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37

シンの太刀は鬼に受け止められてしまった。


パキンッ


太刀が砕け、シンが鬼の頭上で体勢を崩す。

鬼の口から冷気が溢れ出していく。


「ー!」


受け身を取ろうとしたシンは、勢いよく冷気を吹き付けられ壁に押し付けられた。


「し、しまった…」


シンは壁に押し付けられたまま凍ってしまい動けない。

鬼はゆっくりと私とノラの方に向きを変える。


「残念なことに冷気魔法しか持ってきてないんですよねー…」

「えええぇ」


鬼がこちらに走り出す。


「とりあえず貴女は守りますから」


ノラが右手に冷気を溜め、剣へと変形させる。

鬼と間合いを詰めると壮絶な殺陣を繰り広げる。


「すご…」

「おいっ…ハルカ…」


シンが動けないまま私を呼ぶ。急いで駆け寄ると彼は言った。


「俺を生贄にして魂を矢に込めろ」

「えっ…」


生贄に。

瀕死の味方を代償に威力の高い技を発動する行為だ。


「俺の魂は熱属性だ」


左腕を無理やり壁から引き剥がし私の手を握る。


「で、でも…」

「早くしろ!」


シンは私の手を自身の胸に当てる。

仮想の世界の筈なのに、彼の鼓動が伝わってくる。


(シンさん…落ち着いてる…)


シンの鼓動は一定の安定したリズムを刻んでいる。


「ぐっ…!」


ノラが鬼に蹴り飛ばされ、瀕死状態になる。鬼は私に不気味に嗤う。


「…行きます」


途端にシンが苦しみ出す。その姿を直視できず顔を背ける。

やがてシンの魂が私に宿った。


ー必ず当てろ!ー


シンの声が右手から聞こえる。

私は弓を引き、矢に全神経を注ぐ。


「…!」


鬼が向かってくる。まだ魂は矢に宿りきっていない。

このままでは…


「まだ小生は死んでおらぬ!」


鬼の背後から飛び出したシンザンが盾で鬼を殴る。

攻撃にステータスを振っていないシンザンなので、鬼が少しひるむだけでしかない。

だがそれで十分だ。

矢が激しい炎に包まれる。


「当たれえええええ!」


鳳凰のように翼を広げた炎が鬼に飛んで行く。

鬼は火柱の中で焼け焦げ、火が収まる頃には炭のようになって動かなくなっていた。


「よくやった!ハルカ殿!」

「よ、よかったぁ…」


張っていた糸がプツリと切れたようにその場にへたり込む私。


「でも…シンさんとノラさんが…」

「心配いらぬ」


シンザンが私を抱き起こす。

ノラとシンの姿はここには無い。


「二人にはギルドに行けば会える」

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