71
修羅場が訪れようとしている。
「お前…学生か…?」
「ち、違います…」
「じゃあ職業は?」
「え…そうですね…」
シンは滝のような汗を流しながら、それでも兄から目線を離さない。
「…ハンター…かな…?」
「ハンター!?」
兄が飛び退く。
「猟師だと…じゃあ害獣とかを…」
「害獣より魔物のほうが正しい気が…」
「ま、魔物レベルだと…!?」
兄とシンの間で大きなすれ違いが発生している。
双子は笑いを堪えながらその様子を楽しみ、ルチアは興味がなさそうに台所へ行く。
テツはまだうずくまっている。
「こんなもやしっ子がハンター…」
「いやいや、外見も成績も関係ないですよ」
「こいつ…相当の手練れと見た…」
私は何も言わずただ呆れる。
「そんなに強いならハルカを守ってもらえるかも…?いやしかし…」
「…お兄さん」
「お兄さんと呼ぶなー!」
シンが殴られる。なんか不憫だったりする。
「な…ナユタさんっ…」
「何だ」
頬を押さえながらも体勢を立て直し、兄と向き合うシン。
「俺…ハルカもナユタさんもがっかりさせませんから…」
「そんなこと口先だけならいくらでも言える」
私のほうからは兄の表情は伺えない。
「確かに…絶対守るとかそういう言葉は…その時にならないと真意はわからない…でも…」
シンは真っ直ぐに兄を見つめる。
「ハルカが好きだってこと…大事だって思ってること…信じて欲しいです」
「…」
室内の全員が静かに2人を見守っている。
「…ハルカ」
兄は背を向けたまま私を呼ぶ。
「お前はこいつのことが好きなのか?」
「うん…」
「信じられるのか?」
「もちろん」
彼は息を吐く。
「…そうか…なら俺も信じよう」
「…!ありがとうごさいます…!」
シンが頭を下げる。
それを兄は頭を掻きながら上げさせる。
「ただし」
「…?」
「手を繋ぐまでだからな」
「…あはは…」
私とシンは兄の顔を直視出来なかったのだった。




