第6話 トモダチ前編 ピュアすぎ
ヴゥゥゥゥン……亜駄夢・三島の武器システムが完全に起動し、
赤い照準光がシキの体に何重にもロックオンされた。
シキは全身を強張らせ、拳を握りしめて低く構えた。
チョビも一応は臨戦態勢を取っている……ように見えたが、
実際はぼーっと亜駄夢の義体を眺めながら鼻血を垂らしているだけだった。
‥‥こらブス。
その時、ヤマトが小さく咳払いをした。
ヤマト:「……コホン。」彼はゆっくりとシキに近づいてきた。
歩きながら指を鳴らす。——彼の周囲に張り巡らされていた青い光の膜が、
明滅を始めた。
ほぼ無音に近い、高い周波数の“ヴン……”という残響と共に、
一瞬だけ青白く輝き、その光が吸い込まれるように消えていく。
静寂が、部屋全体を包んだ。VIP専用の個人防御フィールドが、
OFFにされたのだ。
周囲にいたスタッフたち、そして亜駄夢までもが動きを止め、息を呑む。
シキ(さらに身構えながら後退り):
「……おいおい、近づくなよぼっちゃん。
用済みなんだろ??さっさと処理しろよ……」
ヤマトはシキの目の前まで来ると、わずかに背伸びをして、
シキの耳元に顔を寄せた。そして、誰にも聞こえないくらい小さな声で、
恥ずかしそうに、どもりながら耳打ちした。ヤマト(か細く、耳元で):
「……ねーねー、ぼ……僕と、友達に……なら、ないか?」
シキ「……は?」
一瞬、部屋の時間が止まったような沈黙が落ちた。シキの脳内が真っ白になり、
次の瞬間、猛烈に処理が追いついた。
脳内シキ:『は???友達???
今この状況で友達って言ったかこのガキ……!?
武器全開のフルボーグとサイバーザムライに囲まれて、核抱えて、
ナメクジに粘液まみれにされて、挙句にASAKURAの御曹司に耳打ちで
友達募集とか…………!?』
シキは呆然としながら、ヤマトの顔をまじまじと見つめた。
ヤマトは頬を赤くして、視線を少し逸らしながらも、
必死にシキの反応を待っている様子だった。
亜駄夢・三島(低く笑いながら)「フッ……」
シキ(やさぐれながらも、完全に毒気が抜けた声で):
「お前……マジでASAKURAの御曹司かよ……
最悪のタイミングでクソピュアなこと言いやがって……」
シキはまだ警戒を解かず、ヤマトを睨みつけたまま低く唸った。
シキ「……てめー、これすらもトラップなんだろ?
私は伊達に魔術師やってるわけじゃ……」
するとヤマトがまた一歩近づき、シキの右手に何かカードのようなものを
そっと手渡した。
シキ(固まる)「……ちょ……」手渡されたのは——
「スライムSHOP 1年優待券 特αメガコープ盛りコース」
(全スライム食べ放題+深夜VIP営業解放+限定スライム抱き枕プレゼント付き)
シキ(目が点になって)「え……。
……まじか……?
まじでいいのか? これ……。
やば……お前……いいぞ!
……ともだちになってやらんことも……ない、けど……」
ヤマトは耳まで真っ赤になりながら、視線を少し下に落として、
ぽつぽつと本音を零した。
ヤマト「……僕は昔から、ASAKURAのおかげで友達がいないんだ。
みんな俺の顔を見ると怯えるか、利用しようとするか……。
君のことは……以前からモニター……こほん。
知っていて、是非会いたいと思っていたんだよ。
自由そうで……いいな、って。」
部屋が一瞬、静まり返った。シキ(完全に毒気が抜けて、カードを握りしめたまま):
「……。お前……本当に……ぼっちゃんがよお。
核抱えた運び屋にスライムSHOPの優待券渡して友達申請とか……
頭おかしいんじゃねえのか……」
脳内シキ:『やばい……なんか可愛い……
いや待て、油断するな……でもスライムSHOP特αコースはマジでヤバい……
これは……これは……』
ヤマトはまだ少し恥ずかしそうにシキの顔をチラチラ見ながら、
小さく指を弄んで待っていた。
チョビは………もういいコイツは。
亜駄夢・三島は腕を組んで無音で低く笑っている。
そのとき周囲にいたASAKURAのコーポ共がふっと表情を緩めた。
冷たいプロフェッショナルの顔が一瞬で消え、代わりに温かい、まるで家族を
見守るような笑顔が広がっていく。
パチ……パチ……パチパチパチパチ……やがてそれは一斉に大きな温かい拍手へと
変わった。社員の一人が小さく呟いた。
「……ヤマト様、ようやく……」
別の女性スタッフは目頭を押さえながら微笑んでいる。
「私。初めて見ました……ヤマト様のあんな笑顔」
ヤマトは耳まで真っ赤にしたまま、シキに向かって小さく頭を下げた。
ヤマト:「……よろしく、友達。」
シキ(カードを握ったまま、完全に毒気が抜けて):
「……ったく、ふざけんなよ……
ASAKURAでこんなほのぼの展開とか…………」
それでもシキの口の端が、わずかに緩んでいた。拍手はしばらく続き、
研究所の冷たい空気を優しく包み込んだ。何故か社内広報?の…撮影班もいた。。




