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死にたがりの世界で

「はぁ…」


最近シノはよくため息をつく。


「またか…」

「またってなによ…」


憂鬱そうな彼女。


「ったく、簡単で後始末も楽な死に方ってないのかしら?」

「いやいや…」


さらっとこんなことも言ってしまう彼女。

すぐ死にたがる彼女の悪い癖。


「んなこと言わずにさ、まだ死ぬとか早いから」

「えー…」


シノの普段の生活はあまり知らない。

以前の彼女はもっと明るい性格だった気がするのだが。


「そういえばさ、知ってる?」

「…主語とか言ってもらってもいい?」


すぐ会話を省きたがる彼女。

知ってる?なんて聞かれても困る。


「この世界からリアルに帰れない人がいるんだって」

「ああ…」


最近ニュースでみたことがある。

NPCになってしまうというわけのわからない現象。


「そういうのもアリよね…」

「いや、ナシだよね」

「ったくー…」


不機嫌そうに小さく頬を膨らます。

そういうふとした仕草はかわいいのだが、言うことは全然かわいくない。


「でもさ…はっきり言ってこっちの世界のほうが楽しいよね…」

「…んー…」


まあ、そうなのかもしれない。


「ここが楽しいと思えるのはリアルがあってこその感情じゃね?」

「ほー、黒は深いこと言うねー」

「うん…シノには届かない言葉だったな…」


ため息をつく。


「じゃ、私そろそろ落ちるからー」

「はいはい」


自由奔放な彼女にはもう慣れた。


「あ、ねぇ…」

「んだよ」


彼女は端末を操作しようとして手を止める。


「…やっぱなんでもない」


目の前にいた彼女は跡形もなく消えている。

唐突に落ちるのはいつものことだが、せめておやすみくらいは言えないのだろうか。






その時の自分は、また次の日も、そのまた次の日も、彼女に会えるという気がしていたから。


だから彼女の言おうとしたことも、気長に待てばそのうち聞けるものだと思っていた。



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