表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のんびり鍛冶屋『ひっそり暮らしたい刀匠の異世界工房』  作者: 常陸之介寛浩✪書籍・本能寺から始める信長との天下統一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/55

第51話 試すのは鍛冶場ではなく、畑の泥の中で

 午後、試作した二本の鎌を持って、俺とリッカは畑へ向かった。


 前に観察させた二人の女に、実際に使ってもらうためだ。鍛冶場でどれだけ「良さそう」に見えても、結局、畑の泥の中で使って初めて答えが出る。


「緊張する……」

 隣でリッカが小さく言った。

「作ったのは俺だ」

「でも考えたのあたしもだろ」

「少しはな」

「少しって言うなよ!」


 そう言っているくせに、顔は本気で緊張していた。


 畑へ着くと、女たちはすでに草取りの支度をしていた。俺たちを見るなり手を止める。


「あら、早かったね」

「試作だ」

 俺は鎌を差し出す。

「前のやつと違う」

「うん、見りゃ分かるよ」

「今日は、こいつも見てる」

 俺は顎でリッカを示した。


 女たちは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに「ああ」と笑った。


「賑やかな弟子さんかい」

「弟子じゃない!」

 リッカが即座に叫ぶ。

「でも今日は半分くらい弟子っぽいだろ」

 女のひとりが面白そうに言う。

「半分って言うな!」

「うるさい、始めるぞ」

 俺が切ると、ようやく二人とも鎌を受け取った。


 最初に、小刻みに使う方の女が刃を入れる。


 しゃ、しゃっ。


 草のまとまりを細かく払う音がする。前より確かに返しがいい。手首の動きに鎌がついてくる。だが、二、三度使ったところで、女は少し首を傾げた。


「悪くないけど……前のよりちょっとだけ軽すぎるかね」

 リッカがびくっとする。

「軽すぎ?」

「うん。狭いとこで使うのは楽。でも、湿ってる草が重い日はもうひと押し欲しいかも」


 俺は黙ってうなずいた。

 そういう答えだと思っていたところもある。


 次に、引いて刈る方の女がもう一本を使う。


 ざっ、ざっ。


 こちらは分かりやすかった。前より刃が流れ、草丈のある部分でも止まりにくい。女の顔がすぐに明るくなる。


「こっちはいい!」

「どういい」

 俺が聞く。

「引いた時に途中で引っかからない。前のはたまに“ぐっ”て止まってたけど、これはそのままいける」

「うん」

「腕が楽」


 リッカがそっちを見て、ちょっとだけ嬉しそうな顔になり、次の瞬間には片方が外れた事実に気づいて複雑そうな顔へ戻る。


 俺はその横顔を見ながら言った。


「分かったか」

「……うん」

「考えるのと当てるのは別だ」

「うん」

「でも外した理由も見えただろ」

「たぶん」

「なら次につながる」


 リッカは悔しそうだった。だが、その悔しさは悪くない。

 ただ「すげえ」で終わるやつより、外して悔しがるやつの方が、次へ行ける。


 畑から工房へ戻る道すがら、リッカは何度もぶつぶつ言っていた。


「軽すぎたのか……でも返しはよかったんだよな……」

「そうだ」

「じゃあ、返しやすさは残して、もうちょい腹へ……」

「声がでかい」

「考えてんだよ!」


 考えている時点で、前よりずっとましだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ