66話 絶望の砦
東暦7029年6月28日
この日、第四軍の元へと訪れた俺達を迎えたのは、ボロボロになった大量のロボット兵と、とてもくらい顔をしているギノー将軍以下、第四軍の幕僚たちだった。
「どうしたんだ、みんな!?」
皆の姿を見た時に、俺が発した最初の言葉はこれであった。
「陛下、申し訳ございません..............」
ボロボロの兵士たち、暗い顔をした第四軍の上層部。
これを見れば、ジュリョン要塞への総攻撃が失敗したことは、少し考えればすぐに分かることだった。
「あの要塞への総攻撃は失敗しました..................... 攻撃を仕掛けた二万の兵の内、死傷したのは八千、大敗北です............ 責任は全て私が引き受けます、どうか部下たちには寛大な処置を...........」
ギノー中将の言葉通り、この第一次総攻撃はヴァルキリア軍の大敗北となった。
正確な損害は、攻撃に参加した二万一千名の内、死傷者は八千六百七十三名、死傷率は四十三%。
この中にはロボットでない兵士も三百人ほど含まれていた...............
これだけの損害、第四軍の首脳部が死んだ空気になるのも当然のことだった。
それを見た俺は、責め立てるわけにも行かなかった。
無論、「軍人だから責任を取らせるのは当然」そう言いたくなるかもしれないが、あの要塞は、どんなに手誰の司令官だろうが、あの時の俺達と同じ状況では、普通に落とすのはまず無理だ。
「ギノー将軍、あの要塞を落とせるのはあなたしかいません............. 今回は責任は取りませんので、そのままでお願いします.............. それよりも、第一次総攻撃の映像を見せてください」
それを聞いた将軍は、一言「はい」とだけ言うと、俺達を会議室へと連れて行った。
「これが今回の総攻撃の全容です」
将軍がそう言うと、モニターには総攻撃の様子が映し出された。
しかし、以外なことにも、流れてくる様子は普通に順調なものだった。
異常なまでの準備砲撃、からの装甲兵と工兵隊を突入させて、堅実にひとつひとつの塹壕やトーチカを制圧していく。
作戦からわずか三時間で、ギノー将軍はジュリョン要塞の南側の堡塁を五つも落とし、確実に橋頭堡を確保していった。
しかし、事態が急変したのは攻撃開始から四時間が経過したときであった。
いきなり、こちらの橋頭堡として活用していた堡塁が突如大爆発を起こしたのだ。
あまりにも大きな爆発、そこにいたこちらの兵士約千五百名は、即座に全滅した。
そして、その煙の中から現れたもの、それは、一人の黒髪のアフロの男だった。
それを皮切りに、敵の大攻勢が開始された。
歩兵と砲撃、そして”魔装兵”................
奴らの連携力は、異常なほどまでに高く、第四軍の兵士たちを矢継ぎ早に殲滅していった。
結果、そこから一時間半で占領した堡塁は全て奪還された。
「魔装兵が強いな.............. 特に、あのアフロだ」
映像を見終わった結果、俺の言える感想はそんなものだった。
「おそらく、あのアフロの魔法は爆発の魔法............. 残りの魔装兵は、おそらく魔法は持ってなくても、魔力を持っている者を集めて、武器を利用して魔法を発動しているのでしょう...........」
魔装兵というものは、基本、特殊な銃火器を利用して魔力を利用し、魔法を発動するというものだ。
その戦闘力は、普通の兵士の十倍ほどの戦闘力を誇る。
まだ生まれたばっかりで赤子だったこの国は、陸軍の兵士のほとんどをロボットで構成しているので、大きな差が着いていた。
「なるほど............... これはヤバいな.............」
「はい、ヤバいです」
俺が少し困ったようにそう言うと、ギノーはあっさりとそう言った。
実際、あの要塞を一番簡単に表現するんだったら、「ヤバい」その言葉が一番ふさわしいのだ。
その後、しばらく解決策を話し合っている最中、それまで口を閉ざしていたガスターが自身げに口を開いた。
「グレース、敵の魔装兵は俺に任せてくれないか? 本土にとっておきの物を置いてあるもんでな!」
普段のガスターのことを考えてあまり信じられていない俺は、疑いをはっきり混ぜたような口調で、こう言った。
「ほんとか〜〜〜〜〜〜?」
それを聞いてもなお、ガスターの表情は変わらない。
「せっかく来たからにはやらせてくれ、ギノー将軍も賛成している、そうだろ?」
そう言うと、ガスターは脅迫めいた怖い目をすると、ギノー将軍の顔を少し見た。
「はい..............」
それを聞いたガスターは、再びいつもの陽気でニコッとしている表情に戻る。
「ということで、やってもいいだろ? 責任は俺が取るから!」
流石に、この状況を打開できる策がなかった俺は、ガスターに根負けするしか無かった。
「わかった、好きにやれ.......... ただし、責任は全てお前だぞ..........」
それを聞いたガスターは、早速のカリウスに向けて、とある要求を送った。
同日、行政ビルでいつも通りの政務を行っていたカリウスに向けてガスターからの要求が超光速通信により送られてきた。
「なるほど............ まさか、ガスターの編成していたあれが本当に必要になるとは............」
それを読んだカリウスは、前線の魔装兵というものの実力が想定外だったことに驚きつつも、ガスターの要求どおりの物を、速やかに手配した。
十三日後の、東暦7029年7月10日
この日、第四軍には、とある大隊が送られてきていた。
その大隊の名は、「第95魔法ライフル大隊」。
この戦争に向けて、おそらくはこの国で一番魔法のことを知っているだろうガスターによって、秘密裏に編成されていた部隊だ。
全員が、ドルツィオ帝国からの侵略によって故郷を滅ぼされた者たちからで編成されており、その多くが魔装兵だった。
「まさか、こんな部隊を裏で編成していたとはな................」
当時の俺は、「速く言えよ!」そう言いたかったものだが、こんな素晴らしいものを編成していてくれたガスターのことを、素直に褒めることにしたのだ。
「この大隊の指揮は、俺が取る。 それで異論はないだろ?」
当然、魔法の能力が一番高いガスターを指揮官にすることなど、異論はない。
しかし、一つだけガスターに頼みたいことがあった。
「なあ、俺も一緒に戦っていいか?」
それを聞いた瞬間、ガスターは笑みというか、半ばあきらめと言うか、よくわからない表情に変わった。
「おいおい、死ぬかもしれねえぞ? それに、お前は国王なんだから、俺に任せとけよ」
そんなことは当然わかっている。
しかし、当時の俺は戦争を始めといて、自分は後方から見守るという人間というものがなんというか、許せなかった。
「ガスター、俺は戦争を始めといて、自分は安全な後方で悠々と生きているような王になりたくないんだ.................... 死ぬかもしれない、しかし、それでも王として行きたいんだ........... 頼む!」
それを聞いたガスターは、大笑いをすると、俺に向かって力強くこう言った。
「わかった! やるからにはやるぞ、グレース!」
「ああ!」




