双子とFPS。役に立つFF。
薄暗い、静まりかえった部屋。
もう8月にもなるのに、テーブルの上の惣菜は冷えきっている。
『適当に食べて』
そんな書き置きを見つめる小さな2つの子。
今日も母親はいない。
「ねえ、また"アレ"やろうよ」
「うん、やっちゃおっか」
荒廃した街。
あちこちで銃声や爆発音が聞こえてくる。
「俺FPSあんま好きじゃねえんだよなあ…」
「オレっちがしっかりサポートしてやんよー」
「お前の場合サポートじゃなくてFFだからな」
だるそうに瓦礫にもたれ掛かるルチア。テツは手榴弾をかき集めている。
「FFってなに?壮大なファンタジー?」
黒がライフルに弾を込めながら聞く。
「フレンドリーファイア。本来敵にくれてやるはずの攻撃を味方に施しちまうことだっての」
「つまりオレっちからの愛情ってこと☆」
ルチアが足元にあった手榴弾をテツのほうに転がす。激しい音とともにテツの姿がそこから消えた。
「んで、俺たち何しに来たの?」
「"ジェミニ"っていう二人組を懲らしめてほしいんだとよ」
最近この辺りで出没するプレイヤーキラー。
戦闘不能にした相手から全ての所持品を奪っているとの報告が上がっている。
「そんなの管理局がなんとかできるんじゃねえの?」
「管理局が押さえる前になんとかしてほしいってオオヤが言うんだから仕方あるまいよ」
"ジェミニ"をアカウント停止させようとした管理局にオオヤが我が儘を言ったらしい。
ルチアはオオヤの顔の広さに驚いていた。
「んじゃさっさと終わらせちゃいますか」
黒がそう言ったときだった。
「「お兄ちゃん達、遊ぼうよ!」」
鉛の嵐が押し寄せた。
「うわっ!ちょっ!」
瓦礫の陰に急いで退避する黒とルチア。
「負けたらお兄ちゃん達の持ち物全部もらっちゃうからねー」
「こいつらが"ジェミニ"か…」
"ジェミニ"の2人はどちらもまったく同じ顔、同じ装備をしている。その声はとても幼い。2人の頭の上にある"kaz"と"koumei"の文字だけが唯一の判別材料だ。
「ちっ…ガキがFPSなんかしてんじゃねえよ」
「お子様は立ち入り禁止だぜ?」
黒がライフルを瓦礫の陰から構える。
ルチアはコンバットナイフを逆手に持ち"ジェミニ"に向かって疾走する。
「世の中嘘つきばっかりなのになんで僕たちだけ責めるのさ」
「年齢ごまかしてる人なんてうじゃうじゃいるよ」
だんだん距離を詰めるルチアに銃口を向けるkoumei。黒がそれを阻止しようと発砲するが、kazが見事なテクニックで銃弾を銃弾で跳ね返す。
「っ…!」
「ルチアっ!」
銃声と同時にその場に倒れこむルチア。
「ぐっ…このスピードなのにあたっちまうのかよ…っ…」
しかもこの弾は…
「お姉ちゃんには"フェニックス"をプレゼントしちゃうー」
"フェニックス"
弾が被弾した対象物の中で折れ曲がり、さらに致命傷を喰らわせる趣味の悪い代物だ。しかも弾が入ったきり抜けないのだ。
倒れたルチアの上に戦闘不能の文字が浮かぶ。
「くそっ…こいつらハンパなく強えじゃねえかよっ…」
「「あははははははは!」」
"ジェミニ"からの弾幕によって黒は瓦礫の陰から出られない。黒がヤケになって瓦礫から飛び出そうとしたその時。
「そらよっ」
「「!?」」
横合いから追尾ミサイルが無数に"ジェミニ"に降り注がれた。
「う…な…んでっ…」
"ジェミニ"の上に戦闘不能が表示される。
「テツ様忘れてもらっちゃ困るなー」
温和な笑顔を振り撒きながら物陰からテツが現れた。
「ひどいよるちるちー。FFはオレっちのオハコなのにー」
「い、いたのか…お前…っ…」
「失礼な。薬持ってきてあげたのに」
テツがルチアを回復する。戦闘不能になってもまだこちらを睨み付けている"ジェミニ"。
「ほら、これに懲りたらもう物取りなんてやめるこったな」
「なんだよ…たかがゲームで本気出しちゃってさ…」
「…たかがゲーム…ね…」
黒はそう言ったkazの襟を掴み片手で持ち上げた。
「"たかがゲーム"で本気になれないお前さん達は一体何に本気になれんの?」
「…っ」
"ジェミニ"の身体がゆっくりと消えていった。
「…俺…カッコよかったな…」
「今ので台無しだけどな」
翌日。
「みんな喜べ。新しいルームメイトだよ」
「「カズとコウメイだよー!よろしくー!」」
オオヤが"ホーム"に双子を連れてきた。
「そいつらってもしや…」
「そ、"ジェミニ"ちゃん」
こうしてより一層賑やかになる"ホーム"なのであった。




