のどかな黒の中で。
シンがいなくなった宿泊部屋。
黒とルチアが酒を片手に話し込んでいる。
「野郎と飲んでもつまんねーもんな」
「だからって俺を呼ぶな。テツはどうしたんだよ」
「オオヤを呼んでくるとか言ってたな」
すると部屋の襖が開き、テツだけがやって来た。
「美女とのラブシーン…うらやまうらやまうらやま…」
「うんうん」
悔しそうに男泣きするテツの肩を黒が頷きながら軽く叩く。
「もうこうなったらるちるち酔わせるしかないな」
「懲りないなお前…」
呆れつつチューハイに口を付けるルチア。
「もっと強い酒を飲め!」
「俺あんま飲めねえから」
ルチアは酒を強要するテツに缶ビールを投げ飛ばした。
「ったくー、お前毎回そんなだよなー」
「酔いたくねえんだよ」
「酔わないと何もできないだろうが」
「逆に酔わせて何するつもりだよ!」
黒はいくら飲んでも酔う気配が全くない。テツには若干酔いが回っているようだが。
「るちるち今日は一緒に寝よー」
「可愛い可愛い双子達がいるじゃないかよ」
「そんな無垢な双子が眠る一室でいけないことをする…最高なシチュエーション…ゴフッ」
「阿修羅の次はシヴァの降臨だな」
テツはまた隣部屋に運ばれていくのだった。
そして黒とルチアだけになった部屋。
「俺そろそろ帰ってもいー?シンだって寝たいだろうし」
「まあ待てって」
「…やっぱ引き留められるのか…」
「シンとハルカちゃんだけにしてやれってー」
ルチアは仕方なく腰を上げかけてとどまる。
「なあ、"和花"」
「…その名前はやめろ」
和花-のどか-。そう呼ばれたのは紛れもないルチアだった。
「誰もいない時ぐらいいいじゃん」
「うっせー。俺はその名前が嫌いなんだ」
「可愛いのに?」
「可愛いから嫌い」
黒はため息をついた。
そして。
「うわっ!何すんだ!」
ルチアを押し倒していた。
「ん、なんとなく」
「離せ!バカ野郎!」
いくらもがいても黒の力には敵わない。
「ほら、そんなことしたって逃げられないだろ?」
「んだよ…離せっ…」
「女の子なんだからもう少しおしとやかにしろよなー」
「うっせー…女だから敵わないとか…理不尽だ…っ…」
ルチアの目に涙が溜まっていく。嗚咽とともに涙が更に流れる。
「…ごめん。なんか泣かせたかった」
黒がゆっくりルチアから身を離す。
ルチアを抱き起こすと優しく頭を撫でた。
「…最低だなお前」
「だって泣いてるときが一番可愛いから」
「お前なんか大嫌いだ」
「…もっと泣かせてやろうか?」
黒は再びルチアを押し倒したのだった。




