スライム&ナポリタン (中編) ぐうたらの日常
シキは乱雑に積まれたゴミ袋を横目にしつつ、
壁にへばりついているぬるたろをぼんやり見上げた。
「……ぬるたろ。お前が可愛いからゴミ出すの忘れただろ」
部屋の壁にべったり張り付いていた半透明の青いスライムが、
ぷるぷるっと震えた。「ちゃむ。」
シキは起き上がり、壁からぬるたろをゆっくりと引きはがした。
ぺりぺりぺりぺり。。ちゅぽんっ
「にゅるりっ!?」そのまま両手で抱き上げ、ぎゅううっと胸に押し付ける。
頰ずりしたり、指でぷにぷに揉んだり、腹の上に載せて転がしたりと、
朝の推し活をとりあえず堪能した。
「ん~……ぬるぬる~冷える♡……今日ももやばかわ……」
ぬるたろは少し困惑したように全身を震わせる。
「……ちゃむ……? にゅる?」
「うるさい。推しに癒されてるんだから黙ってろ」
十分に、でも優しくぬるぬるを味わったシキは、ぬるたろをそっとスライムハウスに置いた。
「よし、次は歯磨き……さて、どんな顔だ。あたし。
鏡を見ると、頰と前髪中心にほぼ上半身がテカテカに光っている。
これは割と人には見せられない。
「ぬるたろ、あたしが寝てる時にお前また舐めただろ」
「……」
悪戯っぽくぬるたろに絡むいつものやりとり。
「でもあとでちゃんとご褒美あげるからね!シャワーいってくるー。
てかマジ暑い……この部屋」
バスルームに入り、熱いシャワーを頭から浴びる。
さっきの嫌な夢が一瞬よぎった。クソ僧侶…
いや。。すぐに頭を振って追い出した。右手に目を移す。
こないだの依頼時のドタバタの受傷…大方治癒したが、まだ軽い痣になっている。
色沈やだな。それも魔術で治すか。。やってらんね。
髪と顔のぬるぬるをしっかり落とし、シャワーの中で歯磨きも雑に済ませる。
タオルで体を拭きながらリビングに戻ると、ベッドの上ではぬるたろが
スライムチュールを勝手に全身に塗りたくって幸せそうに転がっていた。
「にゅるるる~……♪ ちゃむ♡」
「あ …ぬるたろずる~い」
その時、携帯が激しく通知を鳴らし始めた。
近づいた瞬間——ピカッ!強制ホログラム投影が発動。
探偵風のくたびれたおっさんが徐々に拡大しながら映し出される。
若干キモいし、第一脂ぎったナポリタンを上品とはいえない姿勢で食いながら
こっちを見て上目遣いでニヤニヤしてる。。
「は??? おっさん!? まじやめとけ! ていうか今やば……裸!!!」
シキは慌ててタオルを胸の前で押さえた。
おっさんは構わずダミ声で言う。「おいシキ!いいから依頼受けろ!
16時に事務所に顔出せよ? それから服くらい着ろ。じゃな。」
「てめ!・・この変態親父!!」
シキが叫びかけた瞬間、プツン。ホログラムは一方的に切れた。
シキは一瞬立ち尽くした。「……ないわ」
ベッドの上ではぬるたろが、状況を理解していない様子で首を傾げていた。
「ちゃむ……?」
(続く)
シキが叫ぶ予定だった内容:
「……は? ちょっと待てよこのクソジジイ! 裸の女にホログラム飛ばしてきて『4時までに来い』だと? 性欲処理の道具かと思ってんのかよこの腐れ老害! 次やったらマジでエクソスーツで潰すからな、死ねボケ!!それからな 以下略」




