麗しきお嬢様プロトコル (後編) 電デジカオスクロニクル
クレハに介抱されながら信号を渡り終えたところで、
彼女がシキの腕をガシッと掴んだ。
「ねえねえ、ちょうどいいじゃん! 私たち今から
電デジスーパー2号館行く途中なんだよね〜。
シキも一緒に来なよ! お嬢様モードのシキ、めっちゃ可愛いし!」
委員長もメガネを光らせてニヤリと笑った。
「フン……データ収集のついでに、新入荷のガジェットもチェックしたい
ところである。シキも同行せよ。」
シキはまだお嬢様モードが若干残ったまま、なぜかノリが
良くなってしまっていた。
「あら……電デジスーパー2号館ですの?
クソギーク様方の聖地と伺っておりますわ。
ふふっ、わたくしも少しばかり興味がございますの。
いやいや帰る…コホン。ご一緒しても……
ぐぬぬぬ…よろしいですわ♡」
外見はぎこちなく微笑み、首を傾げて了承してしまった。
クレハが大喜びでシキの腕をブンブン振り回した。
「やったー! お嬢様シキとショッピングとか超テンション上がる!
新作のコスプレウィッグとか見てみようよ!」
委員長はスニッカーズをもう一本取り出しながら、メガネのブリッジを
押し上げて言った。
「峰打ちの後遺症か協調性が高まっているような……興味深い。」
こうしてシキは、高校時代の凸凹コンビに挟まれながら、
電車移動でギークの聖地・ラデオンストリート(旧秋葉原)に到着。
少し奥地にある『電デジスーパー2号館』へと連行されることになった。
メインストリートには一般の治安警察の他に農紺のAUN軍警の
大型車両が点在している。ここでも相変わらずの示威行為か……。
店内に入るとすぐに、アニメ声の店員が
「いらっしゃいませ〜! 新入荷のVRヘッドセットと対魔メス忍仕様の
遠距離スタンガン(ゆずりは)Mark-Ⅳが本日発売でございます!♡」と叫んでいた。
電デジスーパー2号館は、ネオンとアニソンとギーク(オタク)
とサイバネ外人の熱気が渦巻くカオス空間だった。
つーか委員長のスケボーなんであたしが持ってるし。。。
おまけに何故か軍警も装備をガチャガチャしながら買い物に来ていて……。
軍警のひとりと気まずく目が合ったが、エアスカート摘みで優雅な挨拶をしたところ、
ニヤッとグッドサインを返しやがった。
+優雅ムーブがウケてんのか何故か外人に写真を撮られまくる。。。
もう帰ってぬるたろに会いたい。
クレハが即座にウィッグコーナーに突撃し、委員長は新入荷の
ガジェット棚に目が釘付け。シキはというと——
まだお嬢様モードの残骸が残ったまま、二人について回っていた。
「あら、このフリル付きのロリータドレス……とても可憐ですわね。
レースの重ねが美しいですこと……」
クレハの「これ絶対シキに似合うって!」という強引な勧めと、
委員長の「実用性テストとして購入推奨である」という謎の後押しにより、
シキは黒を基調にしたゴスロリ風のフリルドレス(かなり動きやすい伸縮素材)と、
レース付きのヘッドドレス、膝下丈のブーツまで揃えて
購入させられてしまった。
会計してくれた店員もわざとらしくニコニコだ。でもなんか
今まで以上にフリル好きかも……。頭やべえな……。
既に紙袋いっぱいなのに未だ購入意欲の衰えない委員長
(金持ちギークのクソが!)がどんどん店内を進む中、
若干脚が痛くなりながらもクレハと一緒に付いていった。
でもB1Fに下りると空気が少し変わった。
照明が何故か抑えられ、若干薄暗く埃っぽさの増した
売り場が広がっている。シキと委員長はふと奥の棚の方を見た。
そこにいたのは——暗い売り場の隅で、
ウルゼーマンの怪獣フィギュアを床に何体も並べて
一人で遊んでいる黒髪をかなり伸ばした少女だった。
髪で顔はよく見えないが12歳くらいかな・・?
「じゅわーーー。ダアアアアー……」と呟きながら怪獣同士を
戦わせて遊んでいる。
委員長がメガネの奥で目を細め、ぽつりと言った。
「あの子は……かなり深みを感じますな……。」
シキもスケボーと一緒に小さく頷いた。
「ああいう子もいるよな。コホン。いますわね……。」
それだけ言って、二人はそのまま通り過ぎた。
彼女はこちらに気づくこともなく、薄暗い棚の前で怪獣フィギュアを
「ギャアオオオ……!」と低く呟きながら動かしていた。




