42話 国家体制の整備
あの会議の翌日、俺達は調査団の意見を聞きながら、この国の政治の改革するべきものを話し合っていた。
前日に掲げられた目標、
「見放された九つ目の勢力圏を統一する」
この目標は、会議の参加者全員の胸に、火をつけていた。
あの時の会議室は、とても熱気に満ちていたことを今でも鮮明に覚えている。
誰もが発言し、構想を語り、この国の未来を描こうとしていた。
その影響か、結果的にこの会議は、十三時間にも及ぶものとなっていた。
その結果、これからのヴァルキリア王国の骨格となる政治体制の、これから改善すべきところを決定するのに至ったのである。
主に、改善、創設するものはこの四つであった。
一、権力構造の確立
二、中央政府機構の整備
三、軍の組織化
四、憲法および法体系の制定
まずは、第一の項目の、権力構造の確立について述べよう。
当時のヴァルキリア王国の政治権力は、一人の人間に集中していた。
それは誰か? そう、俺である。
立法、行政、司法。いわゆる「三権」全てを俺が掌握していたのである。まあいわゆる、独裁体制というものだった。
もちろん当時の時点では、それが問題を引き起こしていたわけではなかった。
しかし、明白な危険性を孕んでいたのだ。
仮に、支配者が誤った判断を下した場合や、暴走したときの場合のことを考えてみてくれ。
そうなった場合、それを止める正攻法の手段が存在しないのだ。
それに、この世界についての知識が乏しい当時の俺に、三つの権力全てを適切に運用できる保証などはなかった。
これはい、いずれ破綻する。
会議でそう判断した俺は、即座にこれの改革を決断したのである。
次に、第二の項目の中央政府機構の整備。
これは、比較的に短時間の議論で、どう改革していくのかが決まった。
決まったのは、各部門を整理し、それぞれの部門を「省」という単位で再編するということだった。
すなわち、専門性に基づく行政機構の確立である。
続いて第三の項目の、軍の組織化。
これも重要な問題だった。
なにしろ、当時のこの国の軍隊は、「軍」と呼べる代物ではなかった。
統制も階級も曖昧、極端に言えば「宙賊と同じ」とでも言うべきだろうか..........................
軍の改革は、元軍人であるグライムに任された。
まあ、いわゆる丸投げである。
そして最後に、第四の項目である、憲法および法体系の制定。
これは、前述の三項目が整備された後に行うこととされ、この会議の段階では、詳細な議論は保留に回された。
さてここからは、一の、権力構造をどう改革したのかを解説しよう。
これを改革するうえで参考にしたのが、グライムの故郷である、”リバタリア共和国”だ。
この国は、八大国の中の一角をしめる大国でありながら、帝国や王国がほとんどのこの世界において、唯一の共和制国家であった。
その統治構造は明確である。
立法権が議会、行政権が内閣、司法権が裁判所、いわゆる「三権分立体制」である。
俺達はこれを元にして、独自の形へと再構築した。
その結果、権力は以下のように分配された。
立法権は、ゲオルクと調査団を中心に
行政権は、俺と、それを補佐する宰相に
司法権は、国民に
どうしてこんな感じになったのか、解説させてもらおう。
まずは立法権。
「法」というものは、高度な知識と経験が求められる。
なので、各国を巡って見聞を広めてきたゲオルク率いる調査団にこれを委ねた。
同時に、調査団のメンバーが、各村の村長だったということもあり、この決定を後押しした。
次に行政権。
これを決めるときは、大きな議論を呼ぶことなく、スムーズに決めることが出来た。
それはなぜか? 答えは、この国が王国だからである。
王が行政の中心に立つことは、皆の認識の中で、当然だと思われていたからだ。
とはいえ、行政の全てを俺一人で担うことは、不可能である。
そのため、補佐役として「宰相」という役職が新たに設けられた。
宰相というものは、事実上の国のナンバー2であるため、その任免権は、王である俺にのみ属する。
初代宰相には、議論の末、カリウスが選ばれた。
これは、単なる俺の任命ではなく、周囲の総意でもあった。
まあ、皆の意識の中にも、「カリウスがナンバー2」という認識が合ったということだった。
ラストに立法権。
これだけは、リバタリア共和国を元にしたのではなく、俺が元いた世界の制度を参考にした。
俺が前の世界で住んでいた「日本」という国には、裁判員制度という制度があった。
この制度は簡単に言うと、国民からランダムに裁判員が選ばれ、裁判の審理に参加し、判断を下すという制度である。
この仕組みを取り入れることで、国家権力の一部を国民に残す。
それが、司法権を国民に渡した目的であった。
当時の俺は、前の世界で住んでいた国が民主国家だった影響もあってか、少しは国の権力に国民の力を残したかったのだ。
まあ、こんな感じでこの国の大まかな権力構造は確定された。
この体制は、「王国」としての時代において、しっかりと機能を果たし続けることになる。
しかし、やがてこの国が「帝国」と変貌したことにより、この権力構造は変わっていくのだが..............
それは、まだ先のお話である。
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