深夜の帰宅
夜もかなり更けた頃、シキはようやく自分のボロアパート
の部屋のドアを開けた。
買ったばかりの紙袋を床に放り投げると同時に、
玄関の床に ドサッ と崩れ落ちた。
「はぁ……はぁ……もう……死ぬ……」
そこへ、部屋の隅から ぽよん、ぽよん、ぽよん
と小さな跳ねる音が近づいてきた。ぬるたろだった。
虹色のスライムボディを小刻みに弾ませながら、慌てて
シキの元へ駆け寄る。シキは力なく顔を上げ、
半分死んだ目でぬるたろを見つめた。
「ぬるたろ……たぢけてーーーー……グハア……」
あれからラーメン屋の梯子、
ケバブ屋、クレープ屋、とどめのゲーセン……
さらに致命傷のメンコン…
シキは既に満身創痍となっていた。
もはや思い出したくもない。
「チョビと……おっさんと……クソギーク……
こいつらマジでおぼえて……」そこまで言った瞬間、
シキの意識は完全に飛んだ。パタン。
床に突っ伏したシキを見て、ぬるたろは全てを察したように
ぷるるるっ と全身を震わせた。
するとぬるたろの体が淡い緑色の光を帯び始め、
優しいヒーリングスライムモードへと切り替わる。
柔らかな緑の光がシキの全身を包み込み、
疲労とストレスをゆっくりと溶かしていく。
ぬるたろはシキの頰にぴったりと張り付いている、
シキは小さく震えながら言った。
「……ぬるたろ……LOVE♡」
薄暗い部屋に、ただ優しい緑の光だけが
静かに揺れていた。




