新しい世界で 101
「あ…」
ルチアの腹部から血に染まった鋭い剣先が飛び出している。
「な…再生能力があったなんて…」
"レギオン"の握る剣がルチアの身体から引き抜かれる。
彼女は張った糸が切れたように膝をついて倒れ、ヨタカに受け止められる。
「ルチア…」
「う…っああああああああ!」
ヨタカの腕の中で狂ったような悲鳴が発せられる。ノラが駆け寄り、悲鳴の主に諭す。
「落ち着いてください!貴方に痛みは届いていないはずだ!」
このゲームでのダメージは痛覚にまで至らないため、プレイヤーには一切痛みが生じないはずである。
だが彼女の反応は尋常でない。
「しっかりしなさい!」
「ルチア…!それは現実ではない…!」
「…"現実"…じゃない…?」
急に彼女が大人しくなる。
「現実じゃない…じゃあこの痛みは…?」
4人を見下ろす神の塊が再び発光し始める。
「また来る!早く逃げなきゃ!」
「ルチアさん!」
ルチアは目を閉じる。
「…そう…この世界を"現実"にしてしまえばいい…」
「何を…」
激しい光が皆の視界を遮断する。
「…え」
"レギオン"は爆発していない。
その代わりに塊の中心に小さな穴が空いている。
その穴は急激に広がり、"レギオン"は肉片を撒き散らしながら破裂した。
「るちるちなの…?」
神がいた場所にいつの間にかルチアが立っている。
赤いギルドナイトは黒く染まり、手には柄も刃も黒い大鎌が握られている。
「貴方…もしかして…」
「大丈夫だ。意識もちゃんとあるから」
彼女は笑顔を見せながら、左手に握っていた"レギオン"の魂をヨタカに渡す。
「俺はいらないから」
「…」
じっとルチアを見つめるヨタカ。
ルチアは心配そうなその頭を優しく撫でる。
「街には戻らずにこのまま落ちるよ」
「…今度来たら旅団に顔出しなさいよね…」
黒いギルドナイトは手を振る。
その場に3人だけが取り残されていた。




