シンの受難
暗い一室で椅子に縛り付けられているシン。
彼の目の前には異様な威圧感を振り撒くヒスイとリジュがいる。
「ねえあなた、私の旅団に入らないかしら?」
「い、いや…俺は…」
シンが恐怖からか拙く口を開く。
「俺は…何かしら?」
ヒスイの手のひらでつむじ風が遊んでいる。
シンの座る椅子がガタガタ揺れる。
「…ヒスイさん、彼はもう他の旅団に入ってますよ」
端末を弄っていたリジュが呆れた顔で告げる。
「あら、それは残念」
ヒスイが諦めただろうとホッと息を吐くシン。
「…乗り換える気はないのかしら?」
「え」
ヒスイは手を叩く。リジュがそれに反応し、端末のディスプレイを部屋のスクリーンに映す。
「我らが旅団、"LUX"に入団すると今なら豪華特典をご用意しましょう」
ローテンションでプレゼンを始めるリジュ。
「特典その1、レア武具一式支給」
「おお…」
ディスプレイに眩く輝きを放つ防具が映し出される。
シンが息を飲む。
「特典その2、ホストとしての成績に関わらず初任給は100万。和の通貨でも洋の通貨でもお支払い致します」
「なん…だと…」
なんとも破格すぎる額。
シンの心の天秤が音を立てて揺れに揺れる。
「そして特典その3」
「ま、まだあるっていうのか…」
「…特典その10、回復アイテム等はいつでもいくらでも支給します」
「もうやめてくれ…」
延々と続くリジュのプレゼンに、シンは精神崩壊を招きそうなほど憔悴しきっている。
「渋いわねー」
ヒスイが欠伸をしながら伸びをする。
「じゃあ次は…」
「おーい、頼まれたもの取ってきたぜー」
暗い部屋に光が差し込み、ルチアが入室してきた。
彼女は部屋の中を黙って見回す。
「…失礼しましたー」
「ルチアっ!帰るな!助けろ!」
「あら、この子るちるちの知り合いなの?」
踵を返すルチアを必死に呼び止めるシン。
「はぁ…ヒスイさん…シンを入団させようとしてんの…?」
「るちるちからもお願いしてよー」
「残念だけどこいつはリア充だ」
するとヒスイの態度が一変する。
「なんだ、それなら要らないわ。紙に包んでポイしてきなさい」
「かしこまりました」
「せめてリサイクルして下さい…」




