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ロビーを抜け、黒と恐々歩く廊下。

照明が短い間隔で点灯を繰り返す。


「な、なんか雰囲気あるとこですね…」


勿論いい意味ではない。


「ああ…そうだな…」


黒はぎこちない。


「…でさ、なんかあってからじゃ遅いから言っとくけど…俺ホラー系ダメだったりするから」

「ちょ…なんで今カミングアウトしちゃうんですか!」


その告白は十分遅いと思われるのだが。


「人間はホラー映画とかを観て恐怖を克服した気になるらしい」

「そんな情報今いりませんよ!」

「そして恐怖と対面した時逃げないで叫ぶのは、その方が生き残る確率が高いと遺伝子が思っているかららしい」

「その情報も今いりませ…」


ガサ…


微かに物音がした。

少し先のX線受付の中からだった気がする。


「な、何…?」

「…よく考えたらおかしいよな」


黒が感情の欠落した顔で音のした一点を見つめる。


「ここは廃病院。電気はきていないハズだろ?なのに…」

「それ以上は言わないでー!」


ガサリ。


受付から白い手が伸びる。

ゆっくり、ゆっくりと。


「ひっ…」


ぼとり。


"それ"は廊下にだらしなく落ちる。

"それ"は人の形をしていて。

"それ"はこの世のモノではない。


「あ…あぁ…」


"それ"は間違いなく私達を見ている。


「に、逃げねえと…」


黒が私を庇うように腕を回し、後ずさりしようとする。


「く、黒さん…私…っ…」


(動かない…脚も…何もかも…)


急に息苦しくなり、過呼吸になる。


「ハルカちゃん!しっかりしろ!」


"それ"が私達の方へ這いずってくる。


「いやぁぁぁぁぁ!」


もうだめだ。

きつく目を閉じたその時だった。


「なっ…」

「恐れるでない!人の子らよ!」


黒の驚きと、知らない声がした。

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