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帝国のつくり方  作者: ムックk
建国編
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51/61

51話   大建艦の夏休み

 東暦7028年8月1日

 この日から、グライムの提案した艦隊増強計画は、ついに現実のものとして動き出した。

 前の世界では、この8月という月は夏休みというイベントがあった。

 まあ、簡単に言ってしまえば長期の休みだ。

 だが、当時のこの国にそんな暇はない。

 なぜなら、この世界でも”平穏”というものは与えられるものではなく、掴み取るものだからだ。

 ゆえに、俺達は目先の休みたい気持ちを堪えて、未来の平穏という休みに向けて頑張ったのである。


 


 まず最初に行われたのは、新しく建造する軍艦の設計である。

 既存の保有している艦艇の性能分析に加え、他国の軍艦に関するあらゆる情報、実戦で手に入れたデータ。

 それらを全て組み込み、この国の独自の思想を持った艦艇を生み出す。

 そういうコンセプトで俺達の軍艦の設計は行われていった。

 

 この設計作業の中心に立ったのは、科学省のトップであるロンメルである。

 さらに、ロンメルのもとには、この一年で急速に成長した、科学省の皆が集っていた。

 「わずか一年、早すぎる!!!!」これを読んでいる者は、大体がそう思うだろう。

 実際、当時の俺も皆の成長スピードにはかなり驚いた。

 エルフという種族は学習能力がめちゃくちゃ高い。

 それと、皆の向上心が化学反応をおこしたことにより、わずか一年でロンメルを補佐できるほどの人材がバンバン生まれたと言うわけだ。

 彼らは、昼夜の区別なく設計を行った。

 紙の山、図面の束、数え切れぬほどの修正と試算。

 時には議論が白熱し、喧嘩になったこともあるらしい。

 しかしその全ては、ヴァルキリアという国家を守るためであった。


 その結果、通常なら数カ月、あるいあ一年以上かかるはずの艦艇の設計は、わずか”一週間”という驚異的な速度で完成した。

 出来もよく、コンピュータに計算させても、なんら問題はないとのことであった。

 このスピードは、完全に”常識”はずれである。

 しかし、それこそがヴァルキリアという国の”常識”だった。


 そして、東暦7028年8月8日

 新たな艦艇の建造が開始された。




 この国の軍艦建造というものは、大きく分けて、二つの工程に分けられる。

 第一段階は、パーツの製造。

 ここでは、武装、動力となる恒星炉、通信機器。装甲といった、艦を構成する部品が作られる。


 そして、第二段階である、組み立て。

 ここで初めて、建築加速の魔法が本格的に投入される。

 巨大な船体骨格に、完成したパーツが次々と取り付けられていく。

 魔法によって短縮された時間の中で、科学で作られたものと魔法が融合していく光景は、まさに奇跡のようなものだ。

 

 通常であれば、一隻の軍艦を完成させるまでには”数年”を要する。

 しかし、ヴァルキリアでは、それが一隻あたり約二十日。

 さらに、それを同時並行で複数建造していく。

 常識という概念が、この国にでは意味を持たなかった。

 そして、この狂気とも呼べる速度の大建艦は、ついに一つの節目を迎える。

 



 東暦7028年8月31日

 この日、この国の人々が、造船所に集まっていた。

 彼らの目的は一つ、完成した軍艦をこの目で見ることだった。


 「いよいよか.....................」


 俺は、建造されたばかりの戦艦が最もよく見える席に座りながら、小さく呟いた。


 「よくやってくれた、ロンメル..............ブルーノ」


 そう声を掛けると、隣に座っていたブルーノが、深く頭を下げた。


 「光栄の極みです、グレース様」


 その言葉には、誇りが滲んでいた。

 

 「しかし、よくこんなでかいものを二十日で造ったな...........................」


 あの時の俺の視線の先には、巨大な戦艦があった。

 全長千五百メートル。

 あの巨体は、まるで山のようなものだった。

 鋼鉄の装甲が夕日を反射し、赤く輝いていた。

 あれは、船と言うより、空に浮かぶ要塞と言ったほうがいいだろうか...................


 「皆のおかけです.....................」


 ブルーノが、静かにそう言った。


 「本当に、皆成長しました.................」


 一番頑張ったのに、自分の功を自慢せず、部下のことを褒めるブルーノは本当に素晴らしい性格を

しているものだ..........



 「グレース様、そろそろです」


 隣でロンメルが静かにそう告げた。


 「ああ、そうだな」


 俺は、ゆっくりと立ち上がった。

 式典は粛々と進行し、ついに俺の出番が訪れる。


 「それでは、国王陛下から艦名の発表です!」


 司会役であるリアルヌの声が響く。

 俺は、壇上へと歩いた。

 あの時の足取りは、思ったよりも重かった。

 まあ、緊張していたのだ。

 だが、それ以上に...................

 誇りがあった。

 

 そして、俺はゆっくりと口を開いた。


 「本艦を.................」


 一瞬、会場全体に静寂が訪れる。


 「ヴェストファーレンと命名する!!!!!!!!!!!!!!!」


 その瞬間、艦首に取り付けられていた巨大なくす玉が割れた。

 同時に、低く重い音が響き渡る。

 それは、新たに生まれたヴェストファーレンの機関が、初めて呼吸を始めた音だった。

 ゆっくりと確実に、巨体が空へと浮かび上がる。


 会場全体から、皆の歓声が一斉に湧き上がった。

 それは、ただの歓声ではなく、希望の叫びであった。

 この国が、生き残るための力を手にした証。

 あの光景は、今思い出しても胸が熱くなるものだ.....................


 こうして、この国で初めての国産戦艦である、ヴェストファーレンは誕生した。

 それは、単なる戦艦ではなく、この国の未来そのものだった。

 ヴェストファーレンが誕生してから、この国の軍艦は全て国内で建造されていくこととなる。

 この艦はやがて、この国が後に建造していくことになる、”何十万隻”にも及ぶ戦艦。

 その全ての始まりとなる存在..............................

 すなわち、長女ということである。


 

 

 

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