出会う2人
「…変わってないね」
リョウトの部屋。
昔と何も変わらない。
「まあ…てか何で急に来たの?しかも犬猫付き」
リョウトの足元に擦り寄るのんと、部屋の隅で睨みを利かすキィ。
和花は自分の部屋に居るかのような振る舞いでベッドに身を投げる。
「なんか淹れようか?」
「…うん」
リョウトは一旦部屋を出て、暫くすると戻ってくる。
「ミルクティーだろ?」
「…うん」
「相変わらずコーヒーは飲まねえの?」
「あんなの飲み物じゃない」
起き上がってカップを手にする和花。
「…ごめん」
「ん?」
和花がカップの中で湯気を上げる液体に目を落としながら謝る。
「夏祭りのとき…」
「…お前が謝ることじゃねぇよ…」
リョウトは和花の隣りに腰掛ける。
「それに、謝るだけの為に来たわけじゃなさそうだ」
「…」
和花はポツリポツリと、ゆっくり話す。
つい先程の、自分の身に起こった、黒との話。
「なんで俺に言おうと思ったんだ?」
「…リョウトにしかこんなこと言えないから…」
彼女は相変わらずだ。
他人に弱い自分を見せようとしない。
「…よく泣かずに話せたな」
「もう十分泣いたから」
彼女はいつも1人で泣く。
それがリョウトには少し寂しかったりした。
「和花は…あいつのこと好きなのか…?」
「…よく…わからない…けど…聞きたくないって思ったのは本当…」
キィが和花の近くにそろそろと歩いて来る。
のんも彼女に擦り寄る。
「お、慰めようとしてるのか?」
「違うよ…動物が悲しんでる飼い主の傍に行ったりするのは動物も不安になってるからだよ」
和花はそっとのんとキィを抱き上げる。
「ごめんな…不安にさせて…」
キィは静かに鳴く。のんが彼女の頬を控えめに舐める。
「…こんなときでも他に気を遣うのな…」
「ずっとそうやって来たから…癖で…」
リョウトは和花の頭を撫でる。
「…俺だけだと思ってた。和花が弱いとこ見せるのも、本気で笑ったり怒ったりするのも。一生俺だけなんだろうなって」
「リョウト…?」
でも違う。
彼女は立ち止まったままのリョウトを置いて、自分の道をゆっくり歩いて行っている。
並んで歩いていた2人は、どんどん距離を離していく。
「あいつも…歩けないでいるんじゃねぇかな…」
黒も昔は愛する者と歩いていただろう。
しかし愛する者の道は途絶えて、彼はそこから、自分にだけ続いている道に踏み出せないでいるのだろう。
「手を引いてやれよ」
「…」
彼女は戸惑う。
「あの子が…もしそれを望むなら…歩かせるくらいはするよ…」
「…今はそれぐらいの気持ちでいいさ」
それぐらいでいい。
リョウトも少しは前に進めそうだ。
「…ありがと…聞いてくれて」
「俺らは盟友だからなー」
和花は拍子抜けしたようになり、それからクスリと笑う。
「そう言われるとは思わなかった」
「あ?いいだろ別に」
彼女は笑っているほうが可愛い。
今更ながら別れたことに少し後悔する。
「…じゃ、もしかしたらまた遊びに来るから。期待せずにいてよね」
「いや、期待させろよ!」
しかしこの関係もまんざらではないようだ。




