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帝国のつくり方  作者: ムックk
建国編
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44/61

44話   始まる領土拡大

 東暦7028年4月18日

 この日、十隻の輸送艦がヴァルキリア王国の首都星である、”アイゼンシュタット”を出航した。

 艦隊の進路は、隣接するアストラ星域。

 目的は、未踏星域の開拓であった。

 当時のこの国の支配領域は、極めて限定的なものであった。

 首都星であるアイゼンシュタット、資源惑星であるDa3953に名前をつけたゴルトベルク、この二つの星だけだった。

 アイゼンシュタット、鉄の都市という意味を持つこの星は、この国の中心として急速に発展を遂げていた。

 ゴルトベルク、黄金の山という意味を持つこの資源惑星は、豊富な鉱物資源を背景に、国家の発展を支えるものだった。


 「これなら十分じゃないの?」、これを読んだものはそう言いたくなるだろう。

 しかし、当時の俺達は、他の国や組織に取られるんだったら領地に加えちまおうという考えで、輸送船を行かせたのである。




 アストラ星域は、恒星一つを中心に、六つの天体で構成されていた。

 内訳は、生活可能な岩石で覆われた惑星が一つ、資源惑星が四つ、中心に位置する恒星。

 一見すると、極めて魅力的な星域である。

 特に、四つの資源惑星の存在は、他の国には何が何でも取られたくないものであった。

 しかし、当時の俺達が最初の開拓対象として選んだのは、四つの資源惑星ではなかった。

 選ばれたのは、岩石で覆われた惑星であった。

 ここを選んだ理由は、”大規模な工業拠点”を作るためだった。

 アストラ星域までは、ワープホールを使って二日間という日数を要する。

 ここで採掘した資源をアイゼンシュタットまで輸送するのは、燃料的にかなり非効率であった。

 ならば答えは一つ。


 現地で加工する。

 

 すなわち、この岩石で覆われた惑星を大規模な工業星に生まれ変わらせる。

 それこそが、この星を開拓地に選んだ理由だった。

 しかし、これを読んでいるものはこんな疑問を持つだろう。


 「いちいち開拓する星に赴いて、住める環境に改造するのか?」


 この疑問に答えるためには、ロンメルのとある発明品を二つ解説しておかなければならない。

 

 一つ目は、”魔力貯めの石板” これは、魔力を蓄積し、必用なときにそれを放出することを可能とする装置である。

 魔力というエネルギーを、「資源」として扱えるようにした時点で、この発明は常軌を逸していた。

 二つ目は、それを応用して作られた”魔法チャージのオーブ” これはさらに異常なものであった。

 放たれた魔法そのものを保存し、任意のタイミングで再発動させる。

 簡単に例えると、映像と言ったところか.........


 この二つを組み合わせることで、何が起こるか?

 答えは、

 環境操作の量産ということが起こるのだ。

 本来であれば、俺の環境操作の魔法と、ガスターの膨大な魔力が合わさることでしか出来なかったことが、この二つの発明品を用いることで、誰でも星の環境を変えることができるようになったのだ。

 この二つの発明品は、後にこの国が爆発的に版図を拡大する最大の要因となる。



 輸送船団が出発してから一週間後、開拓部隊からの報告を受けた俺は、執務室の椅子に腰を深く沈めながら難しい顔をしていた。

 理由は単純、アストラ星域内に、宙賊の拠点が存在していたからだ。

 しかも、すべての資源惑星の軌道上に宙賊の宇宙ステーションがあり、俺達はどの星にも手を出せない状況であったのだ。

 予測はしていたものの、当時の俺は国王として中央政府の機構を整えるのに毎日を費やしていたため、それに対応する暇がなかった。

 まあ、正直に言うとめんどくさかっただけだ。


 しかし、このとき。

 整備された中央政府の機構が、真価を発揮することになる。




 東暦7028年4月26日

 開拓部隊からの報告を聞いた翌日に、参謀総長に就任したグライムから、宙賊を討伐する作戦計画書が届けられたのである。

 

 「いかかでしょう、このような感じで作戦を進めたいと思いますが」


 グライムは、迷いも不安もなく、淡々とそう言った。


 机の上に置かれている作戦計画書の書いてある内容を要約すると、こんな感じだ。


 駆逐艦で敵輸送艦隊への散発的な攻撃を行い、敵主力艦隊を誘引した後、主力艦隊による艦隊決戦を挑み殲滅する。

 極めてシンプル、しかし、良いものだった。


 「いい作戦だ...................」


 素直な感想だった。

 だが、俺の脳内には、同時に一つの疑問が浮かんでいた。


 「だが、敵の主力艦隊と正面から戦えるほどに、うちの艦隊は整っているのか?」


 すると、グライムは不敵な笑みを浮かべて俺の質問に答えた。


 「ええ、問題ありません。 例の”新型艦”も含め、準備は整っています」


 「新型艦」、その言葉に、俺の興味は一気に引き寄せられてしまった。

 正直に言えば、この時点での俺の判断は、冷静と言えるものではなかった。

 グライムへの信頼もあったのだが、それ以上に、「新兵器の実力を見てみたい」という、子供じみた好奇心があったのだった。

 

 「わかった、作戦のことはお前に任せる。 しかし、例の新型艦を使う以上、出るのはガスターとワーグナーか?」


 「ええ、そのとおりです」


 グライムは即座にそう回答した。


 「二人ともかなりの才と、わずか二回ですが実戦経験があります。 哨戒艦の情報からして、我々の艦隊の数のほうがうわまっていますし、二人の油断しない正確なら大丈夫だと思います。 必ずや結果を出すでしょう.............」


 その言葉には、確信があった。


 二日後、アイゼンシュタットに築かれた軍港から、二つの艦隊が出撃した。


 ガスター艦隊、ワーグナー艦隊。

 いずれも、新型艦を含み、訓練を積んだ精鋭艦隊である。

 進路は、アストラ星域。


 宙賊との戦いが再び始まろうとしていた。


 


 

 

 

 

 

 

 

 



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