、いいよ」

「よろしくねレミハ!」

「うん。メナお姉ちゃん」

「グハッ」


 なぜかメナは倒れてしまいました。


「レミハ、少し聞いてもいいですか?」

「えっと……」

「私の名前はリシアです。あなたは、テクロノアスという言葉を知っていますか?」

「知らない」

「そうですか……」


 やはり、テクロノアスでは異世界という概念がないようですね。

 だからテクロノアスというのはこの世界で、そう呼ばれるようになったという言葉なのでしょう。


「ここはあなたが元居たところとは別の世界だということはわかりますか?」

「別の世界?」

「はい。あなたがいた場所と、ここは違う世界なんです」

「……よくわからない」

「そうですよね」

「じゃあ違う宇宙って言ったらわかるかな?」


 いつの間にか立ちあがったメナがそう聞いた。

 宇宙?ってなんでしょうか。


「なんとなく、わかるかも」


 宇宙という言葉がどういうものを指すのかは分かりませんが、地球とテクロノアスにはある言葉のようですね。

 【万語翻訳(イントプレテ)】でも私に通じないため、ミクシアにはない言葉ということですが、世界とある程度似た意味の言葉なのでしょう。


「テクロノアスっていうのは何なの?」

「テクロノアスというのはあなたが元居た世界……ではなく宇宙の名前です」

「……宇宙の名前?」

「はい。こちら側では、あなたのいた宇宙をそう呼んでいます」

「そうなんだ……じゃあこの宇宙はなんていう名前なの?」

「ここはミクシアという名前の宇宙です」

「私は地球って言う宇宙からミクシアに……いや地球はもとはといえば星の名前じゃん」

「……みんなテクロノアスだからって私のことを叩いたり、蹴ったりしてきたのは何でなの?」

「それはですね……」


 私はレミハにミクシアで300年前に起きた事件のこと。

 あと、ついでにここでは宇宙を世界と呼ぶことや、ここが異世界人の多い世界であることなどを説明した。


「じゃあ私が悪いわけじゃないんだね……」


 レミハは不安そうにこちらを見る


「はい。そうです。レミハが悪いわけではありません。でもこの町に居たら、またあのような扱いを受けるかもしれません。この屋敷に閉じこもっておくという手もありますが……」


 屋敷に閉じこもっていれば、少なくとも今までのような目に遭うことはないでしょう。

 ですが、それでは解決したことにはならないでしょう。

 レミハはまだこの世界のこともほとんど知りません。

 まあ、それはメナも同じですね。


「じゃあ、どうするの?」

「ユートリア魔王国という国では完全に差別が禁止されています。そこに行くのが一番あなたのためになるかと思います」

「……そこなら、私を叩かない?」

「はい。少なくとも、テクロノアス出身だからという理由で暴力を振るうことは許されていません」


 その言葉を聞いて、レミハの表情が少しだけ緩んだ。


「じゃあ、そこに行ってみたい」

「わかりました」


 レミハは小さく頷いた。

 すると、今度はメナのほうを見上げる。


「メナお姉ちゃんとリシアお姉ちゃんも一緒?」

「……私たちはレミハをそこに送り届けることしかできません。それでもいいのなら」

「えっ!そのユートリア魔王国に引っ越すことはできないの?」

「……とある事情があって、引っ越すことはできないんです」

「そっかー、でもそこならレミハも差別されることなく暮らせるんだよね?」

「はい。間違いありません。レミハ、どうしますか?」


 しばらく考えたあと、レミハは顔を上げた。


「……じゃあ、行きたい。この世界のことも色々知りたいから」

「では明日にでも、私たち三人で――」

「リシア様、私もついていってもよろしいでしょうか?」


 突然アユサが声をあげた。


「アユサもですか?」

「はい。ユートリア魔王国の料理というものを一度見てみたいのです」


 そういえばアユサはこの世界に来てから、様々な世界の料理を学んでいました。

 ユートリア魔王国の料理にも興味があるのでしょう。


「わかりました。では四人で行きましょうか」




               ◇ ◇ ◇



おまけ①:魔法の練習


 スライムの依頼を終えた後に約束したとおりに、魔法の練習をすることになりました。

 レミハにも魔法を説明すると興味を持った様子だったのでレミハにも魔法を教えます。


「そもそも魔法というのは……」


 6話にしたものと同じような説明を再びする。

 ここはおまけなのでちょっとしたメタ発言をしても問題ないのです。


「イメージで魔力を変換する?」

「まずは魔力を感じ取るところから始めましょう。今から私が魔力を放出するのでそれを感じ取ってみてください」


 深呼吸をして身体の魔力を操作する。


「すぅぅぅぅぅ……」


 身体の魔力を外に出すことをイメージする。


「はぁぁぁぁぁぁ!!!」


「……」

「……」

「……感じ取れましたか?」


 おかしいですね。

 反応が薄い。


「リシアお姉ちゃん、何してたの?」

「でかい声をあげてただけだと思ったよ」

「魔力……出してたんですよ」


 二人ともまだ何も感じ取れないようでした。

 まあ、放出した魔力が少なすぎたのでしょう。

 今度はもう少し量を多くしましょう。

 あと、声を出すのもやめましょう。


「……これでどうですか?」

「おお!なんか、あるような気がする」

「私も、ちょっとだけ」


 どうやら二人とも感じ取れたようです。


「ではまだ体内に保有する魔力は少ないでしょうから、まずは空間中にある魔力で魔法を発動させてみましょう。感じ取った魔力を炎に変換するイメージをしてみてください」


 試しに手を出し、そこに炎を出してみる。



「炎……炎……」


 しばらくすると、メナの手のひらに小さな火が灯った。


「できた!……あっ、消えちゃった」

「初めてにしては上出来です」


 さてレミハは……


「……」


 手がめちゃくちゃ輝いていた。

 眩しすぎて顔が見えません。


「えっと、それは炎ではなくて光なのでは……」

「炎見たことなかったから、光と熱を発生させるってことしか、知らなかった」


 テクロノアスでは科学が発達しすぎて、炎そのものを使う機会がほとんどないということでしょうか。


「炎は今私が手に出しているんですけど……」

「それが炎?」

「はい」


 すると、さっきまで輝いていた手のひらに火が灯った。

 その炎は明らかにメナが生み出したものよりも大きかった。


「できた」

「と、年下に負けた……」


 レミハの炎を見たメナは倒れてしまいましたが。

 最初から成功している時点でだいぶ才能はあると思います。

科学が発展した世界では人口が増えすぎて番号で管理されるようになります。知らんけど


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