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黒の朝

「私のことはもう忘れて欲しいの」


彼女が言った。オンラインの世界の、とある日のこと。


「…何言ってんの…?」


今まで愛してきた人が、急に他人のように感じられる。


「私は…貴方のことを…」


「紫乃っ!」


ディスプレイが浮かんだままの机。薄暗い室内。

懐かしい人の、残酷な夢。


「…なんでなんだよ…」










「「あ、黒さん」」


黒が談話室の前まで行くと、双子と鉢合わせする。


「おはよ、いってら」

「「行ってきまーす!」」


玄関に駆けて行こうとして、コウメイが立ち止まる。


「今日はルチアちゃんが久しぶりに一緒にご飯食べてくれたよ」

「そーかそーか、早く行かねえと遅刻するぞ?」


黒がコウメイの頭を撫でる。コウメイは満足して走って行った。


談話室にはハルカ、シン、それにルチアがいる。

ルチアの足元には大きなキャリーバッグがこちらを見上げている。


「あ、黒さんおはようございます」

「おはよ、てかルチアのそれ何?」

「鞄」

「うん…」


ルチアの向かい側に座る黒。シンがもどかしそうにしている。


「突っ込みたい…」

「ったく、なんで鞄あるの?」

「ちょっと実家帰るから」


ルチアは素っ気ない。


「実家に?仕事は?」

「辞めた。元々辞めようと思ってたし」


背伸びをすると彼女はキャリーバッグに手をかける。


「誰かさんが写真立てを元に戻さなかったおかげで会いたい人が出来たし」


キャリーバッグがコロコロと嬉しそうな声を出す。


「というわけで行ってきまー」

「ルチアさん行ってらっしゃい」


ハルカがルチアを見送る。


「…なあ」

「む?」


黒が口を開く。


「お出かけしようか」

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