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3話 私が案内役ですか!?

「よく来た。私はこのリーベル支部の支部長、ローガンだ。まずは座ってくれ」


 支部長に言われたとおりに椅子に座ると、受付嬢はご丁寧に紅茶を入れてくれた。

 しばらくメナさんとローガンさんの話になるでしょうし、ゆっくり紅茶を飲みましょう。


「そちらが今回の転移者だな。名前と元いた世界と出身地を教えてくれ」

「名前は白石瞳奈です。出身は地球の日本という国です!」


 するとローガンは本棚から一冊の本を取り出した。

 表紙には地球と書かれているのが見える。

 異世界人から聞いた話をもとにその世界にある国や文化、発展具合などの書かれた本の地球バージョンだ。


「日本……地球の中でも先進国、特に娯楽が発達していると、姓が最初か……」


 日本といえばどこかで聞いたことがありましたね……どこでしたっけ。

 ローガンは本を閉じ、机の上に置き、今度は机の引き出しから水晶を取り出した。


「では次にこの水晶に手を置いてくれ」

「水晶…?」

「魂の色から生まれた世界を特定できる魔道具だ。転移者と偽って支援を受けようとする輩もいるからな。まあ、リシアに限ってそのようなことはないと思うが」

「……割れたりしませんよね?」

「は? なんで割れるんだ?」

「水晶といえば魔力が多すぎる人が触ると割れるものじゃないんですか?」

「……初めて聞いたな」

「え?」

「いや、普通は割れない。そもそもこの水晶は魔力を測るものではなく、魂の情報を読み取るものだからな。というか転生したてのお前の魔力はそこら辺の子供以下だぞ」

「そっ、そうですか……」

「そんなことは置いといてさっさと水晶に触れてくれ」

「……はい」


 メナさんが水晶に手をかざすと、水晶に地球、と文字が浮かびだした。

 これでメナさんの魂が地球で生まれたことが証明されたというわけです。

 水晶が割れる云々はよくわかりませんでしたが。


「確認できた。間違いなく地球からの転移者だ」

「ほ、本当に出るんですね……」

「これで正式に転移者として登録できる」

「登録…?」

「転移者は国やギルドから支援を受けることになってる。案内役制度がその最たるものだな。案内役制度ってのは………」


 ローガンさんの説明を聞く。

 転移者は転生者と違い、知識がない状態でこの世界に放り込まれる。

 そのためにできたのが案内役制度。

 転移者一人につき一人の現世界人が案内役となり、生活や常識、この世界の知識などを教えながら、新しい暮らしを支援するというもの。

 まあ、私は当然知っていましたが。


「それで、案内役はリシアが適任だと思うんだが、どうだ」

「ぶふっ!?」


 思わず飲んでいた紅茶を吹き出してしまった。


「リ、リシアさん!?」

「げほっ、ごほっ……な、なんで私なんですか!?」

「そりゃあ、だってお前に懐いてるじゃねぇか」

「め、メナさんはそれでいいんですか?」


 メナさんの方を見ると、首を縦に振っていて、これが肯定を意味していることは明らかですね。


「決まりだな」

「えぇ、でも私はソロでのんびり冒険者を……」

「そういや、お前、今日もオーガ三体を一人で倒したんだってな」

「ぎくっ!」

「Bランクとはいえ、B⁻ランクの魔物をソロで三体討伐できる冒険者はそういない。今からでもAランクに昇格させてやってもいいんだぞ!」

「昇格だけは勘弁してください!メナさんの案内役、喜んでやりますから!」


 私はソロでのんびり冒険者をやりたいのです。

 Aランクになると面倒な依頼も増えますし、指定依頼も入るようになります。

 そして何より……………………。

 ともかく、Aランクになるよりは案内役になる方がましですね。


「転移者には全員E⁻ランクのギルドカードを発行している。ほい、これだ」


 ローガンさんがE⁻と書かれたギルドカードをメナさんに渡す。

 そのカードには魔法によって名前と顔も描かれている。


「これを持ってるからと言って冒険者として活動する義務はないが、せっかくだ。ギルドの説明だけでも聞いていくか?」

「はい!お願いします!」


 メナさんは冒険者になると宣言していましたからね。


「冒険者はギルドで依頼を受けて、それを解決するというのが主な活動だ。ランクは下からE、D、C、B、A、S。それぞれに⁺と⁻があるから全部で十八段階だ。ランクによって受けられる依頼も変わる」

「そういえば冒険者になるための試験とかってないんですか?」

「E⁻ランクはなんの訓練もしていない一般人以下の実力だから試験は不要だ。試験が必要になるのはD⁻ランクからだな。強いて言えば、本来なら発行手数料として銀貨五枚が必要だが、転移者は無料だということぐらいか。他に聞きたいことはあるか?」

「えっと……いっぱいありすぎて、何から聞けばいいかわからないです……」

「それもそうか」


 ローガンさんは苦笑してこちらを見た。


「細かいことは案内役に聞けばいい。リシア、あとは任せたぞ」

「……はい。できる限り頑張ります」


……ソロでのんびり冒険者を続けるつもりだったんですけどね。



               ◇ ◇ ◇



 ローガンさんとの話を終え、私たちはギルドを出た。

 メナさんはあの後ローガンさんに地球について書かれた本をもらっていました。

 メナさんによると、銅貨一枚は彼女の世界の通貨でいう十円ほどの価値らしいです。

 銅貨百枚で銀貨一枚なので、今回のオーガ×3の討伐報酬は三万円相当ということになります。

 すると突然、メナさんが口を開いた。


「リシアさんってかっこいいですね!」


 何を言い出すのかと思えば「かっこいい」ですか。

 そういえばガルムさん達にもかっこいいと言っていましたっけ。


「どういうことですか?」

「ほら、本当はAランクの実力があるのにBランクに固執してるってとこですよ!」

「地球の創作物のことはよくわかりませんが、この世界では珍しいことではありませんよ?」

「えっ、そうなの……」

「はい。冒険者には強さより自由を優先する人もいますから」


 私と同じようにのんびり冒険者をしたい者やあまり目立ちたくない者、冒険者登録はしているけど本業は別にあるという者。

 理由はともあれCランクほどあれば、冒険者という仕事だけで十分に生活していけますからね。


「でも、せっかく強いならもっと上を目指したくならないんですか?」

「私は強くなるために冒険者になったわけではありませんから……」

「なんか……かっこいいですね!!」

「そうですか?ただ自分が好きなように生きているだけですよ」

「そういうところがかっこいいんです!」


 もはやなんでもかっこいいという結論に至る気がします。

 そういえばさっきから道行く人々にじろじろ見られているような……

 まさか……いやそんなわけないですよね。

 そこでふと自分の服を見る。


「……あ」


 依頼でオーガに泥をぶっかけられ、ローガンさんとの会話で紅茶をふき出したので、服が汚れまくっているのでした。

 冷静に考えれば、今の私が注目される理由なんてこれしかありません。


「そんなリシアさんも冒険者らしくてかっこいいですよ!!」

「それってフォローになってますか?」


 そう言いながらも、なぜか少しだけ悪い気はしませんでした。

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