また別のダイブ (後編)星影の木の実
遠くから声が聞こえる。
----。-----キ!
ねえ…‥シキ!!!おいガンぎまり真っ黒ポンコツ女!!!
… ?
シキはゆっくりと目を開けた。視界がまだぼやけ、
頭の芯が重く疼いている。
まだ頭の奥で何かがうごめいていたが、さっきよりは幾分マシだった。
顔のすぐ近くで、二つの視線を感じた。クレハが涙ぐみながら、
ぬるたろと一緒に必死にシキの顔を覗き込んでいた。
ぬるたろは緑色に変色し、プルプルと激しく震えながら
シキの頰を突っついている。
ぬるたろ「きゅるるるるる♡!!」
クレハ「はあー……良かった……!シキ、くすりキメすぎだよ!?」
シキは体を起こそうとして顔をしかめた。
全身がバキバキに痛み、頭痛が波のように襲ってくる。
「……クレハ……お前、なんでここに……?いや・・・
そういう薬はやってねえが。…まあ、やってねえとも言えないか…。」
クレハ:「ぬるたろーの朝ご飯あげにきたんだよ!シキが帰ってきてたなんて
知らなかったからね!」
ぬるたろが緑色になりながら、ずーっとシキの顔をぺちぺち
叩いて起こそうとしてたんだよ!!」
シキ:「ああ……ぬる……頭いてえ……」まだ意識がはっきりしない。
周囲の生活音が、単語や断片になってブツ切れに聞こえてくる。
何とも形容しがたい、得体の知れない感覚が残っていた。
「……どうも周りのヤツが心の中で何となく思ったことが、
こっちの頭に入ってきちまうらしい……」
クレハ「シキ? いつもヤバめなのに、今日もますますおかしいよ?」
シキ「……ハハ、すまねえ二人とも……とりあえず起こしてくれ、クレハ。」
クレハに支えられながらなんとか上半身を起こす。その時、
シキはふと視線を動かした。「……ん?」
部屋の窓が開けっぱなしになっていた。視線の先、部屋の真ん中あたり——
さっき儀式用に炭で書いた魔法陣の端に、見慣れない小瓶が置かれていた。
シキ「……これは……この瓶はなんだ、クレハ?」
クレハ「ん? 元々置いてあったみたい? シキのじゃないの?」
小瓶の下には、置手紙もあった。
達筆で綺麗な文字だが、一行だけ何か書いてある。シキには読めない。
シキは念のため小瓶の中を確かめ、匂いを嗅いだ。
「……っ……クク……ハハハ……」
シキの口元が、ゆっくりと歪んで笑った。
「これはあれだ……薄々分かったが……まさに『星影の木の実』だ……
なんだこのご都合展開は……」
クレハはきょとんとしてついてこれていない。
シキは小さく笑いながら呟いた。
「……まさかご先祖の……あの暴力女か??いや、
だってあいつはエーテル体だろ……」
シキ「誰か変なヤツ見なかったか? ぬるたろ?……それにクレハ……」
クレハ「見てない! 着いたらぬるたろが必死に緑の光出してて
……慌ててシキのところに来たんだよ!」
ぬるたろは一瞬何か考え込むような動きをしたが、
思い出せなかったのか、ただプルプルとこちらをじっと見つめていた。
シキ「……まあ、今は時間が勿体ねえ……イテテ。体中バキバキだ……
とりあえず……今すぐに調合する。」
(つづく)




