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途方に暮れております

「……は? 退去?」ボロアパートの狭い玄関で、

私は大家のおっさんの顔を睨め付ける(ねめつける)。


埃っぽい空気が鼻の奥を刺す。床には崩壊した神棚が転がり、

壁のヒビからは6月というのに妙に冷たい風がシューシューと吹き込んでくる。


「うん、退去だよ! もう限界だ! あんたの部屋、半壊してるし、

近くの看板は壊すわで元々苦情が山ほど来てるんだよ!」

小太りのおっさんの顔は怒り心頭だ。後ろに立ってる不動産会社のスーツ男も、

ため息を隠そうともしない。


確かに昨日の夕方、ネオンじじいの暴走で部屋がぐしゃぐしゃになったのは

事実だ。

ベッドは斜め、クローゼットは倒れ、床には魔術の調合物でできた

黒い染みが広がってる。


「でも……今月家賃払ったばっかだし……」

「払ったって! あんたみたいな社会不適合者の女が住んでると、

うちの物件の寿命が…!というかもうだめだ…。 天井は抜けたし、

水漏れもひどい!」


結局、有無を言わさず賃貸契約を解除されてしまった。

3日以内に退去だ。……おまけにガチで損害賠償請求するとか抜かしよる。

アパートのぶっ壊れ方からいってどう見ても建て直し・・・

になりそうだ。


私の部屋にあの迷惑ジジイが現れただけであって、

私のせいじゃないんだが。飛んだ理不尽展開だな。


まあ、いい。こんなボロアパートはこっちから願い下げだ。

「ちゃむ……」

スライムハウスから覗くぬるたろの心配そうな小さな声。

「大丈夫だよ、ぬるたろ。……またちょっと路頭に迷うだけさね」



とはいえあれから2日経ったが、片付けは一向に進まない。

今は何故か引越しシーズンらしく、業者の手配も全然つかない。

今なら多少金はあるってのに…マジで終わってる。


ぬるたろはけろっとしていて、いつもの調子に戻ってくれたみたいで

少し安心した。

あのジジイと因縁でもあるのか……?

まあ、考えたところで今はしょうがないか。

(つづく)

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