新 傷ついた男 2
「………コーイチ!!開けなさい!いるんでしょう!!」
私がそう彼が住んでいるという家(そう、家!!)にむかって叫ぶと、彼は扉を開ける。
「なんだよ………。」
「そんなんこっちのセリフよ、五年も帰ってこないあなたが突然返ってきたと思ったら、挨拶すらなく………スラニスさんのところにも挨拶行ってないんでしょ!!一言くらい行ってきなさいよ!」
「ずいぶんうるさくなったなぁ………スラニスさんの部屋にまた住もうかと思ったけど、俺の部屋、もう埋まってるって聞いたからさ。」
「馬鹿ね………それ私よ、後輩のために宿舎追い出されちゃって、あなたの部屋にうつったのよ………。」
「マジか………いやいやそんなんじゃない、別にお前らに会いに行く気はあったけど、いまは疲れてるんだよ、勘弁してくれ………。」
「………なんか変ねぇ、コーイチってあんな暗い感じだったかしら?いや、もうちょっと明るい感じの………。」
「何言ってるんですか?」
「ひゃっ!!?」
耳元で囁かれた声に私はそんな声をあげて飛び起きてしまう。
「あんたらねぇ………。」
「やっぱりサンティシナさんの恋人なんだ!!そうなんでしょ!!」
「黙りなさい、それともこのペンで突き刺されたいかしら?」
「ひっ!!今すぐ仕事に戻ります!!」
その子はすっ飛んでいき、猛然と仕事を開始する、関心関心、あの子はあとで評価を上げてあげようかなぁ。
「………はぁ、仕方ないなぁ、入れよ。」
コーイチはそういって私を家に上げる、私が大胆にも男の家に1週間押しかけたせいですっかり根負けしたようだ。
「………コーイチ、久しぶりだね。」
「あぁ、お前と会うのは久しぶりだ。」
コーイチは私にお茶を入れてくれた、うわ美味しい、やだ、私お茶の美味しさで男に負けちゃった。
「お前とこうしてちゃんと話し合うのも久しぶりだな。」
「ここにきてからもあったけど、あんまり話す機会なかったもんね。」
コーイチはしばらく宙を見上げたあと私に向かって聞いてくる。
「………あの生首見て、ドン引きしてこないのか。」
「そりゃあちょっとは臭うけど。」
「そうじゃねぇよ俺のことだよ!!」
へ?コーイチに?
「全然、だって冒険者なんてそんなもんじゃないの?」
「………まぁ、うん、そうか、ならいいんだ…………サンティシナ、サーラさんはどうしたんだ?」
「サーラさん、あの人私に全部任せて神聖帝国にいっちゃいました!!」
「んな馬鹿な。」
「そうそう、私もびっくりしたわよ、でも一番びっくりしたのはやっぱり私にあの人の受付嬢筆頭の立場を押し付けてきたことだけどね、そりゃあ給金は上がったけど、あの日とあんなに大変な仕事してたんだって思ったわよ。」
「帰ってきてほしいか………?」
「もっちろん。」
「………プププ。」
「なによ!!」
「いや、お前そんなの笑うしかないだろ、自覚あるだろ?」
………なぜだが、その笑い声を聞いて悪い気はしなかった、なんでだろうかと首を傾げるが、その理由はついにわからなかった。
「………うっわぁ、お金めっちゃあるじゃない。」
「うん………まぁな………。」
コーイチはなぜか悲しそうな顔をしてこのお金を見る。
「いいなぁいいなぁBランク冒険者、そんなにお金あるならちょっとくらい分けなさいよ。」
「やらねぇよ、だいたい、これは全部貯金だよ、これからもっとためたら、引退して悠々自適に暮らすのさ、ここでな。」
コーイチはそういって指で床を指す、まぁカルドキアのことを指してるんだろうけど。
しかし、それにしても意外も意外、コーイチにそんな遊んで暮らしたい願望があるなんて、思っても見なかったわ。
「へぇ………。」
「…………そういえば、ギセルやリューゼさんは今どこにいるんだ?」
「へ?知らないの?」
「知るわけ無いだろ、あの二人は俺がね………いや、なんでもない、とにかく俺は知らない。」
「そんなこと言われたって、あの二人も5年前から戻ってきてないわよ………コーイチ。」
「なんだ?」
「5年前何があったの?今すぐ教えなさい!!」
「………嫌だと言ったら?」
「このお金全部持ち逃げする。」
「なんでだよ!!」
そこでコーイチはまた大笑いする、それこそなんでそんなに笑っているのか不思議なくらいに。
「やめとけやめとけ、このお金は呪われているんだよ、俺が持っとくくらいがちょうどいいのさ。」




