圧倒的クズ
引越し当日の昼。
同級生のクレハとタマキは改めて見るシキの部屋の
惨状を目の当たりにしていた。
「全然荷造りできてないじゃん‥‥。」
シキ「‥‥。」
付け爪を全部はがしてあるクレハ
「タマキ‥‥とりあえず段ボールに全部つめてこ。」
タマキ「わかった。て…適当でいいよね?」
シキ「いやだめだ。まずは冷蔵庫とかニセ神棚とか、粗大ゴミからやってくれ。」
クレハ「意外とそこはちゃんとしてて草。魔法使えよ…。」
シキ「そんな魔法…ないから。」
クレハ「とりあえず全員の軍手もってきたよ…。」
当日の気温は日中で41度(更なる温暖化のため)まともな引越し作業すら
自分でしたことがない二人にとってはシキの汚部屋の残骸撤去
+散らかり過ぎた部屋の物量攻撃は余りにも荷が重すぎる負担、
そして惨状であった。
しかも安い日当。暑い初夏。全てが途方もない過酷。
圧倒的状況。
そんな状況でも荷造りは少しづつ進んでいく。
クレハ「タマキ~。そこのガムテープとカッター取って~。」
タマキ「ちょっと待ってて‥今大物とやりあってる!これは
彼のゴルタヘナの迷宮の第4層守護破壊神(赤影)
ジ・エンドオブ・カオスドラゴン並みだ!」
クレハ「いいわ。自分でやる。」
シキはコンビニでみんなのご飯を買ってくると言ったっきり帰ってこない。
タマキ「圧倒的。クズだ‥‥。」
クレハ「つーか埃マジ無理。アレルギーやばい。」
誰も助けを呼べない二人だけの状況で、ひとつ。またひとつと地道な
作業は進んで行く。
ぬるたろもスライムなりに粘着スキルで段ボールの封をしているようだ。
たびたび部屋の影から現れる、夏によく見かける素早く動く黒い物体も…
ぬるたろが見つけ次第固着させていく。なんという貢献。
10分の1程の荷造り作業が進み、二人と一匹はアパートの湿った木陰で
休憩に入る。
コーラを飲みながらクレハ「あちー。汗だくだく。
いやどうすっぺこれ。帰ろっか…。」
ペットボトルの水をかけてもらいながらぬるたろ
「‥‥きゅるる。」
タマキ「しかし…これを片付ければシキは俺に…。俺に…!」
クレハ「タマキってなんか…いいよねー。しかもこれさ。
そこのボロいカート(木製の大八車)に全部積んで1キロも運ぶんだよ?
何往復だよ?無理じゃね?」
タマキ「‥‥く。俺がチートクラスの召喚魔法さえ使えれば。こんな…!こんなもの!」
シキのアパートの大家の姿を見つけたクレハ
「‥‥こらタマキ。まあ引越しをしやがるご本人様がいないんじゃ、
どうやっても無理じゃね?」
少し遠くからアパートの大家が怪訝そうな顔で、うちわをぱたぱたしながら
二人を眺めている。
そのとき埃まみれの二人の背後で、怪しい一陣の風が巻き起こっていた。
(つづく)
弓削クレハ




