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「それからここのまかない女房になったわけ」
「そんな経緯があったんだ…」
テツは私の肩に腕を回す。それを私が黙って引き剥がす。
「テツさんは…今もまだ逃げてるんですか…?」
「オレは別の夢を追いかけたい。父親にはそう言ったけどね、まあ許してもらえないわけで」
だからまだ1人暮らしを続けていると言う。
「でも親にそうやって言えただけでも、そこに踏みとどまれた気がするから。少しは逃げてないんじゃないかな」
「そっか…」
テツは自分に与えられた望まぬ夢と少なからず向き合っている。
(私も…)
私もそろそろ自分の気持ちを受け止めねば…
「あっ、テツ!」
「うん?シンちゃんどしたのー?」
談話室のドアが開き、私達を視界に捉えたシンが愕然とする。
「なんでハルカと一緒に座ってんだ!」
「なんでって言われても…ねー?」
「いや、私に振らないでください…」
テツはわざとらしく私に抱きつく。シンはさらに驚愕する。
「なっ…貴様らそういう関係だったのか!」
「うん☆」
「馬鹿言わないでください…」
抱きついているテツを呆れながら離す。
「ーっ…!」
シンはさっきくぐったばかりのドアをまたくぐって行ってしまった。
「もー…テツさ…」
「早く行っておいで?」
「…え?」
テツにドアのほうへ引っ張られる。
「ちょっ…どういう…」
「ふ、テツ様がわからないとでもお思いか?」
そのまま廊下に押し出される。
彼は私に手を振るとドアを閉めてしまった。
「て、テツさん…」
私の覚悟は強制的に発動させられてしまったようだ。
意を決して二階に上がっていくのだった。




