落ちた流れ星
黒に引かれて道場の中に入る。
「おい…黒っ…」
「…悪い」
黒がルチアの手を放す。
稽古場は静まり返っている。
「なあ…お前はアイツのこと好きなのか…?」
彼は無表情のまま問う。
「…前は…確かに好きだった…」
「今は?」
ルチアは難しそうな顔をする。
「いつの間にか切れた縁だしな…今はそれどころでもないし…」
彼女は黒をしっかりと見据える。
「やらなきゃいけないことがある。それをやりとげるまでは誰かを好きになることもできない」
「それは…そんなに大切なことなのか…?」
「そのために自分がここに生きている気がするんだ」
光り輝く流れ星。
黒にはルチアが眩しく映る。
彼女が宿す大事な思い。それは彼女自身を燃やそうとしている。
「人は生きる意味を探すために生きるもんだ。生きる意味を知るのは人が死を迎えた時。なのにお前にはそれがわかるって言うのか…?」
「…死なないよ。大丈夫だから」
ルチアは黒に笑顔を見せる。
黒が見たことのない、本心の笑顔で。
「流れ星って、地面に落ちても光ってられるのか?」
「…?方法はいくらでもあるんじゃねえか?誰かが光らせてやることも出来るだろ」
もしそうなら。
それが自分でありたい。
黒は黙ってルチアの頭を撫でる。
彼女は口を尖らせたが、その手を拒むことはなかった。
「俺の前でも女の子な振る舞いをしてくれないのかねー」
「絶対やだ」
「ったくー、超可愛くねーの」
2人はいつものように、また笑っていた。




