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出会う2人と

「黒さーん」


ドアの向こうから聞こえる双子のどちらかの声。

見た目を変えているカズとコウメイだが、声はほとんど変わらない。


「何か用?」


心境の最悪なこの時分に誰かに会いたくはないのだが。


「ルチアちゃんに女の子が来てるんだけどさ、知らない?」


部屋の前にいたのはコウメイ。


「女の子…?」

「うん、セミロングで大人しそうな子」


黒の知らない人のようだ。

しかし何か気にかかる。


「お前は部屋に戻っとけ」

「はーい」













「何か淹れるから待ってて」

「あ、お構いなくっ…」


先程から挙動不審な彼女。

とりあえずルチアが帰ってくるまで談話室で待って貰うことにした。


「君って和花の友達?」

「こ、後輩のカナルですっ…」


そう言ってカナルはぺこりと頭を下げ、テーブルに額をぶつける。


「……」

「ご、ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」


これがドジっ子と呼ばれる人種だろうか。

などと黒は唖然として思う。


「…あ、ついミルクティーにしちゃったけどいい?」

「だ、大丈夫ですっ」


中々面白い子だ。

などと黒はテーブルにカップを置きながら思う。

何故ルチアはこんな子の存在を教えてくれなかったのだろうか。


「…そういえば…先輩はミルクティー好きでしたね…」

「あいつはコーヒーとか苦いのが飲めないだけだから」


するとカナルは黒をまじまじと見つめ始める。


「…何か?」

「あっ、いえ!先輩のことよく知ってるなって思ってっ…」


慌てて手を振ろうとして、彼女はカップを倒しそうになる。

黒がすかさずカップを助ける。


「っ…。まあ、けっこう長い付き合いだから」

「あわわ…」


泣きそうになりながら慌てる彼女。

こういう人は見ていて飽きないな、などと黒は思う。


「…あの、先輩のことはなんでも知ってるんですか…」


カナルは真剣な顔になる。


「んー、なんでもってわけじゃないかもだけど…」

「じ、じゃあ先輩に好きな人がいるとかは…?」


彼女は何故そんなことを聞くのだろうか。

その問いで少し前のことをまた思い出ししまう。


「…」


黙っていると感情が少し表に出てしまっただろうか。

カナルが黒の顔をじっと見つめている。


「…何か?」

「その、私のカンとかなんですけど…あなたって先輩のこと…」


「ただいまー」


玄関からルチアの声。

Atoriに言われて談話室に入ってくる。


「あ、カナルちゃん…と、黒…」


ルチアは黒を見て気まずそうになる。


「先輩、そ、そのっ…」


2人の間に起こったことはつゆ知らないカナルがルチアに話し掛ける。


「聞きたいんです…先輩は…まだ…リョウトさんのこと…」

「…え?」


ルチアがポカンとする。


「…なんだ、そんなこと聞きに来たんだ」

「そんなことなんかじゃないです!」


立ち上がるカナル。

彼女に何か口を開こうとしたルチアに、黒がすかさず迫る。


「っ…!」

「えっ…?」


塞がれたルチアの唇。

黒の唇が彼女からゆっくり離れていく。


「お前っ…」

「…こういうことだから」


見てはいけないモノを見たように、両手で顔を覆い、指の間から目を覗かせるカナル。


「えっ…え…?」


カナルは一生懸命頭を回転させようとしている。


「黒…」


睨むように黒を見るルチア。


「お前がリョウトともう終わってるってことを教えるためだろ?」


小声で言う黒。

ルチアは納得いかないようだ。


「ご、ごめんなさいっ!」

「え?」


唐突にカナルが謝りだす。


「わ、私…お二人がそんな関係だなんて知らなくてっ…!」

「え、い、いや…」

ルチアの制止も聞かずにカナルは走りだす。


「お邪魔しましたっ!」

「ちょっ…」


そして談話室に訪れる静けさ。


「…部屋戻るから」


ルチアは足早に談話室を出て行った。


「…」


黒は身体を動かす気になれず、結局朝までここにいるのだった。


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