動くビーンくん
ひと気の無い路地。
小さく歌を口ずさみながら歩くルチア。
「お前、そんな可愛い歌も歌えるのな」
「…別に、見た目で決まることじゃないだろ」
いつの間にか黒が後ろを歩いている。
「偏見は人を不自由にする。俺はまた少し自由になったようだ」
「…知ってたんだろ、リョウトがいること」
彼女は振り向かないで歩き続ける。
「まあな、結局誰かさんはこんなことになってしまった訳だけど」
「…花火見て来いよ」
彼女の歩幅が広がる。
「お前さんは?」
「いいよ、今の俺がいても心配かけるだけだし」
「…ったく…」
歩くペースを上げても、黒はやすやすと追い付いてくる。
「仕方ねえな、今夜は俺がビーンくんになってやろう」
「…は?」
ルチアが立ち止まる。
黒は彼女をすり抜けていく。
「抱き枕が無いと寝れないんだろ?」
「ばっ…!んなわけねえだろ!」
必死に歩調を合わせるルチア。
「じゃあビーンくんは俺が貰うから」
「え、えええええ」
「ルチアちゃんサヨナラー」
ビーンくん越しに棒読みする黒。
「ほ、ホントに持ってくのか…?」
「ダメなのか?」
ルチアは唸る。
「バイバーイ」
「う…」
黒と抱き枕は部屋を出て行った。
コンコンコン。
黒の部屋のドアが叩かれる。
「はいはい、何か御用で?」
「…」
ドアの前にはルチアが立っている。
「…ばか、しね、地獄より酷いとこにおちろ」
「…他に言いたいことは?」
彼女は黒に頭突きする。
「ビーンくんを返せ…」




