表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のんびり鍛冶屋『ひっそり暮らしたい刀匠の異世界工房』  作者: 常陸之介寛浩✪書籍・本能寺から始める信長との天下統一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/55

第46話 違う鍛冶、違う正しさ

 村鍛冶の父は、工房の前の椅子へは座らなかった。立ったまま、炉と道具台の間を見る位置にいる。俺も炉の前から動かなかった。火のそばの方が、余計な言葉を省ける気がした。


「村では、止めないことが仕事だ」

 父が先に言った。

「鍬も鎌も鋤先も、戸板の金具も、止まれば暮らしが止まる」

「そうだろうな」

「一本ごとに寄りすぎれば、他が遅れる」

「それも分かる」


 俺は正直に言った。否定する気はない。むしろ、村の道具を見てきた今なら、その重さは想像できる。


 父は続ける。


「だから、俺は村の流れを止めないように打つ」

「……」

「娘は、それじゃ足りないと思ったらしい」

「そうだな」

「お前は、使う人に合わせる鍛冶をしている」


 そこで一度だけ、俺ははっきりと答えた。


「している」

「なぜだ」

「道具は、使うやつの手で仕事になるからだ」

「……」

「止めない鍛冶もいる。だが、使う人間に合わせた方が楽になる時もある」

「それは知っている」

「なら話は早い」


 父の目が少しだけ細くなる。


「だが村で、それを全部にやる余裕はない」

「分かってる」

「分かっていて、お前はやる」

「目の前に持ち込まれたものはな」


 短い会話だった。だが、そこにある違いははっきりしていた。


 父は村の流れを止めない鍛冶師だ。

 俺は使い手に寄せる鍛冶師だ。


 どちらも正しい。

 ただ、正しさの向きが違う。


 それを善悪で切らない会話ができたことに、俺は少しだけ意外さを感じていた。


 父は最後にリッカの方を見た。


「娘の邪魔になるなら連れ戻す」

「えっ」

 リッカが顔を上げる。

「邪魔?」

「俺の、じゃない」

 父は低く言う。

「お前自身の、だ」


 それだけ言うと、踵を返した。


 怒鳴りもしない。だが、ずしりと重い言葉だけを残して。


 リッカはしばらく動けなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ