15話 救難信号を追って
俺たちは救難信号を探知した後、全速力で救難信号が示す場所に向かっていた。
一時間ほど経っただろうか、それまで黙って運転していたカリウスが、口を開いた。
「おそらくここら辺です!グレース様もなんかないか、辺りを探してください」
操縦席のモニターには、救難信号を示すマーカーが確かに光っていた。
俺は、カリウスの指示通りに外を見回して、救難信号が発せられていそうな場所を探す。
やがて、外を少し見回していると、荒野にぽつんと佇んでいる廃墟を俺の目が捉えた。
「あれじゃないか?」
俺はすぐにカリウスに報告する、すると、カリウスはこちらに来て建物を確認した後に、こう返した。
「ここら辺にあれ以外の建物は無いんで、おそらくあれですね」
カリウスはそう言うと、操縦席に戻り、再び操作をする。
するとどうだろう、あっという間に宇宙船の高度が下がり、地面に正確に着陸した。
「じゃあ行きますか!!!」
宇宙船を着陸させたカリウスは、準備を整えるとワクワクした気持ちを軽く外に放ちながらそう言った。
「ああ、行こうか!!!」
ちなみにこの時の俺も、カリウスと同じく、ワクワクした気持ちを外に軽く放っていたと思う。
廃墟の入口についた俺は、思わず目を見張った。
建物の形状は、前世にあったスーパーマーケットという建物にそっくりな形をしていた。
しかし、あの建物はそんな形をしているのにもかかわらず、入口に「古代文明研究所」と書かれていた。
研究所と建物のギャップに驚いたのもそうだが、「古代文明研究所」と書かれている建物が、こんなところに自然とたたずんでいることに驚かされたもんだ。
俺達は、早速中に入ろうとする。
しかし、電源が死んでいるようなので、入口のガラスで出来ているガラスの扉は動かない。
「少し離れてください!」
扉の様子を確認したカリウスは、俺にそう言った。
俺が扉を開けれそうではなかったので、俺は素直にガラス扉から距離を取った。
それを確認したカリウスは、次の瞬間、思い切りガラス扉に蹴りを入れた。
するとどうだろう、カリウスの蹴りは、ガラス扉を一瞬にして粉砕してしまった。
「開きましたよ!」
カリウスは自信満々にそう言う。
その光景は、まさに映画のような冒険をしている感じのワンシーンであった気がする。
廃墟の中に入った俺達を出迎えたのは、案の定、暗闇だった。
しかし、経験を積んだ俺がそんなことを想定していないはずがない。
俺は自信満々に、宇宙船から取ってきた懐中電灯をカバンから取り出した。
そして、その勢いのまま懐中電灯のスイッチを押す。
すると、俺が前の世界で見てきた懐中電灯の光とは比べ物にならないほどの光が、懐中電灯から勢いよく放たれた。
一瞬にして、当たり一面が生気を帯びたように、色を取り戻していく。
少し辺りを確認すると、どうやら俺達は、ロビーらしき場所にいるようだった。
ロビーとは、打ち合わせとかをする場所である。
ということは当然、施設全体を確認できる地図があるはずだ。
案の定一分後ぐらいには、カリウスが壁に貼られている地図を見つけてきた。
「やっぱりカリウスはものを探すのが早いな!」
俺は、カリウスの行動の速さをたたえて、そんな他愛のないことを言った。
しかし、カリウスはそんなことでも喜んでくれる。
カリウスは、本当に最高の従者で最高の友人だ。
そんなことを言いつつも、俺たちは地図を確認する。
この建物の大まかな構造は、大きな通路があってその横に研究室がいくつかあるという感じだ。
俺たちは、早速地図にしたがって大きな通路を歩いていく。
懐中電灯で明るくなっているものの、廃墟の研究所というところなので、微かに不気味な雰囲気があって、なかなかに怖かった場所であった。
少し歩くと、地図に書いてある通りに研究所らしき部屋に通じる扉がいくつも見えてきた。
俺は試しに一番近くにあった部屋の扉を、おそるおそる開いた。
扉を開けた先には、真っ暗闇と、ジメジメした湿気特有の臭いが待っていた。
俺はライトを照らす。
すると、暗闇から現れたのは、大量の本棚と机に積まれている書類らしき紙の束だった。
「見た感じ、この部屋は資料室らしい」、そんなことを頭の中で考えつつ、俺は机の上に置かれている紙の束を適当に一つ適当に手に取った。
一番最初の紙には、「開拓記録」とだけ書かれていた。
この星についてなにかわかるかもしれないと思った俺は、期待の気持ちで紙をめくる。
二ページ目には年表らしきものが載っている。
年表の最初に載っていたのは言葉は、「東暦6517年 惑星Da3952に入植を開始」というものだった。
しかし、ここで一つの単語が疑問として浮かんでくる。
「東暦」という初めて見る単語の意味が気になった俺は、カリウスを呼んだ。
近くの本棚を適当に漁っていたカリウスは、急いでこちらによってくる。
「ここに書いてある東暦ってなんなんだ?」
カリウスはそう聞かれると、とてもシンプルな回答をした。
「東暦はですね、この世界の暦です!」
向こうの世界の「西暦」と同じような物、カリウスから聞いたことを、そのように解釈しつつ、自分の見ている資料をカリウスに見せる。
カリウスは資料を見ると、すぐさま驚いた顔になり、こう言った。
「どうやら、この星が放棄されて九十年も経っているようですね..............」
カリウスの目は、年表の一番下にある「東暦6936年 寄生生物の脱走により開拓地を放棄」と書かれているところを捉えていた。
俺は、頭の中で状況を整理する。
カリウスが90年前と言ったということは、おそらく今は東暦7026年ぐらい、それと寄生生物の脱走と書かれているが、これはミュータントのことを指していそうだ。
状況を整理した俺は、口を開こうとしたが、先にカリウスが口を開いた。
「こんなところで、道草食ってないでさっさと救難信号の発信源を探しましょう!」
「そういえば、そうだった!」
俺は、そう言われてすっかり忘れていた救難信号のことを思い出した。
まあ、九十年も経っていれば、誰もいなそうだが............
俺は紙の束を机の上に再び置いてカリウスを連れて部屋を出た。
部屋を出ると、カリウスは言った。
「宇宙船で確認してきたんですけど、どうやら救難信号は地下から発信されているらしいんですよ.....」
「だが、地下は地図には載っていなかったぞ?」
俺がそう言うとカリウスは言葉を返す。
「もしかしたら隠し扉的なやつがあるんじゃないですか?」
「隠し扉か.......」
たしかに、ゲームのダンジョンとかだとこういうところに隠し扉的なやつがあるのは定番だ。
しかし、ここは現実だからそううまく見つかるはずが無い。
そんなことを思っていると、通路の奥の方を見ていたカリウスが言った。
「あれ、階段じゃないですか?」
俺はすぐに目をやる、すると階段らしきものがあった。
(あったじゃん・・・)
あまりにもすぐ見つかったので、俺はポカンとしていた。
しかしまあ、早くに見つかったのはよろしいことだ。
階段を下ると、俺たちが目にしたのは異常な光景だった。
地下の研究室らしき場所だったそこは、明らかに人為的に爆破されたような感じだった。
あまりの不気味さに俺は身震いをして行くのを躊躇った。
横を見るとカリウスも行きたくなさそうな顔をしていた。
そのときだった、俺は突然奥の方で緑色のなにかが光ったのを目にした。
「今の見えたか!?」
「はい、なんか光りました!」
俺たちは、急いで光の見えた方に行く。
幸いにも、床はそこまで壊れていなかったので走ることができた。
三十秒ほど走ると、俺たちは光が光った場所に着いた。
しかし、そこにはなにもない。
俺は、勘違いだったのか?とも考えたが、カリウスも見たと言っていたので、訳がわからなくなった。
そのときだった、
「大..........」
突然、誰のかわからない声が、頭の中に響いてきた。
そして、気付いたら時には、俺は謎の周りが黒色の空間にいつの間にか立っていた。
周りを見渡すがカリウスがいない。
俺は戸惑いつつも、暗闇にたいして、救難信号の主なのか質問する。
すると、暗闇からこのようなことが返ってきた。
「大魔法の器になりしものよ、よくぞここへ来た....」
いきなり訳がわからない内容だった。
「大魔法?なんだそりゃ?」
当然のように意味がわからない俺は、そんなことを答えた。
「いちいち質問をするな!まずは話をちゃんと聞け!」
すると、声の主は声を荒げて、こう言い返してきた。
なんとふざけた態度だろう、救難信号を送ってきたくせに...........
しかし、そんなことでキレるほど、俺は子供ではない。
「わかったわかった、黙って聞くよ」
俺は、なんなんだこいつ?と思いつつ、話を聞くことにした。
声の主は淡々と話を続ける。
「お前は、この宇宙によって導かれた大魔法の器だ......
私は、破滅の日からこの力に耐えうる器を待っていた.......」
破滅の日?大魔法?俺は、訳がわからずただ言葉の意味を考えるしかなかった。
さらに言葉の主は、話を続ける。
「導かれし器よ、今からお前に大魔法を授けよう.....」
その言葉に俺は驚いてしまい、思わず口を開いてしまった。
「魔法を授けるだと?!」
「ああ、今からお前に授ける魔法は 環境操作の魔法
だ.......」
環境操作と言われても、俺はどんな魔法かも検討がつかなかった。
「どうやらどんな魔法かイメージできてないようだな」
自分の考えを見透かしているようなに言ってきたので、俺はさらに動揺する。
すると声の主は俺に、こんなことを言った。
「お前がもといた世界の言葉で説明すると、テラフォーミングの魔法だ。」
俺がもといた世界の言葉を知っている声の主に今にも質問したかったが、俺はいったん最後まで、声の主の説明を聞くことにした。
「この魔法は簡単に言えば、星を自由に改造することができる、それだけだ。」
ずいぶんと雑な説明だと思いつつ、俺は口を開く。
「魔法のことはわかったが、なんで俺なんかにこんな凄そうな力を俺にくれるんだ?」
少しの沈黙があったのち、声の主から返ってきたことはこうだった。
「それは、お前がこの世界で生きていけばいずれわかることだ、私が今語ることではない。」
そう言うと暗闇の空間から、緑色の炎のようなものが飛んできて、俺の身体に纏わりついた。
そして、また声が聞こえた。
「この魔法は磨けば磨くほど、別の物へと変化を遂げていく」
炎は俺の身体を包んだ、そして次の瞬間
「未来を頼んだぞ......」
この声が聞こえたと思ったら、俺はもといた研究室に戻されていた。




