68話 魔法の対人戦闘のやり方
東暦7029年7月14日 06時55分
あの戦い............ いや、あのタイマンは、両軍の兵士たちが先程までは殺し合っていたのが嘘かと思えるほどに、皆が静止して、俺とバグサックを慎重に見つめている中で始まった。
どちらも、相手の出方を息を飲んで観察している状態。
「先手必勝!!!!!」
その沈黙を打ち破ったのは、いかにもバグサックらしい陽気で大きい声だった。
その声が響いたかと思いきや、すでに奴の指は、銃の引き金にかけられていた。
次の瞬間、バグサックが片手で構えたライフルは、正確に俺を撃ち抜くように、しっかりとした照準で俺へと火を吹いた。
「マジかよっ!!!」
いきなり片手で銃を構えたと思ったら、いとも容易く狙って放つ。
それを最初見た時の俺の口からでた感想は、ただそれだけだ。
しかし、この時の俺は二年半前のあの惑星のときの俺とは違う!!!!!
あの時ならば、ただただ何をされたかわからなくて、呆然としているところを僅かなタイミングでカリウスが助けてくれるだけだった。
しかし、カリウスは政治で戦うため、ここにはいないのだ。
なので、自分で解決しなければならないのである。
その現実が、俺の心と判断力と、魔法の力を強きものへと変貌させる原動力となった。
「やられるかよ!!!!!」
俺は、全力で環境操作の魔法が発動するように、心の中で祈る。
その瞬間、目の前に緑の炎が現れ、一瞬にして大木が生成された。
放たれた銃弾は、それに吸い込まれていく。
「グレース様、あの魔法を戦闘に応用するとは、流石です!!!!!」
それを見たハルトマンがこういった直後、こちら側の兵士から次から次へと歓声が上がる。
当然、俺も心のなかでは今にも歓声を上げたかったが、そんなことをする暇はない。
「はっ、おもろい魔法だな! だが俺の魔法の前には無意味だ!!」
バグサックがいきなり全力で走ったかと思うと、奴は俺の盾となっている大木を避けるようにして、俺の側面をつこうとしてきた。
当然、そんな行動を見過ごすわけには行かない。
俺は、すぐさま銃を構えて、引き金を引く。
俺達の使っている銃は、すでに魔法チャージのオーブによって精密の魔法が刻み込まれているので、あの惑星の時とは違って、精密の魔法を発動するために、わざわざ心の中で念じる必要ない。
引き金を引いた瞬間、けたたましい音と共に、銃弾が放たれた。
狙いはそれなりにズレていたが、弾はすぐさまバグサックに向けて向きを変えて突っ込んでいく。
「勝負アリだ!!!」この時、俺は心の中でそんなことを思っていた気がする。
しかし、熟練の魔装兵と戦うときは、そうそうこちらがうまくいくことはない。
このときも、例にも漏れずそうだった。
「はっ!甘えな!」
その瞬間、奴はすぐにスピードを殺して下にしゃがんだかと思うと、いきなり手のひらを地面に押し当てた。
次の瞬間、奴がいた場所は、いきなり爆発に見舞われた。
そして、あと◯.五秒もあったら間違いなく奴に直撃していただろう銃弾は、爆発の衝撃と炎の渦によっていとも容易く飲み込まれた。
「なっ!」
これには、流石に驚かされた。
洗練された魔法の使い方、こんなにも素晴らしいことが出来たなんて、戦闘中にもかかわらず、当時の俺はバグサックに敬意を抱いたほどだ。
しかし、戦闘というものはその一瞬の隙というものが死に直結することもある。
「せっかくだし、接近戦で泥臭くいこうじゃないか!」
爆発の煙の中からそのような声が響き渡った次の瞬間、煙の中からは、腰につけているナタを手に持ち替えたバグサックが俺へと迫っていた。
その瞬間、俺の体のあらゆる神経が鋭利に研ぎ澄まされた刃物のような形で反応する。
「望むところだ!!!!」
俺はそう言うと、腰に差していた刀を間一髪のところで抜いて、奴のナタを受け止めた。
その瞬間、強い衝撃と、刃物どうしがぶつかり合う金属音が発生する。
その衝撃は、俺の腕にはあまりにも重いものであり、当然後ろに後ずさりするしか無かった。
バグサックはそれを見逃さず、更に追撃へと移る。
その連撃は、一切の手抜きがない確実に俺を仕留めるものだった。
受けきれず、なにかに焼かれるような痛みが発生した瞬間に、段々と血が俺の体から飛び散っていく。
それを見ている、ハルトマン達は、今にも手を出しそうな勢いだった。
俺がやられれば、こちら側が手を出してしまいそうなことなど、一目瞭然だ。
そんな光景を見てしまったら、俺は倒れるわけにはいかない。
当時の俺は、猛烈な斬撃によって肉が削がれようとも、なんとかして反撃のチャンスがないか、やつを観察していた。
そして、約三十秒後、そのときは訪れた。
奴の攻撃は、複雑な連撃かと思いきや、ただ速く切りつけているだけで、同じような攻撃パターンなのだ。
最初は軽い斬撃、その次は刺突による連撃、そしてまた軽い斬撃を含んだ後に、大きな袈裟斬りを入れる。
そこで、当時の俺は袈裟斬りのところに活路を見出した。
袈裟斬りというものは決まれば致命傷になるが、決まらなかった場合大きな隙となる、いわば、諸刃の剣というものだった。
「いまだ!!!!!」
俺は、本能なのかわからないが、無意識にそう叫ぶと、奴がナタを大きく上に振り上げた瞬間を見計らって、刀を思いっきり奴の腹に向けて切りつけた。
「やった!!」この時のタイミングは、当時の俺からしたら完璧とも思えるほどのタイミングで攻撃を仕掛けたので、心のなかでそう思ったほどだった。
しかし................... 現実というものは決して、そう簡単にうまくいくことはない。
「甘いんだよ」
バグサックそう言った直後、俺の切りつけた刀は奴の体を切りつけたのではなく、ほんの僅差で届かなかった。
そう、避けられたのだ........................
その瞬間、奴がナタを振り下ろす。
当時の俺は、防衛本能からやつからの距離を取ろうとしながら、刀でナタを受けた。
しかし、すでに奴の猛烈な斬撃に耐えていた俺の刀は限界だった。
鉄の棒が折れる音、それと同時に、俺の視界には刀の刃が飛び散る様子が映り込んだ。
そして、その直後、俺の体に強烈な痛みと焼けるような灼熱が走った。
そう、俺は奴の強烈な一撃をもろに喰らってしまったのだ...................
その一撃を食らった俺は、まるで、糸が切れたように倒れていった。




