下町クソヤバデスロード (前編)テンション死亡
……。ついにやってきた3日後。
厳重な武装を施された軍警の警備ゲートを、ASAKURA支給の
IDカードで潜り抜け、汚ねえ川を2本も超えて、
私は生まれて初めてマジで来たくもない場所にやってきた。
ここは**ノンチアン地区(旧足立区)**だ。
あらゆる危険と惰性と村的な雰囲気、チャイナパンクまで
ある淀んだ空気が肌にまとわりつく。
なぜか西部劇みたいな砂塵とコロコロまで風に乗って流れていて、
地面はところどころ乾いた土がむき出しになっている。
紫外線強いし日陰もねえ。
肌にサイアクだなここ。
洞窟風の穴ぐらが点在してんのはマジで草。
でかい通りを給水しながらひたすら歩いて
ウェストエリア(旧西新井)の路地を進むと、
朝っぱらからビル伝いに**青い顔の人間?**が
ピョンピョン跳ねていた。
……あいつ、だいたい生きてんのか?
ビルに目をやってると危うく人にぶつかりそうになる。
白い顔に口紅塗りたくって長い変な帽子をかぶったやつ。眉毛が● ●
みたいになってる。
とにかく、こいつらは扇子が好きらしい。
地面の日陰には変なものがいっぱいいて、
顔がキモ可愛いおっさんか赤ん坊かわからないような、
角の生えた正体不明の生き物がだらしなく酒を飲んでいる。
デカい体に豚っぽい顔の奴らもいるな。
道を譲ってくれたりジャガイモくれたり…。
意外と礼儀正しいんだこいつらは。
おばあちゃんのクルマ椅子を押してやってる
豚顔もいてほっこりすんな。
ダウンタウンの連中、特にギークメガネどもは見習えっての。
まあ……肌の色もいろいろだし、意外と楽しいかも……?
一番謎いのは、デカい道(旧環七)の上に浮かぶ黒い巨大スフィアだ。
底が見えない深淵みたいで、中心部付近では
時々パルスを発している。都心やダウンタウンからも
見えるくらいデカいらしいが、噂通り意外と害はないようだ。
と…御託が長くなったが、移送元の怪しい一角(というか屋台?)
に到着した。
ランランってやつが受け渡しに来るらしい。
一応、魔術装備一式をバックパックに詰め、
ベルトには専用ケースに入れた調合済みのクスリを
数本すぐに取り出せるようにしてある。
まあちょっと……コホン。とにかくヤバいときの備えは万全だ。
ふざけた屋台は目の前だった。
ランランの屋台の周りではパンダがゴロゴロ転がり、
水牛がだらしなく寝そべってたまにへそ天みたいな
芸を披露し、土佐犬が威嚇しまくっている。
第一、闘鶏がうるさい。こんなところで…
うるあああああああああああああああああああ!!ヒイィッ!
急に裏からぶちかまされてマジでぶっ飛んだ!!!
‥‥でもしょっぱなからもう疲れてきたな……。
ランラン(マジでアホそうなアホ毛をピョンピョン跳ねさせながら):
「アラヨ~! シキちゃん! 来た来た!
遠路はるばるごくろうさん。元気かー?」
……こいつか。めんどくせえな。緑色のサイボーグ女。
サイバネというよりもうガチのサイボーグだ。
緑でふざけた網み網おさげに、でかい目。普通にこええ……。
シキ(やさぐれ顔低い声):
「……ハイ、シキです。受け渡しに来ました。」
ランラン(首を傾げて):
「ん~~~~? 元気ないか~? まあいっかー。
これが例の『超ヤバいガジェット』だよ~!
うちの屋台がちょっと生きていてなー?
ウンコしたらこんなモンが出てきたんだから、
絶対高く売れると思ってASAKURAに持ちかけたんだけどな~?」
ガジェットとやらは黒いスクラップのきたねえ箱の
中央に固定された。なんか青光りするほんとにちっさな結晶だ。
でもゥ~~~とかア~~~~とかほんとに極低ボリュームで
聞こえてきてキモい。。。
シキ(やさぐれ顔):「……お前、ガチでウンコから
ガジェット作ってんのかよ。頭のネジ全部飛んでるだろ。」
ランラン(満面の笑み):「飛んでる飛んでる!
でも儲かるからいいのよ~!
ほら、このチャリ乗ってけ。反物質積んでてなー?
ちゃんと充電しといたから!」
(怪しいチャリの側面には「紅飛龍」と書いてある。読めないけど
いっか……)
聞き終わると同時に、闘鶏の1匹が突然あたしに向かって
突進するように通り過ぎ、そのまま路地に消えていった。




