18話 いきなり詰んだかも
「起きて.........」
まったく誰の声だか、人が気持ちよく寝ているってのに。
それにしてもいい寝心地だ、ここは天国か?
「起きてください!グレース様!」
その声を聞いた俺はすぐに飛び起きた、そして声のした方に目をやると近くにはカリウスが立っていた。
前もこんなことがあったような? いや、そんなことはどうでもいい。
なにせ俺たちの乗っていた宇宙船は不時着してしまったのだから。
艦橋の窓から外を確認してみるも、見渡す限り砂漠だった。
ヤバいことは分かっているが、とりあえず現状がどうなっているかをカリウスに聞いてみる。
「今どんな感じなんだ?」
すると、カリウスはため息をつきながら口を開いた。
「最悪ですよ.......なにせ、オアシスを上空から探す予定だったのに、オアシスの場所もわからないままこんな砂漠のど真ん中に落ちたんですから......」
カリウスが言うことは、俺の思っていることは全く同じだった。
だが、俺たちにはまだ希望があった。
普通の人間だったらよほどの準備をしていない限り、ここで詰みだ。
だが、幸いにも俺には環境操作の魔法がある。
環境操作の魔法で水を出すことはまだ試したことはないが、ワンチャン希望はある。
そう思った俺は、宇宙船の外に出た。
幸いにもこの星には大気がある、なので宇宙服がなくても外に出ることは可能だ。
しかし暑さはハンパない、夏には四十度を越える灼熱地獄の日本に住んでいた俺でもこれはこたえる。
そんな状況で俺は、カリウスに見守られながら環境操作の魔法を使おうとしていた。
「頼みますよ.........」
カリウスがそう言いながらとても真剣な顔でこちらを見ている。
普段は笑っているカリウスだが、さすがにこの状況では笑えないようだ。
もちろん、俺も真剣だ。
「行くぞ!」
俺はそう言うと、心の中で以前草原を出したときのように、水源ができるようにこれまでで一番強く念じた。
しかし、あの時と同じように緑色の炎らしきものがでてくる様子はない。
「終わった...........」
こうなってしまっては、こう言うしかない。
詰みを確信した............. だがそのときだった。
突如、あの時の緑色の炎が俺の手前の砂場を覆った。
しかも、あの時の炎よりも格段に広範囲だ。
そして、俺たちの前には巨大な池が生成された。
「まさかこんな都合よくなるとは.......!」
カリウスが驚きながらそう言うのも分かる、だいたい俺たちはこういうときに失敗するからだ。
実際、俺も驚きだ。
まあ、とりあえず俺たちはいきなり詰みになるのを回避したのだった。
しかし、環境操作の魔法で生活できる環境を作ることは可能であっても、こんな砂漠の惑星では人もいるのか分からない。
これからどうやって楽園となる国を作るか、途方もない考えをしながら、俺たちは二日かけて生活できそうな環境を整えた。
二日間の内に環境操作の魔法をフルで使ったおかげで、砂漠のど真ん中に立派な森と湖ができた。
しかし、拠点となる家はいまだに壊れた宇宙船だ。
それに食糧も持ってきた物しかないので、育てたり、採取したりしないといけない。
環境操作の魔法で木の実がなる木を生み出せばよいと思うかもしれんが、先日に試してみたら木を生み出すことはできても、実は待たないと実らないということだった。
「こっからどうするんだ?」
「宇宙船が壊れているんでとりあえず周辺の探索ですね、あと食糧の生産もです」
今は、今後どうするかの作戦会議の真っ最中だ。
だが、二人ともこの星で一生を終えるのかもしれないという漠然とした不安があるので空気が重い。
「こんな星に人がいる可能性はあるか?」
一応聞いてみた、だがカリウスから返ってきたのは「たぶん誰もいない」ということだった。
そりゃそうだ、こんな砂漠の惑星に住んでいる物好きなんているはずがない。
さらに、空気が重くなってしまった。
俺は、この空気感に耐えられずとりあえず、艦橋から出た。
そして、そのまま艦橋を出た横にある外に続く扉を開けた。
艦橋のある位置はそれなりの高さだ、砂漠の夜ということもプラスされて、扉を開けると半端なく寒かった。
それにしても夜の外はなぜか落ち着く、なにも考えなくなるような感覚になるからだ。
そして、そのまま俺は漆黒の夜の世界を見つめる。
すると、俺の目には不思議な光景が目に映った。
遠くの方で炎のようなものが光っているのだ、しかもあきらかにこちらの方に向かってきている。
それを見た俺は、すぐに艦橋に駆け込んだ。
そして、艦橋に入るとすぐに口を開いた。
「カリウス!炎らしきものがこっちに向かってきてるぞ!」
その言葉を聞いたカリウスは、まさかそんな、的な感じの顔で言ってきた。
「本当ですか、それ?」
「いいから、早く来い!」
とりあえず、カリウスの腕を引っ張って外に連れていく。
すると、カリウスもようやく事態を本物だと思ったようで、驚きながら口を開いた。
「あれ、絶対人ですよ!」
その言葉を聞いた俺は、確かに心が高揚した。
しかし、俺たちを攻撃してくるかもしれない。
そんなことを思いつつも、俺たちは炎を確認するための準備をした。




