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「ね、寝不足…」
「ありゃ、お肌に悪いよー?」
大学の食堂。
そこの片隅で向かい合って座る私とアイ。
アイはオムライスを一口食べると言う。
「てかハル、そんなにゲームする子だったっけ?」
「意外に楽しかったりするんだよねー。リアルがわからない人だから言えることもあるし、私のリアルを名に一つ知らない人だから言って貰えることもあるし」
私もオムライスを頬張る。
「ふーん、じゃリアルの私には言えないんだ?」
「えっ、そういうわけじゃ…」
アイは拗ねたかと思うとわざとらしく舌を出す。
「あはは、冗談冗談」
「もー…」
仕返しにアイのオムライスの三分の一を頂く。
アイは泣き真似をする。
「あのイケメンの長髪くんとは上手くいってるのかしら?」
「いや、そんなんじゃないから」
「じゃあ何とも思ってないの?」
「え…うーん…」
首を傾げる。
「なんで悩むのよー?」
「なんていうか…今の自分の気持ちがわからないというか…」
「"わからない"のは"わかりたくない"のと一緒よ」
どこからかやってきたユウナが私の隣に座る。
「あ、先輩…」
「そして、"わかりたくない"のは"逃げてる"ことと一緒よ」
「流石先輩、深いっすな」
ユウナの言うことが正しいなら、
私は自分自身に逃げているのだろうか。
だとしたらどう向き合えばいい?
(わかんないは…ダメだよね…)
「ただいまー…」
『お帰りなさいませ』
玄関でいつも通りにAtoriが出迎える。
玄関を上がるとチャイムが鳴る。
『どちら様でしょうか?』
「あの、左匡くんと右匡くんの友達なんですけど…」
少年の声がAtoriを通して聞こえてくる。
「さきょう…?うきょう…?」
『はい、それなら…』
「「いるよー!」」
そう言って階段を勢いよく降りてきたのはカズとコウメイ。
そのまま玄関を出て行った。
「え…え…?」
さっき出て行ったのはカズとコウメイで。
少年が呼んでいたのは左匡と右匡で。
「ど、どゆこと…?」
「ハールーちゃんっ」
「きゃっ!」
後ろからいきなりテツが抱きつく。
「テツさん…いたんですか…」
「いたんですよー」
抱きついているテツの腕を黙って引き剥がす。
「てかテツさん…左匡と右匡って…?」
「ん?双子ちゃんの本名でしょ」
わけがわからない。
「本名…?」
「ここの人たちってみんなオンラインネーム名乗ってるじゃん」
「え…」
知らなかった。
私が今まで接してきた人達は、本当は仮想の仲間でしかなかったのだろうか。
「…あなたもなんですか…?」
「そうだよ」
テツは廊下を歩いて行き、談話室のドアに手を掛ける。
「…甘いもの作ってあるから荷物置いておいで?」




