16話 宇宙へ
もといた研究室に戻されていた俺は、結局なにがあったのかわからないまま、呆然と立ち尽くしていた。
「どうしたんですか?」
俺はすぐに我に帰る、すぐに声の方を向くとカリウスが不思議そうな目でこちらを見つめていた。
「カリウス!今、真っ暗な空間に飛ばされなかったか?!」
「特になにもなかったですけど......何かあったんですか?」
やっぱりだ、おそらくあの真っ暗な空間に飛ばされたのは俺だけで、こっちの一瞬の時間で俺は、あの出来事を経験したということだ。
俺は、さらにわけがわからなくなって悩んだ。
しかし、結局悩んだ末に至った結論は、俺より遥かに魔法に詳しいであろうカリウスに聞いてみようということだった。
俺はカリウスに今起こった出来事を、最初から最後まで話した。
そして、俺がすべて話終えたときにカリウスは悩んでいるような厳しい顔で口を開いた。
「つまり、グレース様は話に出てきた大魔法ってやつを手に入れたっていうことですよね?」
「そうだ、なんかわかるか?」
すると、カリウスはさらに厳しい顔で話を続ける。
「本来、魔法ってのは先天性のもので後天的に手に入れることはできないんですよ.....」
もしかしたら、この星を脱出した後に使い物になるかもしれないと思っていた俺は、気を落とした。
俺が気を落としたことに気づいたカリウスも話しかけるのが気まずそうな感じだった。
結局その後救難信号のもとを探したが、特に誰もいなかったので、俺たちは気まずい空気感のまま研究所の外に出た。
なんか話しかけようと思っても話しかけられない、そんなことを思っているとカリウスが口を開いた。
「グレース様、もし魔法が本当に受け渡されていたなら魔法が使えるはずです!試してみませんか?」
カリウスがそう言うと、俺たちを覆っていた気まずい空気感は晴れた気がした。
俺は、うなずくとカリウスに言った。
「わかった、少し離れていてくれ」
俺は、環境操作の魔法がどのようにしたら発動するか考えた。
しかし、魔法についてあんまり詳しくない俺は、どのようにしたら発動するか検討もつかない。
すると、俺から離れたカリウスが言った。
「やり方は、精密の魔法と同じですよ!」
その事を聞いた俺は、精密の魔法を発動するときに念じるように、近くの岩場に草が生えるように念じる。
(これが考えられる最善の手だ、頼むぞ)
すると、あの時見た緑色の炎が岩場を覆っていく。
そして、急に炎が消えたと思ったら、突然、岩場全体を鮮やかな緑の草むらが覆った。
それは、なんとも神秘的な光景だった。
本当に使えると思っていなかった、俺は顎が外れそうなぐらいの衝撃を受けた。
カリウスの方を見ても尋常じゃないくらい、驚いていた。
「本当に魔法を手に入れていたとは思いませんでした.......」
カリウスは驚きながらも、冷静にそう言った。
「俺も使えるとは思っていなかったよ」
俺がそう言うとカリウスは笑顔で言った。
「さすがグレース様です!」
「しかし疲れたよ、そろそろ帰るか!」
俺がカリウスにそう言うと、カリウスも賛成してくれたので、俺たちは宇宙船に向けて歩いていった。
あの後宇宙船に戻った俺たちは、その日の夕方に拠点に帰還した。
実に四日間に渡る大遠征だったので、拠点に帰還した俺たちは、ものすごい疲れから寝て、寝て、寝まくった。
そして、二人とも目を覚ましたのは翌日の夕方だった。
「これからどうします?」
拠点のテーブルの向かいに座るカリウスは、開口一番にそう言った。
そして淡々と話を続ける。
「遠征前は、宇宙に脱出した後に有人惑星にいく予定でしたが、グレース様がこんな魔法を手に入れたとなるとバレたらヤバいと思うんですよね........」
カリウスが魔法は後天的には手に入らないと言っていたので、バレたら大変なことになることは俺でも安易に予想はできた。
有人惑星にいくのも、危険だとなるともう打つ手がないと思っていると、頭の中である子供じみた考えが浮かんだ。
言ったら笑われそうな内容だか、試しにカリウスに言ってみる。
「なあカリウス、こんな便利な魔法を手に入れたんだし、有人惑星に行くのが危険だったら俺たちで国を作ればよくないか?」
今思い返すと、本当にバカバカしいことを言ったと思う。
しかし当時の俺は、前の世界で完全に疲れ切ってしまっていて自由に生きたかったのでそう言ったのだ。
これはやらかしたと思っていると、カリウスは笑い出した。
「やっぱり、グレース様ですね!」
カリウスは笑いながらそう言うと、興奮気味で言った。
「やりますか、私たちの国作り!」
「ああ!」
正直、心の中ではこんな子供じみた発想が、カリウスに通るとは思っていなかった。
けれども、カリウスが賛成してくれたことによって俺たちの国を作るのが可能になった。
まさしくこのとき、この空間には新たな国が胎動していた。
あれから俺たちは、この星をでた後に必要な物資の調達や、情報の収集を行った。
しかし、使えそうな物資は古すぎてどうするかもわからない、情報に関しては、かなり探したものの何故か不気味なほどに、どれも意図的に消されたあとがあったので、集まらなかった。
そして、それと並行して環境操作の魔法をしたかったのだが、なぜか環境操作の魔法を使ったのを皮切りに魔法が一切使えなくなってしまったので、全く練習することができなかった。
魔法が使えないままこの惑星で暮らすのはかなりきつい、なので俺達は、準備が不十分な中でも旅立つことを決意したのだ。
そして、大遠征から約半年が立った頃、俺たちはまだ早朝で寒空の外に立っていた。
「いざ離れるとなると案外寂しいですね.....」
カリウスは、暗い中で拠点を寂しそうに見ていた。
カリウスにとっては何年間も過ごした拠点だ、寂しいはずがない、そんなことを思っているとカリウスが声をかけてきた。
「さて、そろそろ行きますか!」
カリウスの顔は、決意に満ちた顔だった。
そりゃそうだ、俺たちはこれからとんでもないことをやろうとしているんだ。
俺も、改めてやろうとしていることのすごさを確認して決意を固めた。
「いくぞ!」
俺がそう言うとカリウスは、カリウスは手に持っていた宇宙船操作用のリモコンのボタンを押した。
すると、みるみるうちに階段が宇宙船から降りてくる。
そして、階段が完全に降りるとカリウスは笑顔で言った。
「さあ、新時代の幕開けです!」
俺は、カリウスが艦橋で宇宙船の発進準備をしているのを見ていた。
俺もいつかカリウスに教えてもらおうか、そんなことを思っているとカリウスが口を開いた。
「発進準備完了です!」
いよいよかと思い、俺は深呼吸をする。
そして、口を開いた。
「発進だ!」
そう言うとカリウスは、宇宙船の制御盤を操作した。
すると、宇宙船は静かな音で上がっていく。
夢にまで見た宇宙だ、ただ初めてなので恐怖もある。
宇宙船はどんどん加速していく、まだ二分ぐらいしかたっていないのにすでに高度計には二十八キロと表示されていた。
全くもって異世界の技術には驚かされるばかりだ。
そして、発進から五分もたつと高度計には94キロと表示されていた。
すると、これまで話していなかったカリウスが口を開いた。
「行きますよ!」
そして三十秒後、高度計は百十キロを記録した。
そして、三十分ぐらい飛んだ後、だんだんと宇宙船は減速していく。
いや、そんなことはどうでもいい。俺たちの目は数多の星が輝く、黒き宇宙に釘付けになっていた。
初めての宇宙に、大盛り上がりすると思っていたが案外静かなものだった。
幼少の頃からの夢が叶った時の感想は、「綺麗」ただ、それだけだった。
すると、宇宙に釘付けになっていた俺にカリウスが声をかけてきた。
「やりましたよ!」
その言葉を聞いて、俺は我に返る。
俺たちは宇宙に脱出を果たしたのだ。
「ああ!やったな!」
俺たちは大盛り上がりで祝った。
まあ、とりあえず俺たちは、このクソみたいな惑星を脱出したのだった。
東暦7026年11月16日、始まりの惑星を脱出




