55話 迫りくる帝国の脅威
お久しぶりです!
東暦7029年4月7日
ルーンハイム王国周辺に、少しずつドルツィオ帝国の軍艦が確認されるようになってきたこの日、とある事件が起こった。
この日は、いたって普通の一日になるはずだっのに...............................
この日、輸送艦C15はルーンハイム王国が位置する、アルディア星域を航行していた。
「いや〜、この星域は通行しやすくていいですね!」
艦の乗組員である、若いエルフの青年は、何気ない雑談を作り出すためにそう話しを切り出した。
「ああ、本当にすごいものだ!」
若き艦の艦長も、それに共鳴するかのように、自信満々にそう言う。
だが、その何気ない平和な会話は、レーダー員のロボットの緊急報告で一瞬で消し去られてしまった。
「緊急です、国籍不明の艦隊を確認、大艦隊です。」
無機質にロボットから放たれたその言葉は、艦橋にいた者たちの恐怖心を煽るには十分なものだった。
正体不明が分からないものに対して、人は誰しも恐怖心を抱く、ビビるのは当然だ。
「なっ...................... 」
若き艦長は絶句し、思考が一瞬停止した。
さらにその時、国籍不明の艦隊から一つの通信が艦に届けられた。
「不明艦隊からの入電です、停船せよ、さもなければ攻撃する、とのことです。 いかがしますか?」
それは、常識的に考えて、あまりにも非常識な内容の電文だった。
それを聞いた艦長は、あまりにも非常識な通信に怒りの感情を解放した。
「なんだと! ここはルーンハイムの領域なのに、なぜこんな内容を送って来るんだ!!!!!」
艦長のその反応は、当然すぎる反応だった。
だが、艦長は一瞬は怒りを解放したものの、すぐに冷静な感情に戻り、ある決断をした。
「停船しよう。 命には変えられないからな.....................」
「船を止める」、その決断は、ヴァルキリア王国、ドルツィオ帝国、ルーンハイム王国、この三国を巻き込んでの外交トラブルが発生することを意味していた。
当然、こんな決断をするには、並大抵の者には不可能だ。
しかし、この艦長は部下の命を守るために、とても立派な決断を出したのだ。
艦長は、停船する前に通信員のロボットに対してこう言った。
「ただ、本国とルーンハイムには連絡しておこう................ ドルツィオ帝国の艦隊に拘束されているとな...............................」
その日の午後、ヴァルキリア王国の首都であるアイゼンシュタットの行政ビルを一本の連絡が貫いた。
「なん.............. だと................」
この言葉は、その報告を聞いた時の俺の第一声だ。
いや、俺だけではない。
おそらく、あの報告を俺の間近で聞いていたやつは、皆そう口に出したはずだ。
「ルーンハイム王国からはなんか言われているのか!?」
俺がそう言うと、普段は冷静なカリウスも少し焦っていたのか、額から僅かな汗を流しながら少し驚いている口調で、ルーンハイム側が言っていることを口に出した。
「ルーンハイム側は、慎重な協議を進めて、問題解決に導きたいと言っています..................」
それを聞いた俺は、怒れずにはいられなかった。
「なんでルーンハイム内で、この国の艦が拘束されなければ行けないんだ!!!!!!!!!!」
ルーンハイム王国の領域内で、この国の艦が拘束される。
そんなのは、当時のとても未熟で王としての器ではなかった俺からしたら、到底許せるようなものではなかった。
俺が、怒っているのを見たゲオルクが、少し焦りながらも、すかさず止めに入る。
「グレース様、ルーンハイムは戦力がないため、仕方がありません.....................」
それは、怒って感情をあらわにしている俺とは違った、とても冷静さを含んだ言葉であった。
しかし、この時の俺は、さらに怒りの感情をあらわにしてしまった。
「これのどこが仕方がないだ!!!!!!!」
この言葉を言ったことは、本当に申し訳ないと思っている............................
「おいグレース、いい加減にしろ!!!!!!!!!!!!!!」
その時、ガスターの怒りに満ちた声が、部屋全体を包んだ。
「馬鹿かお前!、なんで国王が感情をコントロール出来てないんだよ!!!!」
ガスターの言ったことは、当然のことだった。
しかし、俺はすかさず言い返す。
「何だと、ガスター!!!!」
この会話の時の俺は、まじで終わっていた。
言ってしまえば、一国の王としての振る舞いではなく、喧嘩をしていて、感情を好き勝手にばらまいているような子供のような感じだった。
だが、そんな俺を放置するようなやつはいなく...............................
「いい加減にしてくださいグレース様!!!!!!!!!!!!!!!!」
見かねたカリウスが、容赦なく俺の頬を叩いた。
「こんなことなんかで、部下との溝を深めるのはおやめください!!!!!」
カリウスの行動と発言は、部下としてと言うより、友としての行動と発言だった気がする............
その瞬間、俺はカリウスの言葉に心を動かされたというより、カリウスに叩かれたということに強い衝撃を受けた。
「なっ............................」
俺の驚いている様子をよそに、カリウスは怒っている口調で話を続ける。
「グレース様!、我々の王ならば、王らしくあってください..................................」
それは、王ではなく子供であった俺のことを完全に指摘するものであった。
その瞬間、俺は心底、自分のことが恥ずかしく思えてしまった。
「すまない、みんな........................ 俺は、王として最低だ...............」
当時の俺には、完全に駄目だった自分のことが心底嫌で、俺はそうしか言えなかった。
「わかってくれたらいいんだ、グレース.......................」
ガスターも少し落ち着いたのか、そう返す。
俺の子供じみた喧嘩は、こうして止められたのだった。
「で、どうします?」
会話が一段落したところで口を開いたのは、その状況を冷静に見ていたグライムだった。
「外交によって、解決しようと思うが.............................」
すると、それを聞いたグライムは少し笑いながらキツめにこう言った。
「グレース様も意外と生ぬるいことを言うものですね、なんのために宇宙艦隊を強化したのやら..........................」
それを聞いた俺は、おもわず背筋に冷や汗が走った。
「まさか、宇宙艦隊を派遣しろって言うのか...........................?」
宇宙艦隊の派遣、それは、ドルツィオ帝国の行動に対抗するという姿勢をきっぱりと示すということだ。
そんなことをした場合、全面戦争にもなりかねない。
俺の、驚きを口に出したあの言葉は、当然の反応だろう。
だが、それを聞いたグライムは更に笑いながら話を続けた。
「グレース様、何度も言いますが、この世界は弱肉強食です............... 舐められたらおしまいですよ.........」
グライムのその言葉は、本当に正しかったことだ。
何度も書かせてもらうが、この世界は”弱肉強食”だ....................
舐められたら終わり、なんとも残酷なものだが、この世界では、これが普通のものなのだ。
「わかった................... 俺自ら艦隊を率いて、ドルツィオ帝国の艦隊を牽制しよう! ガスター、リアルヌ、ついて来い!」
それを聞いたガスターとリアルヌは口を揃えて自信満々にこう言った。
「はっ!」
だが、俺達はこの出来事を機に、戦争というものへと向かっていくのである......................




