39話 辺境の覇者をかけた戦い
東暦7027年6月12日
この日、俺達の艦隊は再び惑星Da3953を目指していた。
前日に哨戒艦から「敵艦隊を補足」という報告を受けていたからである。
このときの俺達の艦隊戦力は、軽巡洋艦六隻、駆逐艦八隻。
これは、当時の俺達の持ってい全戦闘艦だ。
まあ、出撃してきた敵艦隊の陣容からして、全戦力を持ってくるのは当然のことだった。
哨戒艦から送られてきた敵艦隊の編成は、次の通りである。
戦艦一隻、軽巡洋艦七隻、駆逐艦二隻
その内容は、事前にグライムがもたらしていた情報と、ほぼ完全に一致していた。
「お前の教えてくれた通りの内容だったな」
出撃前、俺はそう言って駆逐艦八隻をグライムの指揮下に入れた。
このときの駆逐艦部隊の指揮官は、ワーグナーとリアルヌであった。
だが、このときのワーグナーとリアルヌは、宇宙での戦い方を勉強し始めて一ヶ月半ぐらいしか経っていなかった。
遠距離から打ち合う軽巡洋艦の指揮ならまだしも、駆逐艦は違う。
駆逐艦は、敵艦隊に肉薄して戦うために、瞬時に陣形を変えながら戦うものだ。
そこでは、高度な判断力と経験が要求される。
正直に言えば、このときの二人には荷が重い。
なのでこのときの俺は、駆逐艦部隊を経験豊富なグライムに任せる決断をしたのだった。
「敵艦を目視で確認。こちらの主砲有効射程まで、あと五分」
午前8時49分、旗艦アドラーの艦橋に、ロボットの無機質な音声が響き渡った。
モニターには、すでに敵の艦隊が映し出されていた。
「本当にあんなんと戦うのか...........................................」
俺は、思わずそう呟いた。
モニターの中央に映し出されていたのは、全長千五百メートルほどの、巨大な戦艦だった。
まるで、それは宇宙そのものを威圧するかのように悠然と航行していた。
まともな感覚をしている者であったら、こんなものを見たら、当時の俺と同じような言葉を呟くだろう。
それだけ、あの巨艦は恐れるものであったのだ。
だが、このときの俺の気持ちは、恐れよりも覚悟の方が勝っていた。
理由は単純だ。
ここでこの艦隊を葬っておかなければ、「俺達の村は、発展の道からかなり遠さがる」と、わかっていたからである。
「これより敵艦隊に向けて突入する! 絶対に勝つぞ!」
そして、敵艦隊を目の前にした俺は、覚悟を決めてそう叫んだのである。
8時52分、最初に砲火を開いたのは宙賊の艦隊の方であった。
敵の戦艦が、その大口径砲の射程を活かして遠距離砲撃を開始したのである。
このときの両艦隊の陣形は、互いに正面で対峙する陣形を取っていた。
たが、一点だけ違うところがある。
それは、グライム率いる駆逐艦部隊を、艦隊の側面に展開させていたことだ。
◯ ◯ ▲友軍
◯ ◯ ◯宙賊
◯ ◯
↓ ↓
▲ ▲ ↑ ↑ ▲ ▲
▲ ▲ ▲ ▲
▲ ▲
▲ ▲
初撃に敵の戦艦が放った砲火は、命中しなかった。
これは、前回の戦いと同様、敵艦の命中精度が低かったからであろう。
そのおかげか俺達の艦隊は、敵の戦艦の三度目の攻撃までに一隻も被弾することがなく距離を詰めることが出来た。
「撃て!!」
8時54分、敵艦を主砲有効射程に捉えたことを確認した俺は、中央に展開している軽巡洋艦六隻にそう命じた。
すぐさま、軽巡洋艦六隻が一斉に砲撃を開始する。
初撃は、敵の戦艦に二発の命中弾を与えた。
しかし、シールドがしっかりと備わっている戦艦にとっては、そんなものは何もきかなかった。
当然、速度を変えることなく、俺達の艦隊に向けて突っ込んでくる。
「全艦、後退を開始しろ!」
すぐさま、俺は軽巡部隊に後退を命じた。
「なぜ初撃を放った後、すぐさま後退したのか?」これを読んだものは大体がそう疑問に思うだろう。
このときの俺は、敵艦隊の動きを見て、あることを感じ取っていたのである。
俺が感じ取っていたもの、それは、敵の司令官が力任せに押してくるタイプだろうということだった。
実際、このときの敵艦隊は俺達の艦隊の交代を見るや否や、すぐさま追撃を開始した。
もし、このときの敵の指揮官が軍才や優れた経験を持っていたら、警戒してなんかの行動を取ったはずだろう。
しかし、このときの敵の指揮官は俺達の艦隊が後退するのを見て、おそらくだが愚かにも「勝った!」とかでも思ったのだろう。
俺達の艦隊に一撃もダメージを与えていないのに。
「出番だ、グライム」
8時56分、俺がそう告げた瞬間、左右に布陣していた駆逐艦部隊が敵艦隊に向けて一斉に突入し始めた。
このときの敵艦隊の陣形は、乱雑に配置された艦が俺達の艦隊に我先に押し寄せる感じであった。
各艦が我先にと前進し、統制など存在していなかった。
▲友軍
◯ ◯宙賊
◯ ◯◯
↗ ◯ ◯↓ ↖
▲ ▲ ↗ ↓ ↖▲ ▲
▲ ▲
▲ ▲
▲ ▲
▲ ▲
↓ ↓
このタイミングで、この戦いの勝敗は決していた。
もし、宙賊たちが防御向きの輪形陣などを取っていたら、結果は違っていたかもしれない。
だが、こいつらは目先の欲と慢心にまんまと踊らされてしまい、破滅の道を進んだのだ。
8時57分、先陣を切っていたワーグナーの座乗する駆逐艦D01が、敵の軽巡洋艦に対してミサイル八発を放った。
この世界の軍艦には、シールドという防御兵器が備わっている。
このシールドという兵器は光学兵器を、エネルギーの盾で中和して防ぐという仕組みだ。
エネルギー量が半端ない戦艦にとって、それはかなりの防御力を供給し続ける。
一見すると、「強すぎだろ!」と思うだろう。
しかし、どんなものにも弱点というものは絶対に存在する。
このシールドも、「光学兵器を防ぐことはできても、実体弾を防ぐことはできない」という弱点があった。
となると当然、実体弾を防ぐためには装甲を積むしかない。
しかし、その装甲が薄い軽巡は...............................
ミサイル八発をもろに受けた敵軽巡は、あっけなく爆散した。
これを皮切りに、各駆逐艦が次々と敵艦に向けて実体弾での攻撃を開始した。
その攻撃は、陣形がめちゃくちゃな敵艦隊にとって、まさに悪夢そのものだった。
高速で動き回りながら、至近距離で実体弾を叩き込む。
それだけでもきついのに、敵艦隊は同士討ちの危険性というものまで考慮しなければいけなかった。
8時59分、七隻いた軽巡の内、六隻の軽巡が轟沈ないしは炎上していた。
また、敵の戦艦は沈んでいなかったものの、機関部に実体弾を叩き込まれまくって、航行不能に陥っていた。
「いまだ、敵戦艦の上部構造物を蜂の巣にしろ!」
俺が命じるより早く、ガスターがそう命じた。
それは、敵戦艦にとっての処刑命令であった。
次の瞬間、軽巡六隻から一斉に撃てるだけの実体弾やレーザー砲が放たれた。
そして、その攻撃の嵐は無慈悲にも敵戦艦の上部構造物に次々と突き刺さった。
タフな戦艦なので、沈むことはない。
だが、艦橋、センサー、武装、機関などの全てが破壊された戦艦は、ただの鉄の塊となっていた。
戦闘時間、わずか八分。
時間にしては短い時間だ。
だが、その八分間で俺達は、宙賊の艦隊を完膚なきまでに叩き潰したのである。
スマホで見ている方は、見辛いと思います。
すみません。




